春土用は和食中心で腹八分目を心がけて|せきねめぐみの、肩の力を抜くごはん
SNSで見かける、彩り豊かな食事の写真。見るからに栄養がありそうで、こんな食生活を送ってみたいと思う人は多いでしょう。でも「そんなに頑張れない…」という人も少なくないはずです。時間もない、料理が得意じゃない、不器用なあなたに伝えたい「頑張らないごはん」。意識すべきポイントは、とってもシンプルです。今日からできる「簡単な食養生」、教えてくれるのはマクロビオティックマイスターの関根愛さんです。
おはようございます。4月も半ばへ差しかかり、新生活も少しづつ馴染んできたころでしょうか。まだまだ心身共にそわそわしている方も多いかもしれないですね。知らず知らずのうちに体や心にストレスがかかっている時期ですので、意識的に日々労ってあげることが大切です。
明日からは春土用に入り、ゴールデンウィークの5月4日までつづきます。土用は、季節の変わり目の期間のこと。すなわち年に4回あります。明日から春土用ということは、夏への入り口を控えているということです。つい先日やっと暖かくなり始めたくらいに思いますが、暦のうえではもう夏が近いのですね。
土用は前の季節のあいだに溜め込んだ疲れが出やすい時期とされますが、中でも春土用はなんとなく疲れ気味だったり、情緒が不安定になるなどの症状を経験する人も多く出始めます。五月病、なんて言われ始める時期でもありますが、春は往々にして自律神経が乱れやすい季節です。春土用を快適に過ごすための食養生についてみてみましょう。
まず食事ですが、和食を中心にした調理がからだを助けてくれます。春は五行の「肝木」、五味では酸味と関連がある季節ですが、ここで質のわるい酸味を取りすぎるとかえって「肝」を弱らせてしまいます。酸っぱいものが欲しいときは、お味噌汁や梅干しなどの自然な発酵食品の酸味、また季節の柑橘の酸味でうまく体をととのえてあげます。酸味を効かせたスナック菓子やジュース、炭酸飲料などは「もっとちょうだい」と脳がねだってくるもの。反対に、梅干しはひとつぶで「もう充分」と思えます。これくらいでちょうどよいな、とお腹で感じられる良質な酸味をできるだけ和食から摂ってあげてください。
胃腸の疲れが顕著になる時なので、お刺身などの生ものを避けてみたり、香辛料や油たっぷりの料理などの刺激物を控えめにするのもおすすめです。カラカラに乾燥していた冬に比べ少しづつ湿気も出始めますので、食べ物も傷みやすくなります。いつもより少しだけ胃腸の声に耳を傾けるようにしてみましょう。
また腹八分目にすることで、胃腸の負担を減らしてあげます。これだけでも結構な違いがでるものです。腹八分にするためのポイントはゆっくり時間をかけて食べること。箸置きをうまく使って、ひとくち食べるごとにお箸を置くことを習慣にしていくと良いです。ゆっくり味を噛みしめながら窓の外を眺めたり、遠くの空へ思いを馳せたりして、「食事をしている今」を充分に味わってみてください。食事は噛むことを通して外の世界を自分のからだの内側に取り入れ、調和を保とうとする行為です。その営みをゆっくりと感じてみてください。
からだが軽やかだと、心もつられて軽くなります。心の状態をコントロールすることは一見むずかしいように思えますが、心とからだの繋がりを思えば、からだへとアプローチをしてあげることこそが心の平穏を創造していくうえで上手な道となるのです。
無理して食べなきゃ、と普段から思いがちな人は、いちどその執着を取り払ってみてもよい時期かもしれません。からだが食べ物を欲していないのなら、その声に従ってみます。一日食べなかったからといって、からだがおかしくなることはありません。食べなかったことで心地よかったのか、不快だったのか、前向きな気持ちになったのか、力が湧いてこなかったのか。その時に自分がどう感じているかを知ることが、まず大切です。焦りや不安に襲われる気持ちのまま動かず、いったん停止して今どうあるかをじっくり観察してみることも、より良い自分を生きていくために必要な時間です。春土用はそんな時期ととらえていいのです。いったん速度を落として自分自身を省みたり、次の季節へ向けて腰を据えて準備する期間として、自然が設けてくれた余白を上手に活用して、この世界にひとりだけしかいない自分のことをうまく労ってあげてみてくださいね。
AUTHOR
関根愛
俳優を始めた十数年前よりアトピーなどさまざまな心身の不調を感じてきたことで、薬に頼るのをやめて自分の体の声を聴きながら養生していくために自然食を始める。「じぶんらしく生きるための食養生」をテーマにInstagramやnote、Youtubeで日々発信をつづける。マクロビオティックマイスター。映画制作者、ライター、翻訳者としても活動。座右の銘は「山動く」。
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