ヨガの授業を通してスポーツ強豪校の生徒の体に現れる変化【高校の授業にヨガという選択肢vol.5】

 ヨガの授業を通してスポーツ強豪校の生徒の体に現れる変化【高校の授業にヨガという選択肢vol.5】
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白井美穂 ヨガインストラクター
白井美穂
2022-11-25

愛知県内の高校2校にヨガを授業として取り入れてもらう中で、今年、ヨガの授業が2年目となる私立豊川高校。スポーツ強豪校であり、部活動を一生懸命頑張る高校生がヨガに取り組んだ時、顕著に現れるからだの特徴についてお話します。

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スポーツ強豪校でヨガを授業に、その目的は

今年でヨガの授業を取り入れて頂いて2年目となる、豊川高校は愛知県でも部活動に力を入れている学校で、愛知県外からの入学者も多く、私の授業を受講している学生の6割くらいが寮生活を行いながら、勉強に部活にと学生生活を全力で送っています。2年生は「ヨガ入門」3年生は「ヨガ実践」という形でそれぞれ週に1度ヨガの授業を選択科目として行なっているのですが、スポーツ強豪校におけるヨガの目的とはなんでしょうか。私なりの意見ではありますが、

1.怪我の防止
2.パフォーマンスアップ
3.集中力アップ

他にもいろんな目的を持たせることは可能ですが、大きくこの3つの目的が果たせるといいなと思いながら授業を行っています。

厳しい練習から作り上げられたからだの特性

甲子園に出たい、インターハイで優勝したい、春高に出たいなどなど、高校生活でしか成し遂げられない学生の目標を掲げながら、週末も夏休みも一生懸命練習している学生達ですが、ヨガを授業で行うと見えてくるものがあります。

それは「所属する部活動ごとに体の弱いところが異なる」と言うこと。

受講生は、男女合わせてひとクラス40名ほど。2学年の授業を担当させてもらっているので、80名が受講しています。野球部、サッカー部、バスケットボール部、バレーボール部、陸上部、駅伝部、水泳部など、それぞれに部活動に所属しています。もちろん、一人ひとりの体の個性特性もあり、一概には言えませんが

野球部や陸上部に腰痛持ちが多く、
サッカー部はアキレス腱が硬く、
バスケットボール部、バレーボール部はふくらはぎや足首が硬い。
そして全体的には股関節がとても硬く、大腿四頭筋もとても硬い。

何個かアーサナを取ってもらうと大体なんの競技をしてきたか、分かるようになりました。と、同時に高校生までに行う部活動の練習が体の作りに影響を与えるのかと、驚いています。

ヨガを通して直面するもの

好き、得意という気持ちから選択した部活動の中で、「勝ちたい」「強くなりたい」という想いで行う練習は、頑張れる学生たちですが、”怪我をしないために”自分のからだの弱いところと向き合いながら、取り組むヨガの時間それ自体は、あまり楽しいものではないようです。「からだが硬いから無理!」「痛いし、出来なくてもいいや」と投げ出す学生も、もちろんいます。そしてその気持ちも少なからず分かります。弱いところに向き合うのはとても苦しい。

高校生活でもその先の選手生活でも競技人生において、「防げる怪我は防いで実力を出し切る」これが一番選手自身にとって最高のパフォーマンスが発揮されるのではないでしょうか。スポーツをしていると、特に試合中相手との体の接触などから、避けられない怪我もあるものです。実際に試合で全力を出し切っているからこその怪我だと思うのですが、未だかつて全員が揃ってヨガをできる状況というのはほとんどありません。必ず誰かが怪我によって授業を見学しています。

防げる怪我と言うのは、疲労骨折や肉離れ、足を攣るなど自分のメンテナンス不足や力加減ができずにしてしまうような怪我。そんな怪我を防ぐために、競技で行うような動的な動きではなく、マットの上で静的な動きを行い、自分の体を観察すること、メンテナンスする意識を持つことをヨガを通して伝えられたらと思っています。

部活動でも怪我の防止のための練習を取り入れるらしく、ヨガのアーサナの目的と部活動での練習の目的がリンクすると、真剣に取り組むことができるので、うまく伝わるといいなと思いながらいろんな角度から、話をするようにしています。

選手生命をより長く活躍し続けられる体づくり

高校生活という限られた時間の中で、部活動を通して競技自体のパフォーマンスアップや体力アップ、個人だけでなくチームでの総合力や団結力を高め、日々成長し続けている学生一人ひとりが、高校卒業後の大学での部活動や、実業団、プロ選手としての競技人生まで大きく捉える視野を持ってもらえたらいいなと思います。「今」活躍することと、「長く」活躍し続けること。この両方が叶えられるように、一見自分の競技と関係のないヨガの動きが、どう役に立っていくのか、今すぐではなくてもいずれ自分の大切なからだを通して実感してくれる日が来ることを願います。

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AUTHOR

白井美穂 ヨガインストラクター

白井美穂

セルフケア・ヨガ講師として活動中。会社員時代に”ネフローゼ症候群”という難病を患い、ヨガと季節のセルフケアを学び始める。その後ヨガ講師へ転身、初心者にもわかりやすいレッスンを行う。2021年度より愛知県内の高校にてヨガの授業を開始し、現在は県内2校で授業を担当。10代にヨガを通して体と心を整えることの大切さ、自分の心と向き合いやりたいことや目標に向かって進んでいくことの大切さを伝えている。



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