家族の「絆」や「相互理解」を手放す、というタフな生き方『タフラブ 絆を手放す生き方』【レビュー】

 家族の「絆」や「相互理解」を手放す、というタフな生き方『タフラブ 絆を手放す生き方』【レビュー】
信田さよ子著『タフラブ 絆を手放す生き方』(dZERO)
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さいごに。女性がタフに生きるために捨てるべきモノとは?

「タフラブ」を実践することは、密着した愛を手放すことでもあるため、孤独や寂しさを覚悟しなければならない。タフに生きることとは、寂しさと共存して生きるということなのだ。

本書では、「タフラブ」の効用や実践するためのヒントが記されている。著者は、「ロマンティック・ラブ・イデオロギーを捨ててしまえば、どんな女性もタフに生きられると、私は信じて疑わない」という。ロマンティック・ラブ・イデオロギーとは、ひとりの人間と恋愛し、結婚し、出産し、子育てすることこそが幸せだ、というイデオロギーだ。このイデオロギーは、それがイデオロギーだということを忘れさせるほど、現代の日本社会に浸透している。

現代は、恋愛至上主義、結婚至上主義が薄まりつつある時代ではあるが、ロマンティック・ラブ・イデオロギーは、いまだに多くの物語に織り込まれ、賛美されている。しかし著者は本書で、ロマンティック・ラブ・イデオロギーこそが、女性から力を奪い、苦しめる要因だと喝破している。ロマンティック・ラブ・イデオロギーこそが「密着した愛」を引き起こすのだ、と。

本書では、「家族の絆」「尽くす愛」「家族間の相互理解を求めること」「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」など、これまで「よいこと」とされてきた言説にメスをいれ、価値を反転させていく。

豊富なカウンセリング経験から導き出された著者の言葉は、重みがあり、刺激的だ。在宅時間が増え、家族間の距離感がいやおうなしに近づきがちな今だからこそ、「タフラブ」を知ることは、健やかに生きるために役立つだろう。

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原宿なつき

原宿なつき

関西出身の文化系ライター。「wezzy」にてブックレビュー連載中。



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