精神科医のSidow先生に聞く「人生を面倒な人に乗っ取られないためにできること」
「あなたの悩みは?」と聞かれたら……「人間関係です」と答える人は多いのではないでしょうか。今回は、みなさんの周りにも意外と多くいる「面倒な人」について、『もし世の中から面倒な人がひとりもいなくなったら(アスコム)』の著者でありメンタルドクター(精神科医)のSidow先生に、人を面倒だと感じるメカニズムと、面倒な人に対するアプローチ法についてお話を伺いました。
「面倒な人」で悩んでいる人は多くいる
現代社会において、ストレスを全く抱えていないという人はいないのではないでしょうか。実際、さまざまな問題を抱えている人が多くいて、体調を崩して生活が成り立たなくなってしまう人もいます。なかでも、「人間関係」が原因で悩んでいる人の数は多いようです。
Sidow先生も著書『もし世の中から面倒な人がひとりもいなくなったとしたら 面倒な人・苦手な人のトリセツ』の中で、「人間の悩みは、ほとんどが他人との人間関係から生じています」と書いており、ご自身が精神科医として診療にあたってきた経験から、強くそれを実感しているそう。人間の悩みには、成績が上がらない・技術が上達しない・身長が伸びない……といった、自分自身に対する悩みも存在します。しかし、これら悩みの割合はさほど大きくないとSidow先生はいいます。
多くの人々のストレス因子となっている「面倒な人」に出会ってしまった場合、簡単に関係を断つことができるなら、悩む必要はないかもしれません。ですが多くの場合、会社や学校での出来事であったり、家族内での問題であったりと、関係を断つことが難しいケースが多いもの。ほかにも、できれば関係を断つことなく良好な関係をキープしたい、拗れた関係を修復したいと望んでいる人もいるでしょう。
これらの悩みは、面倒な人への対処法を知ることで、解決できる可能性が一気に大きくなります。あなたの周りに「面倒な人」がひとりもいないという状況を作り出せる可能性もあるのです。
指摘すれば改善しようとする人は意外と多い
面倒な人が自己中心的であったり、周囲を振り回したりするタイプの人であった場合。Sidow先生によれば、相手に正直な気持ちをやわらかく伝えることで、他人から言われて初めて自分の行為がやりすぎだったことに気づき、態度を改めてくれる人は結構いるとのこと。では、指摘しても全く改善の兆候がみられない場合はどうしたらいいのでしょうか。
―――改善の兆候がみられないだけでなく、読者の中には「もしかしたら自分が悪いのかもしれない」と、自分責めをはじめてしまう人も少なくないかと思います。とくにHSP気質や、相手の気持ちを異常に気にしてしまうタイプの人は、そのような状況に陥って苦しんでいる人もいるのではないでしょうか。そういった状況下で実践できる、対処法があれば教えてください。
Sidow先生:「ご自身がHSP気質や気にしやすいタイプであると自覚している方は、心理的にも物理的にも、対象になる人物とできるだけ距離をとることがポイントになってきます。とくに相手の気持ちを気にしやすい方は、他の人より過敏な分、体調も崩しやすい傾向です。具体的な方法として、こちらから連絡するのをやめる、家族であれば直接会わないように自宅外で過ごす時間を増やすといった方法があります。そうすることで、相手からの過度な要求や攻撃的な言動が減少し、状況が改善に向かう可能性も出てきます。
相手を変えることはできなくても、接触の機会を減らすことで、自分自身に対するダメージを軽減できる可能性は大きくなります。書籍内でも紹介していますが、面倒な人のタイプ別攻略難易度を参考にしていただき、相手にアプローチをかけるのか、ダメージをくらう前に初めから距離を取ったほうがいいのか、判断してから実践するといいと思います」
「面倒くさい」と感じるメカニズム
では、そもそも私たちが相手にストレスを感じ、「面倒な人だな」と思うまでには、どんなメカニズムがあるのでしょうか。
Sidow先生ご自身も、以前は思い通りにならない時にイライラしたり、マウントをとってくる相手にはムカついたりと、心を乱すことも多かったそう。しかし、心理というものを多面的にとらえ、自分の感情をコントロールできるようになってからは、面倒な人に出会っても些細なことで腹を立てたり、相手との接し方に悩んだりすることがなくなったといいます。
Sidow先生:「相手の性格、考え方、行動パターンを変えることはなかなかできません。人は自分が望んでいないことや、予期していないことが起こったときにイライラやモヤモヤの度合いが高まり、原因となる対象を“面倒だな”と感じるようになります。人がストレスを感じる具体的な3つのパターンについて、以下に記載しました。ぜひ、参考にしてみてください」
・時間や行動の自由を奪われた時
例:待ち合わせの時間に相手が遅刻してくる、予定していた時間内に会議が終わらない、それはやってはいけないと命令される
・自尊心やプライバシーを侵害されたとき
例:自分の価値観やポリシーに異を唱えられる、家族やプライベートの話に口出しをされる、ネットストーキングされる
・罪悪感なき同情や称賛を強要されたとき
例:自慢話や不幸話を延々と聞かされる、自分の目の前で突然泣かれる、「褒めてちょうだいオーラ」を出される
ここでいう「ネットストーキング」とは、SNSでしつこくコメントしてくる人や、自分の投稿を監視しているかのように、毎回必ず“いいね”をしてくる人など、ネット上での距離感が近い人の行動をさします。みなさんの周りにも、思い当たる人がいるのではないでしょうか。このようなことが繰り返され、気になりはじめると、私たちは「面倒だな」と感じたり、ストレスを感じたりするようになります。
ここからは、具体的な面倒な人の対処法について、本で書かれている内容を抜粋しながらご紹介していきます。
面倒な人への対処法とは?
もしも面倒な人と出会ってしまった場合でも、自分の感情をコントロールし、できるだけ平和的に折り合いをつけることができれば、それはあなた自身の人間的な成長をもたらす絶好の機会であるとも言い換えられるはず。さらに、面倒な人にもいろいろなタイプがいると知っておくことで、自分自身の心の折り合いもつけやすくなるとSidow先生はいいます。
―――面倒な人にも様々なタイプがいると、本にも書かれていました。大きく分けると「あからさまに攻撃してくるタイプ」と「攻撃はしてこないけどジワジワと面倒臭さを発揮するタイプ」がいるようですね。Sidow先生は精神科医として、どちらのタイプで悩んでいる患者さんが多いように感じますか?
Sidow先生:「実際にメンタル疾患を引き起こしてしまう方が経験しているのは、やはり高圧的であったり、周囲を振り回したりするような『攻撃型』のタイプに悩まされているケースが多い印象です。ですが、タイプ別に用意された対処法を実践していくことで、案外すんなり物事を解決へと導くことができることが多いのも事実。メンタル疾患を引き起こしてしまうか、そうでないかは、対処法を知っているかいないかで大きく変わります。
タイプ別の解説と具体的な解決へ導くために実践したいステップについては、書籍の中でも詳しくご紹介していますので、ぜひ参考にしていただきたいです。相手がどんなタイプの『面倒な人』なのかを観察・分析し、ステップを踏んでいくほどに、面倒な人の扱いが上手な人になっていくのを実感できるはずです」
お話を伺ったのは……Sidow先生
精神科専門医。医療現場で活躍する傍ら、YouTuberとしても積極的に活動している。動画やSNSでは、精神科・医療・心理に関する情報をわかりやすく発信しており、YouTubeチャンネル登録者数とSNSのフォロワーは、合計10万人ほどにのぼる。自殺と精神科への差別・偏見をなくすために、精力的な情報発信を今日も続けている。著書『もし世の中から面倒な人がひとりもいなくなったとしたら 面倒な人・苦手な人のトリセツ』(アスコム)のほか、2冊を出版。
AUTHOR
ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く