【『日本の包茎』著者に聞く】いつから恥ずかしくさせられた?童貞・包茎への“イジり”が行われる理由

 【『日本の包茎』著者に聞く】いつから恥ずかしくさせられた?童貞・包茎への“イジり”が行われる理由
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なぜ男性の中で「童貞・包茎は恥ずかしい」という価値観が共有されているのか。『日本の童貞』(文春新書→河出文庫)、『日本の包茎―男の体の200年史』(筑摩選書)の著者で、東京経済大学全学共通教育センター教授の澁谷知美先生に伺いました。

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「こじらせ童貞」「30歳を迎えた童貞は魔法使いになる」……という言葉があるように「童貞は恥ずかしい」という感覚はなんとなく社会に漂っていますが、なぜ「性経験がないこと」が恥ずかしいのでしょうか。また、日本人男性の過半数は仮性包茎と言われていますが、「包茎であること」も男性の中で恥の意識があると聞きます。

童貞や包茎の「恥ずかしさ」の正体について、東京経済大学全学共通教育センター教授の澁谷知美先生は著書『日本の童貞』(文春新書→河出文庫)、『日本の包茎―男の体の200年史』(筑摩選書)にて明らかにしています。

澁谷先生に「恥ずかしさ」の背景、なぜ「童貞イジり・包茎イジり」は行われるのか、「童貞・包茎は恥ずかしくない」という価値観を広めるために必要なことについてお伺いしました。

一部の人が儲けるために作られた「恥」の感覚

——なぜ童貞や包茎は「恥ずかしい」とされているのでしょうか。

まず童貞に関してですが「性交渉をしていない男は半人前」という価値観は、すくなくとも江戸時代からあったものです。一時的に1920年代に当時の知識階層の中で「童貞は美徳だ」という価値観が支持されたこともありました。が、1980年代になると、青年誌が「童貞は恥ずかしい」という価値観を発信し始めました。それまでは男性たちの間でなんとなく共有されていた感覚にすぎなかったものが、メディアから大々的に広められるようになりました。

「日本の童貞」を刊行したのは2003年です。当時は、なぜ1980年代に「童貞は恥ずかしい」という価値観が広められたのかハッキリわからなかったのですが、今考えると、企業が車や服を売るための戦略だったのかなと。「童貞は恥」だから恋人を作るべしという風潮を広め、そのためには車や服を買わなければならないことにして、ビジネスに役立てる意図があったのではと。

包茎についてもほぼ同様で、江戸時代から恥の感覚はありましたが、1930年代に一旦薄れたという指摘があります。恥の感覚が大々的に復活したのはやはり1980年代で、青年誌や中高年向け雑誌が「包茎は臭い・不潔・女性に嫌われる」という美容整形外科医のメッセージを掲載していました。これらは一見普通の記事に見えるのですが、タイアップ記事といって、商品やサービスを売りたいスポンサーが雑誌にお金を払って掲載させているものです。いわば広告ですね。こうしたタイアップ記事が「包茎は恥ずかしい」という価値観と包茎手術を広めた背景があります。

でも、実際には日本人の過半数は仮性包茎ですから、恥に思う必要はまったくないんですけどね。泌尿器科医の石川英二さんが書かれた『切ってはいけません!―日本人が知らない包茎の真実』(新潮社)には、清潔にしていれば問題ないこと、手術が本当に必要なケースは全体の0.07%であることが書かれています。

——「包茎は女性に嫌われる」というメッセージが発せられていたとのことですが、そもそも「包茎とは何か」知らない女性も多いですよね。

おっしゃる通りで、私も大学で性教育を教えていると、女子学生から「包茎って何ですか」と聞かれることはよくあります。ではなぜ1980年代の青年誌に、包茎について熟知しているかのような、女性による包茎批判が掲載されていたのかというと、男性の包茎クリニック医が広告のために「言わせた」からだということが分かっています。これを掲載した雑誌編集者も男性であることをふまえると、「包茎ビジネス」は、男性が男性の不安を煽ることで展開されていたことになります。

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雪代すみれ

雪代すみれ

フリーライター。企画・取材・執筆をしています。関心のあるジャンルは、ジェンダー/フェミニズム/女性のキャリアなど。趣味はヘルシオホットクックでの自炊。



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『日本の包茎日本の包茎―男の体の200年史』(筑摩選書)より
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