相手に言いにくい「ネガティブなこと」を伝えるために意識したい6つのポイント|臨床心理士が解説
ネガティブなことほど、相手に伝えるのは難しいものです。しかし、日常生活の中でどうしても伝えないといけない場合もあるでしょう。そんなときはこの記事をぜひ参考にしてくださいね。
ネガティブなことを相手に伝えづらいと感じるのはなぜでしょうか。伝えた時の相手の反応が心配でしょうか。それとも伝えることで、自分がどう思われるのかを心配しているのでしょうか。コミュニケーションは双方向のやりとりになるので、伝える側の意図が上手に伝わらずに相手に誤解されてしまう時があります。特にネガティブなことを伝える場面では、双方の様々な感情が強くなるので、冷静なコミュニケーションが取れなくなることがあります。
私たちはたいてい、自分のことは自分の意図で評価します。「自分はこういう風に考えているからこういう人間だ」というように。しかし、他人のことはその人の行動による自分への影響で評価します。なぜかというと、相手の意図は言葉にされないことが多いからです。そして、誤解が生まれるときは、相手から受けた影響をそのまま相手の意図だと受け取ってしまったときです。例えば、Aさんは「相手の助けになりたい」という意図で同僚のBさんに細かく作業手順を説明しました。しかし、Aさんは自分の意図を言葉にしなかったので、Bさんは「分かりきったことまで言ってくるなんて馬鹿にされている」と受け取り腹を立ててしまいました。もしAさんの意図に気づいていたら、Bさんはイライラせずに、「ありがたいな」と良い影響を受けていたかもしれません。このような意図と影響がずれてしまうことは珍しいことではありません。
それでは、意図と影響のずれに注意しつつ、ネガティブなことを相手に伝えるポイントをお伝えします。
1 )伝えたいことをはっきりさせる
コミュニケーションは、だいたい以下の3つのことに分けられます。
・出来事に関すること(何があったか)
・気持ちに関すること(何を感じたか)
・アイデンティティに関すること(そこから自他について何が分かるか)
アイデンティティに関する会話とは、例えば、「有能か」「良い人間か」等のことです。そして、このアイデンティティが関係する会話は双方の強い感情を起こしやすいものです。あなたが伝えたいことは上記のうちどのようなことか明確にしましょう。
2)話題を切り出すかどうか決める
あなたが伝えたい話題を切り出すことで、あなたはどうなることを期待しているのでしょうか。問題を解決することや誰かの成長のためなのか、それとも自分の気持ちをスッキリさせたいだけなのか、なるべく客観的に考えましょう。もし、あなたの気持ちの解消のためだけだとしたら、話題を切り出さない方がいい場合もあります。それを相手に伝えることで、相手はどのような影響を受けるのかも想像してみましょう。
3) 客観的な事実から話を始める
ネガティブなことを話す際は、客観的な事実から話を始めましょう。客観的な事実は誰でも受け入れやすいため、会話の始めにオススメです。なるべく自分の視点が入らないように、第三者から見て「何があったのか」という視点を意識しましょう。
4)相手の話を聞く
相手から話があれば、途中で遮ったり否定したりせずに耳を傾けましょう。無理に共感する必要がありません。相手の話をただ理解するつもりで、一旦受け止めます。そして、相手は現在どのような気持ちなのか、何か誤解していないか注意して聴きましょう。
5)自分の話を伝える
自分の気持ちや思いを、自分を主語にした文章(アイメッセージ)で伝えます。誤解されないようにあえて自分の意図を伝えたり、自分が相手に伝えることで何か影響が出ないか心配していることを合わせて伝えてもいいでしょう。例えば、「これを聞いて〇〇だと感じないか心配だけど…」「私だったら知らない方が困るから伝えようかと迷ってて…」などです。このような前置きをした上で、相手に聞く意思があるか確認してもいいでしょう。
また、あなたが伝えたい内容が、相手のアイデンティティにかかわる話題の場合、相手は強く反応する可能性があります。そうするとあなたの意図が上手に伝わらないかもしれません。その場合は、相手の気持ちを和らげるような言葉をあらかじめ用意してもいいでしょう。例えば「普段のあなたの仕事ぶりに助かっている」「あなたが友達想いなことは分かっている」「あなたの有能なスキルを信頼している」など伝えた上で、話を切り出すのです。
6)問題を解決する
もちろん状況にもよりますが、必要に応じて解決策を一緒に考えるなど、前向きな話し合いができるといいでしょう。ネガティブなことを伝えて終わりではなく、その先の見通しが持てることで相手も安心して話し合いができることでしょう。
AUTHOR
石上友梨
大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く