体調の揺らぎや疲労を感じる季節にぴったりの調理法【蒸す】|せきねめぐみの、肩の力を抜くごはん

 体調の揺らぎや疲労を感じる季節にぴったりの調理法【蒸す】|せきねめぐみの、肩の力を抜くごはん
Megumi Sekine
関根愛 
関根愛
2022-03-26

SNSで見かける、彩り豊かな食事の写真。見るからに栄養がありそうで、こんな食生活を送ってみたいと思う人は多いでしょう。でも「そんなに頑張れない…」という人も少なくないはずです。時間もない、料理が得意じゃない、不器用なあなたに伝えたい「頑張らないごはん」。意識すべきポイントは、とってもシンプルです。今日からできる「簡単な食養生」、教えてくれるのはマクロビオティックマイスターの関根愛さんです。

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みなさん、おはようございます。二十四節気のうち大きな節目のひとつにも数えられる「春分」がはじまりました。「暑さ寒さも彼岸まで」。今週は冬に逆戻りのような寒い日も多かったですが、春のお彼岸である春分を過ぎ、ようやく春本番となるでしょうか。各地で桜も開花しはじめました。来週には満開を迎え、あっというまにやってくる春のピーク。儚いからこそ大切に心に留めておきたい時間です。

さて、冬のあいだに体に溜め込んだ色々なものがまるで外の世界に呼応するように芽吹いていくこの季節。よいものもそうでないものもどんどん外へ吹き出ていきます。ただでさえ季節の変わり目で不安定な状態の今の体ですので、なんとなく体調がすぐれなかったり、いつもは出来ない吹き出物がでたりと、揺らぎを感じている方も多いのではないでしょうか。そんなときは、日頃からできる少しの養生で工夫をしていきましょう。

もっともシンプルに取り組めるのが、日々の食事。春にふさわしい食べ方のひとつとして、蒸し料理がおすすめです。わたしたちの生活にはカリカリに焼いたり、ジュージュー揚げたり、焦げつく寸前まで水分を飛ばすような「焼く/揚げる」料理のバリエーションが豊富ですね。いわゆるグルメ料理と呼ばれるものには、そういったものも多いような気がします。小さな子どもから働き盛りのおとなまで、焼く・揚げる料理はいつだって定番であり、そして人気です。しかも電子オーブンレンジがあれば、家庭でもフライやグラタン、グリルなどがありがたいことに時短で出来てしまいます。焼く・揚げる調理に少なくない油はつきものですので、そのような食事がつづくと内臓が疲弊してしまうことも多いものです。

そういったお料理の楽しみもありますが、体調の揺らぎや疲労を感じている時に立ち返りたいのは、素材そのものの味を活かしたシンプルな調理法。暖かくなってきたので、生野菜サラダやフレッシュジュースなど生でいただくメニューも体を冷やしすぎず良いですが、今日は「蒸す」という調理法に注目してみましょう。人それぞれ生まれ持った体質や置かれている状況は違えど、蒸し料理はおよそどんな人にも効く、体を休め、お腹の底から力を蓄えることのできる負担の少ない優しい調理法だとわたしは考えています。

皮膚や頭皮などが乾燥しやすい方や、体に潤いが足りないと感じている方にとっても、水分を飛ばすのではなく与える「蒸す」料理は嬉しい味方。外側からがんばって保湿などのケアを重ねても、内側から変えていくアプローチも必要です。そのためには、料理の方法を変えてみること。少しのお塩をしただけのとてもシンプルな蒸し料理をいただくと、体の芯からほんのり温まり、イライラしそうな気持ちや攻撃的な気分も落ち着いて、なんともいえない穏やかな気持ちになるのを感じとることができると思います。

わたしはいつもは蒸し野菜を食べますが、先日あまり食べないお肉(鶏の胸肉)を土鍋で蒸してみたところ、その味のしっとりした柔らかさ、ふっくらとした食感が想定外でやや驚いてしまいました。お肉を食べ過ぎると体が酸性に傾くという見方も中にはありますが、蒸し料理でいただく良質なお肉にはたとえようのないやさしさ、そして何もかもをまあるく包み込むような幸福感を感じたのです。刺激して感情を高ぶらせるような状態のことを「火をつける」と言い表したりします。燃え盛る火であぶり出すような、火の力の強すぎる調理では、やはり体への刺激もつよいのだろうと思います。焼く・揚げるが「がっつり系」なら、蒸すは「しっとり、じんわり系」。火の力を借りつつも、決して強すぎず、真逆の水の力を充分に活かすことで全身の力を抜いていくような、素材をやわらかくほぐして包み込んでいくような蒸す調理の素晴らしさを改めて感じました。

みなさんもこの春、ちょっとしんどいな、疲れているな、と感じたら、ハンバーグや焼き肉をいったんおあずけにして「蒸し料理」を試してみてはいかがでしょうか。せいろなどの特別な蒸し器などがなくても、フライパンに少量の水を入れ、好きな野菜や具材をいれて蓋をすればよいだけなのでとても簡単です。こんがり焼くウィンナーを毎日食べている人は、試しに蒸したウィンナーと食べ比べをしてみてください。そのとき体が何を感じるか、春先の繊細なセンサーでぜひ感じ取ってみてくださいね。自分の体の声を聴きながら、調理法の違いがもたらす効果を想像しながら、今の体がよろこぶ調理法を用いて工夫していきましょう。

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関根愛 

関根愛

俳優を始めた十数年前よりアトピーなどさまざまな心身の不調を感じてきたことで、薬に頼るのをやめて自分の体の声を聴きながら養生していくために自然食を始める。「じぶんらしく生きるための食養生」をテーマにInstagramやnote、Youtubeで日々発信をつづける。マクロビオティックマイスター。映画制作者、ライター、翻訳者としても活動。座右の銘は「山動く」。



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