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「16歳になれば、女には男を惑わす“魔力”が生まれる」というディストピア【レビュー】
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女性蔑視・家父長制のディストピアを生き、変えようと望む人たちに向けた物語
「男を狂わせる魔力」「女性だけに与えられた抑えるべき魔力」そんなものが本当に存在するのか。本作では、自分には魔力があると信じる少女と、そんなものはないと信じる主人公・ティアニーとの間の対立も描かれている。
少女たちはキャンプ場に隔離され、対立し、争うように仕向けられる。キャンプには、女性たちをバラバラにさせておくために、巧妙な罠が仕掛けられている。
少女たちが争うことで”魔力”が排除される、とされる世界で、ティアニーは”魔力”の真の意味に気づく。この世界では、女性たちの本音や怒りや連帯は、”魔力”として排除されているということに。女性たちが怒りを表現したり、団結したりしたとき、女性たちはモンスターとして、得体のしれない魔女として、社会から排除されるのだ。
ティアニーの生きる世界は、女性蔑視がはびこり、家父長制がいきいきと息づいている。毎年、少女たちが、生きるために分断せざるを得ない世界に送り込まれている。システムは強固に確立されており、変化を望むことは不可能にも思える。しかし、ティアニーは立ち上がり、現状を変えるために一石を投じる。
個人的には、ディストピアを舞台とする本作を読み進めるうち、現実との類似点が浮き彫りになり、現実世界こそがディストピアだと思えてきた。しかし、読了後、そこには絶望はなかった。主人公の決断を目にし、胸の内に広がるのは、「この理不尽を終わらせることができる」という、ほのかで力強い希望の光だ。
※1『魔女』モナ・ショレ著 いぶきけい訳(国書刊行会)
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