専門家が解説!夏こそ「湯船」に入るべき理由とは?【夏の痩身・むくみ対策に効果的な入浴法】
暑さでへとへとの夏は「もうシャワーだけでいいや」と入浴を簡単に済ませてしまうことも多いですよね。今回は、そんなシャワー派の人もしっかりと湯船に入りたくなる効果的な入浴方法を 「お風呂教授」の石川泰弘先生がレクチャー。日本薬科大学 医療ビジネス薬科学科の特任教授であり、温泉入浴指導員&睡眠改善インストラクターの資格を持つ石川先生のお風呂口座。改めて知るお風呂の基本から夏のむくみ対策まで、お話をお聞きしました。
血の巡りをよくするお風呂にはメリットが満載
――そもそもお風呂、湯船に入ることには、どんな効果があるのでしょうか。
石川先生:入浴には「浮力・温熱・水圧」という3つの効果があります。もちろん身体がきれいになる、さっぱりするという部分では気分的なリラックス効果もあると思いますが、まず「浮力」によって間接負荷がなくなるので、ひじや膝、腰が楽になります。
そして、「温熱・水圧」という2つの相乗効果。温まると血管が柔らかくなりますが、それだけでは血の巡りはよくならないんです。そこに、水圧がかかることによって血がどんどん流れていくようになる。肩までお湯に浸かると水圧で横隔膜が上がっていくので肺が小さくなります。それによって酸素が足りなくなるので呼吸数が増え、心拍も増加します。もともと温熱で血管が柔らかくなっているところに、水圧で心拍が上がるので血の巡りがよくなる、といった仕組みですね。
――血の巡りがよくなることが最大のメリットということでしょうか。
石川先生:そうですね。血の巡りがよくなると身体のすみずみまで酸素や栄養素など、必要なものが届くようになります。身体にたまった老廃物なども排出されやすくなりますし、体温が上がることもプラス要素です。代謝がよくなるので免疫力や回復力が向上するほか、睡眠にもいい影響があります。人は体温が下がると眠くなりますから、スムーズに寝つくことが出来るようになります。
夏は39度くらいを目安に「気持ちいい」温度を
――その効果をより実感できる入浴時間や温度設定を教えてください。
石川先生:ちゃんと温まろうとするなら10~15分。エアコンでの冷え、立ち仕事でのむくみなど特に疲れを感じるときは15分、しっかりと湯船に入った方がいいですね。というのも、表面の皮膚温と身体の中にはかなり違いがあります。皮膚温は5分くらいで上がってしまうので「温まったな」と感じてしまいますが、身体の芯まで温まるには筋肉にもしっかり血液が流れ込まなければ温まりません。時間にすると10分くらいかかります。
結構長いな、と感じるかもしれませんが、そこで大事になるのが温度設定。熱いお湯だと交感神経優位になってしまって、ある意味戦闘態勢になってしまうんです。心拍数は上がるけど、リラックスできないから血管が広がらない。結果、血圧は上がってしまう。ぬるいと若干緩めに心拍数が上がることになりますが、血管もゆるやかに広がるので効率よく血が流れていきます。
――ちなみに、その“ぬるい”の適温は何度くらいがベストなのでしょうか。
石川先生:そうなんですよね、皆さん必ず数字を欲しがるんですけど(笑)。環境温度も影響してきますし、年齢によっても変わってきます。結局は人それぞれ、という感じではありますが、目安として夏は39度くらい。一度設定して、足を入れたときに「熱いな」と感じたら少し下げる、逆にぬるいときは少し上げる。冬は40~41度くらいが目安でしょうか。
とにかく「気持ちいいな」と感じること。気持ちいいと感じるというのは副交感神経が優位になっている、リラックスしているということですから。自分の感覚を大切にするのが一番だと思います。
――10~15分間、自分が気持ちよく入れる温度で、ということですね。とはいえ、やっぱり何もせずに15分というのは長く感じてしまいそうです。
石川先生:今はスマホがあるじゃないですか(笑)。何もせずにボーっとしていなくても、湯船に浸かっていれば身体は温まりますから。自分がリラックスできるなら、何をしていてもいいと思いますよ。できないことを無理にやるよりも、あるものを上手に使う方が絶対いい。音楽聞いたり、YouTubeを見たり。ヨガをやる方でしたら瞑想もいいですよね。腹式呼吸を合わせれば、より副交感神経優位になりますし。
お風呂のなかでのストレッチもおすすめです。温まることで関節可動域が広がっていますので、マッサージもいいですね。下から上に、水圧をうまく使って静脈からギューッと上げていくと、さらに血行促進に繋がると思います。身体を鍛えたかったら、お風呂のなかでのロングブレス。インナーから鍛えられるので、ひとつの手ではありますね。あまりリラックスは出来ないかもしれないですけど(笑)。
お風呂でたくさん汗をかいてダイエットは嘘!?
――よく長湯でたくさん汗をかいて痩せるといったことも聞きますが、入浴にダイエット効果はあるのでしょうか。
石川先生:残念ですが、お風呂では痩せません。汗をたくさんかいても、エネルギー消費は少ないんですよ。運動量にはメッツという単位があるのですが、安静時を1とするとお風呂は1.5。歩くと3くらいなので、同じ時間なら歩いた方がいいと思います。
ただお風呂の温浴効果によって痩せやすい身体にはなっていくと思います。むくみなど老廃物は血の巡りによって解消されていくので、毎日お風呂に入ることで血の巡りがよくなって身体が整っていき、痩せやすい身体に繋がっていくと思います。水圧の影響を考えると、半身浴よりは肩まで浸かる方がより効果的ですね。
――半身浴よりも肩までの方がいいというのは、意外です。
石川先生:もともと半身浴というのは、心臓に病気がある人が安全にお風呂に入る方法なので、身体に負担がない人ならば肩まで入る方が血の巡りがよくなりますよね。
たくさん汗をかいてデトックスというイメージもありますけど、毒素なんて汗でそんなに出ないですよ。それよりも血の巡りをよくした方がいい。腎臓がしっかりと働いてくれるようになるので、その方がちゃんとデトックスできます。
――そのほか、入浴にあたって意識すべきことはありますか。
石川先生:美容面を考えると、湯船に浸かるというのは食器のつけ置き洗いのイメージ。お湯で毛穴が開いていくので、軽くこするだけで汚れが取れていきます。よく夏は薄着になるから背中のニキビが気になる……という方もいらっしゃいますが、お風呂に入ればニキビの原因となる汚れもしっかりと取れる。そういった面からも、シャワーだけで済ませずに、お風呂に入るべきだと思っています。
ただ、その分乾燥しやすくもなるので、保湿には気をつけていただきたいですね。入浴前後の水分量を比べるとお風呂あがるとどんどん乾燥していきます。浴後10分で入浴前とほぼ同じ水分量になり、いずれは戻りますけど2~3時間乾燥状態が続き、その分肌が痛みやすくなります。お風呂から出たら10分以内に保湿すること。ゴールデンタイムですね。また、入浴で大体200mlくらいの水分が失われるという実験結果もありますので、入浴前に水分補給しておくのもおすすめです。
教えてくれたのは…石川泰弘教授
日本薬科大学医療ビジネス薬科学科スポーツ薬学コース特任教授、スポーツ健康科学博士、温泉入浴指導員 、睡眠改善インストラクター 。2006年より㈱バスクリンで「きき湯」を大ヒット商品に。「お風呂博士」として多くのメディアでPR活動を実施。全国各地で温泉や入浴、睡眠に関する講演を行う。ラグビー日本代表などトップアスリートにリカバリーに関する講演を実施。2021年4月より日本薬科大学 医療ビジネス薬科学科 スポーツ薬学コース特任教授に就任。2022年4月より日本薬科大学 漢方アロマコース委員長に就任。著書に「バスクリン社員が教える究極の入浴術 お風呂の達人」(草思社)、「バスクリン社員がそっと教える肌も腸も健康美人になる入浴術26」(スタンダードマガジン) 、「たった一晩で疲れをリセットする睡眠術」(日本文芸社)、「たった一晩で疲れが取れる睡眠法」(ゴマブックス)がある。
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ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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