臨床心理士が指南|人間関係のトラブルには原因探しはNG!健康的な人間関係を保つ秘訣とは
周りの人との間に問題が起きた時、多くの人がまず行うのが【原因探し】ではないでしょうか。確かに原因を取り除くことで、問題が解決する時もあります。しかし、問題が複雑になっていると原因探しをしていてもうまくいかない、あるいは余計にこじれてしまうといったこともあり、苦い経験をした人も多いはず。そんな時に知っておくと役立つ心理学的な視点を、心の専門家である臨床心理士が解説します。
原因探しよりも大切なことは
特に人間関係において、原因探しをしてはうまくいかないことが多々ありますよね。大体の場合、『相手に原因があって、自分は悪くない』と考えているパターンがほとんどなので、それがより関係をこじらせる原因になります。そんな時に私がよくお話しするのが、原因が何かということにこだわらずに、『今ここで何が起きているのかに注目し、どんなことができるのか一緒に考えてみませんか?』ということ。これは心理療法のひとつである【ブリーフセラピー】の哲学です。ブリーフセラピーとは、アメリカ・西海岸のパロアルトが発祥のセラピーで、問題の所在を精神病理やパーソナリティ(性格)などの個人の内側に置くのではなく、個人と個人のコミュニケーションの取り方から問題の理解をし、「原因探し」よりも「解決」に重点を置くという特徴があります。物事がうまくいっていない時は、自分と相手との間に何かしらの悪循環が発生しているのでそれを断ち切ること、そして逆に良い循環を広げていくということを目的としています。心理療法なので、基本的には専門家と一緒に行うことが前提となりますが、ブリーフセラピーの中心哲学は、個人でも取り組むことができるので、ぜひ頭の片隅に起き、日常的に取り組んでみてほしいです。
知っておきたい、解決思考の哲学3つ
その1:例外探しをしよう
うまくいっていないことの中でも、ていねいに思い出していくとうまくいったことや、まだマシなこと(例外)があるはずです。例えば、パートナーに対して不満をたくさん感じているとします。不満だらけの中で一瞬でも相手に対して良い印象を持った出来事や、言葉や行動はありませんでしたか?そうした例外を見つけることで、自分自身のパートナーに対する感じ方や見え方が変化し、それだけでも気持ちがラクになるかも。
その2:うまくいっていることを続けよう(Do more)
例えば、『自分がこんな声がけをしたらパートナーが手伝ってくれた』といった例外を見つけ、うまくいっている、それが良い循環を生み出しそうなことであればどんどん続けましょう。続けていくことで、良い循環を生み出すコツが掴めるようになり、それが他の場面にも生かされることも。
その3:うまくいかないならこれまでとは違うことをしよう(Do different)
その2とは逆に、うまくいってないことはすぐにやめて、違うことを試してみましょう。うまくいかないと、『やっぱりできなかった』と思いがちですが、『新しいことをできるチャンスに恵まれた』と捉えることもできます。また、例外探しがむずかしいようであれば、逆に悪循環になっているパターンを見つけ、それを変えてみましょう。例えば、『自分がこの言葉をかけると、相手が黙ってしまう。そして自分はもっと怒ってしまう』というパターンを見つけたら、その言葉が悪循環を生み出している可能性があるので、違う言葉に変えて話すといったことです。
解決思考を習慣にして人間関係にも変化を
過去に起きたことや、まだ起きていない未来、そして相手の行動は残念ながら変えることはできません。だからこそ大切なのは、『今、ここ』に意識を向け、自分に必要な行動は何か、悪循環によって怒っている苦しい感情をどう対処するかを考えること。そうすれば、現在悩んでいる人間関係にも少し変化が現れるかもしれません。人間関係に悩んだときには、【解決思考】を意識してみてくださいね。
AUTHOR
南 舞
公認心理師 / 臨床心理士 / ヨガ講師 中学生の時に心理カウンセラーを志す。大学、大学院でカウンセリングを学び、2018年には国家資格「公認心理師」を取得。現在は学校や企業にてカウンセラーとして活動中。ヨガとの出会いは学生時代。カラダが自由になっていく感覚への心地よさ、周りと比べず自分と向き合っていくヨガの姿勢に、カウンセリングの考え方と近いものを感じヨガの道へ。専門である臨床心理学(心理カウンセリング )・ヨガ・ウェルネスの3つの軸から、ウェルビーイング(幸福感)高めたり、もともと心の中に備わっているリソース(強み・できていること)を引き出していくお手伝いをしていきたいと日々活動中。
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