「ノンバイナリー」という性のあり方について、ヨガ的価値観に照らし合わせて考えた
宇多田ヒカルさんが公表した”ノンバイナリー”。「恋愛対象は異性?」など混乱しているファンもいるとニュースになりましたが、ノンバイナリーは特定の性別には分類されない性自認。つまり自分のことを”男性とも女性とも思っていない人たち”のことです。当事者たちの中にも多様な考え方があり、自由な生き方の一つと考えると理解しやすいかもしれません。
「ノンバイナリー」とは?
わたしたちの多くが持っている固定概念「性別二元論(ジェンダー・バイナリー)」
ノンバイナリーという性のあり方について理解するために、まずはわたしたちの多くが固定概念として持っている性別二元論(ジェンダー・バイナリー)について考えてみましょう。
バイナリー(Binary)とは”2つの項を持つ”という意味の英単語。これを性別に当てはめると、”男女の2つの項を前提とした考え方”という意味で使われます。つまり、性別二元論とは、”男か女のどちらかである”とする考え方ということですね。
この考え方をベースにわたしたちは日常生活でも法律上でも、「男か」「女か」のどちらかの枠に振りわけてグループ化していきます。
「男か」「女か」のグループ化する要素としては、””出生時に割り当てられた性別”や”戸籍の性別”などの他に、”見た目(服装やメイクアップ)”や”仕草(”女性らしい”言葉遣いなど)”といったものまで様々。
このようにグループ化していくのは、世の中のシステムの多くが性別二元論に基づいて作られているからでしょう。例えば、”男子トイレ”と”女子トイレ”など。
ノンバイナリーとは、どんな人たち?
「ノンバイナリー(Non Binary)」とは、「男か」「女か」という性別に当てはめいない”性のあり方”を示しています。
例えば、自身がノンバイナリーであることを告白した歌手の宇多田ヒカルさんは、日常的に呼称(Ms, Mrs, Miss)のどれかを選ばなきゃいけないことに嫌気を感じているとInstagramで語っています。
先述の通り、世の中のシステムや多くの人々の認識の中では、まだまだ「男か」「女か」という性別二元論を前提としているシーンが多くあります。その度に、「男女どちらでもない」と感じているノンバイナリーの人々がどちらかに振りわけられてしまうことに違和感を感じていることがあるのです。
トランスジェンダーの違いは?
ノンバイナリーとよく混同されるのが「トランスジェンダー」です。トランスジェンダーとは、自身の性についての認識と身体的特徴としての性が異なる状態を指す言葉。
ノンバイナリーとの違いについて更に考えると、トランスジェンダーはほとんどの場合、性別二元論を前提としています。
例えば、トランスジェンダー男性は出生時に割り当てられた性別は女性ですが、男性として生きる/生きようとする人。つまり、自分を「男か」「女か」の枠に当てはめていますね。
ヨガ的価値観を通してノンバイナリーを理解する
ノンバイナリーという言葉が広く浸透している欧米でもその歴史はまだ浅いですが、言葉になっていなかっただけで突然現れたわけではないと考えられます。けれど、あまりに長くの間、「男か」「女か」という価値観を持って生きてきているわたしたちの中には混乱をしている人もいるかもしれません。
そこでヨガ的価値観を照らし合わせて考えてみると、とても理解しやすくなると思います。
ヨガの世界では、肉体は体の一部…”体は私たちの魂の入れ物”にすぎないと考えています。この考え方を理解を深めるために知っておきたいのがヨガ哲学の中に出てくる”アートマン(真我)”という言葉。
聞き慣れないという方もいるかもしれませんが、インドの思想では、自分自身の本質は私たちの体ではないと考え、私たちの内側にあるアートマン(個の根源)が本当の自分だと考えています。初めて聞いたという方にとってはイメージしづらいかもしれませんが、アートマンを「魂」として考えると理解しやすいかもしれません。
私たちの心を含めた体は、「本当の自分(アートマン)の入れ物」なのです。
わたしたちの魂であるアートマンが私たちの内側に存在し、人間や動物として生を全うする。そして、肉体の寿命が訪れると身体から離れて次の入れ物に移動します。つまり、生まれ変わりの「輪廻転生」の考え方がインド思想の根底には存在します。
そう考えていくと、身体的特徴で「男性であるか女性であるか」をグループ化するというのには、どうしても無理があると思います。
自分が男性なのか、女性なのか、それともどちらにも属さないのか。”どちらかでも”いいし、”どちらでもいい”のではないでしょうか。
AUTHOR
桑子麻衣子
1986年横浜生まれの物書き。2013年よりシンガポール在住。日本、シンガポールで教育業界営業職、人材紹介コンサルタント、ヨガインストラクター、アーユルヴェーダアドバイザーをする傍、自主運営でwebマガジンを立ち上げたのち物書きとして独立。趣味は、森林浴。
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