医師・稲葉俊郎さんに聞く、”からだ”と”より良い人生”とのつながりとは|インタビュー後編
一見バラバラに見えるようなものも、意外に繋がってくる
ーー自分の経験を繋げていくように、自分の "いのち”においても全体性を見つめ直すことは、とてもパワフルだと感じます。
「全体性を取り戻す芸術祭」というテーマで、2020年に山形ビエンナーレの芸術監督をやりました。人間の視点は部分に行きやすいので、全体に戻ってまた部分を見る。つまり、ズームインしてズームアウトする。そしてわたしたちの全体像をつかむ、ということを芸術祭の試みとしてチャレンジしたかったんです。
美術や音楽でさえ、ジャンルが分かれていきますよね。人間もどんどん部分へと分割された生き方になっているのではないかと危惧します。部分ではなく、もっと一人の人間や一つの人生としての大きな全体像に戻れるように、と思っています。今年も山形ビエンナーレに携わりますが、その振り子のようなとらわれない視点は大切にしたいと思っています。
わたしは医療業界で働く人間としての視点から、そういうアプローチが必要だと思っています。”いのち”の視点から見た時に、美術や芸術や音楽も結局は同じようなところに根っこはあるんじゃないかと思っています。そしてこれからも、そうしてわたしたちが自分自身の全体性を失わずにかけがえのない人生を生きていくことを、自分自身が実践しながら呼びかけていきたいと思っています。
プロフィール:稲葉俊郎
医師、医学博士。1979年熊本生まれ。2022年4月より軽井沢病院 院長に就任。信州大学社会基盤研究所 特任准教授、東京大学 先端科学技術研究センター 客員研究員、東北芸術工科大学 客員教授(山形ビエンナーレ2020 芸術監督)を兼任。心臓を専門とし、在宅医療、山岳医療にも従事。西洋医学だけではなく伝統医療、補完代替医療、民間医療も広く修める。近著に、『いのちを呼びさますもの』アノニマ・スタジオ(2017年)、『ころころするからだ』春秋社(2018年)、『からだとこころの健康学』NHK出版(2019年)、『いのちは のちの いのちへ』アノニマ・スタジオ(2020年)がある。稲葉俊郎ウェブサイト
AUTHOR
大河内千晶
1988年愛知県名古屋市生まれ。大学ではコンテンポラリーダンスを専攻。都内でファッションブランド、デザイン関連の展覧会を行う文化施設にておよそ10年勤務。のちに約1年デンマークに留学・滞在。帰国後は、子どもとアートに関わることを軸に活動中。
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