「仲良くあるべき」私たちを苦しめる【家族神話】とは?臨床心理士が考える「家族神話」との向き合い方

 「仲良くあるべき」私たちを苦しめる【家族神話】とは?臨床心理士が考える「家族神話」との向き合い方
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南 舞
南 舞
2022-06-07

【家族神話】という言葉を聞いたことがありますか?これは『家族とはこうあるべき、こうでなければいけない』という家族に対する伝統的な価値観のこと。家族の形が変わりつつあるこの世の中で、こうした古くからある価値観に悩んでいる人って意外と多いのではないでしょうか。家族神話という従来の価値観に私たちはどう向き合っていくべきか、臨床心理士がお話しします。

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家族神話に悩む人は多い

家族にまつわる『〇〇であるべき』という価値観を【家族神話】と呼ぶことがあります。例えば『家族は仲良くあるもの』という価値観はまさに家族神話の代表と言われるものです。当たり前すぎるがゆえに、特に疑問を持つことなく過ごしている人も多いのではないでしょうか。しかし、『家族といても楽しくなくてストレスなんだけどな…』『家族のことが好きじゃない自分はおかしいのでは?』と悩んでいる人も実は多くいます。それは、こうした家族神話によって家族についての固定された価値観を植え付けられているのかもしれません。

一度は聞いたことがある、こんなものも家族神話!

□家族とは仲良くあるべきである

□家族とは支え合うのが当たり前である

□親のことは敬い大切にしなければいけない

□結婚して家庭を持つべきだ

□子供は複数いた方がいい

□家事・育児は女性の仕事である

これらは一般的によく聞かれる内容だと思いますが、すべて【家族神話】にあたる内容。今まではこうした家族のあり方でも違和感がなかったかもしれませんが、世の中は変化し、家族のあり方も多様化しています。家族にまつわる価値観も少しずつ変えていくことを求められていくのかもしれませんね。

家族神話、どう向き合う?

『家族は仲良くあるものとは限らない』という新たな視点を

家族が仲良くできるのはステキなことではありますが、必ずしも仲良くできるとは限りません。仲良くできない、一緒にいても苦しい自分関係にある家族というのも残念ながら存在します。家族のあり方は色々。なので『仲良くすべき』という概念から見直す必要があるかもしれません。

家族だからってすべて分かり合えるわけではない

『血のつながった家族なのに』という言葉を聞いたりしますが、血がつながっていても性格や価値観が完全に一緒であるということはありませんし、必ずしも分かり合えるとも限りません。もし家族と価値観や意見が合わずに、『自分が悪いんだろうか…』と感じているのだとしたら、それはあなたが悪いわけではなく、家族という人間関係だからこそ起きる仕方がないことなのかも。家族であってもまったく別の人間。だからこそ対話して分かり合う努力をしていかないといけないのかもしれませんね。

新しい家族の形を育むのもアリ!

昔に比べて、『自分がどうありたいか』ということについて多様性が認められるようになってきていると思います。それは家族のあり方も同じ。家族を作っても良いし、あえて家族を作らないという選択もあっても良いのだと思います。また、結婚という選択肢を取らずに、気が合う仲間で暮らしをシェアするといったことも【新しい家族の形】と言えるかもしれません。

まずは自分の気持ちに問いかけて

様々な家族の形が認められる現代だからこそ、家族について考える前に『まずは自分がどうありたいのか』ということを考えてみる必要があると思います。自分の生き方やあり方を見つめていくと、どういった家族の形が望ましいのかも自ずと見えてくるはず。そのために普段から自分の体の声や心の声を聞くことを習慣にしていく必要があると思うのです。とはいえ、そうして考えていくと過去の自分のことや自分の家族とのあり方を思い出して苦しくなることもあるかもしれません。そんな時はぜひ専門家の力を借りてみて。自分一人では難しいことも、専門家と一緒なら少し気が楽になるということもあるはずです。

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南 舞

南 舞

公認心理師 / 臨床心理士 / ヨガ講師 中学生の時に心理カウンセラーを志す。大学、大学院でカウンセリングを学び、2018年には国家資格「公認心理師」を取得。現在は学校や企業にてカウンセラーとして活動中。ヨガとの出会いは学生時代。カラダが自由になっていく感覚への心地よさ、周りと比べず自分と向き合っていくヨガの姿勢に、カウンセリングの考え方と近いものを感じヨガの道へ。専門である臨床心理学(心理カウンセリング )・ヨガ・ウェルネスの3つの軸から、ウェルビーイング(幸福感)高めたり、もともと心の中に備わっているリソース(強み・できていること)を引き出していくお手伝いをしていきたいと日々活動中。



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