現代人は前屈が苦手?正しい動きを理解しゴルフのパフォーマンスを高めよう【ゴルフが上達するヨガ】
渋野日向子さん専属トレーナーである斎藤大介さんに、ヨガやゴルフを上達する上で欠かせない「体の動き」についての解説していただく「ゴルフヨガ」の連載。今回は体の動きの中でも身近でありかつシンプルとも言える「前屈」と「後屈」をテーマにお届けします。まずは「前屈」についての理論から。
物を拾う、食事をする、パソコンや携帯を触るなど、日常の中で前を向いて行う動作は多いもの。また疲れた時に体を伸ばしたり、体を反らす時は「後屈」を行なっています。こうした動きは、ゴルフなど全てのスポーツに欠かせない基本の動き。ヨガの太陽礼拝でも「前屈」と「後屈」があるようにごく自然に取り入れてられています。
解剖学観点からは、これら「前屈」と「後屈」の動きを「細分化」して見立てることができます。動きが正しくできているかチェックしたり、パフォーマンスをあげるためのエクササイズに役立てていきましょう。
動きを全体的な「面」ではなく、「線」のつながりでみる
「前屈」の動作をシンプルに考えると、体をただ前に倒す(折る)だけ、と捉える人が多いのではないでしょうか。しかし解剖学的に見れば、「前屈」の動きとは、「脊柱」「股関節」「足関節」「頸部」の「屈曲」が複合的に行われることで、きちんとその動きが成立すると考えます。このように前屈の動きについて細かく見ていく=「細分化」していくと、体の動きとは、さまざまな骨や関節が正しい方向に動いたり、力が使えることによって、効率的なパフォーマンスが発揮できていることが分かります。
つまり、体の動きを「面」でなく「線」のつながりととして捉えていくということ。「動き」の理解については、後の連載に続く「後屈」「側屈」「回旋(捻り)」でも同じ考え方なので、ぜひここで覚えておきましょう。
まず「脊柱」について考えていきましょう。現代人は猫背姿勢の人が多いので、脊柱の屈曲は得意です。これはパソコンやスマホを長時間に渡り使っていたりすることが原因。猫背の姿勢がクセになると、肩こりや頭痛などの原因ともなり、解剖学的にももちろん正しい屈曲とは言えません。動きのチェックを行い、トレーニングやエクササイズをして改善していく必要があります。
また脊柱が日常的に屈曲している猫背タイプは、股関節の屈曲が苦手な人が多いと言えます。これは脊柱が常に屈曲している分、股関節の動きが阻害されていると考えることができるからです。
「股関節」を見ていきましょう。動きの中で、股関節は90度近くまで屈曲しているのが理想です。股関節は骨盤の関節禍に凸と凹のようにつながっている「球関節」で、あらゆる方向に動かすことが可能な関節。体に硬さがあったり、トレーニングの経験が浅いと、歩いたり走るなど基本の動きでも股関節から曲げる動作が難しくなります。
「足関節」はわずかですが屈曲の働きをします。また「頸部」も首の後ろが緊張している状態多いと、スムーズに動かすことが難しくなります。
これら4つのそれぞれの働きによって動きが完成する「前屈」。この脊柱、股関節、足関節、頸部をそれぞれ細分化し、前屈ができているかポーズでチェックしてみましょう。
股関節の屈曲のチェック
ゴルフをする上で正しい「前屈」とは、手の位置が足首と膝の間に置くくらいの「半分の前屈」が最も理想的な前屈の動き。脊柱が真っ直ぐに伸び、股関節が90度に屈曲、足関節はわずかに屈曲し、頚椎も真っ直ぐですがしなやかさをキープする。
脊柱の屈曲のチェック
膝をまっすぐ伸ばしたまま脊柱を折り曲げた前屈で、指先が床までつけばOK。
頸部の屈曲のチェック
片方の手を後頭部に当て、顎を下ろす。鎖骨ラインにアゴが付くならOK!
口を開かないとアゴが鎖骨につかない場合は頸部の硬さが見られる。
これはNG
脊柱も曲がり、股関節も屈曲ができていない前屈。
ゴルフのパフォーマンスを高めるために重要な「股関節」
股関節はゴルフなどスポーツで最も重要だといわれています。スポーツでは「パワーポジション」と言われ、野球やテニスなどそのほかの競技でも多少の差はあれど、基本の動作となります。
ゴルフの「パワーポジション」の姿勢は、股関節をしっかり屈曲し、お尻周りや太モモなど大きい筋肉を使います。もしこれらの動きができないと、ゴルフの振りかぶりで腕からいってしまったり、体の中心部から力を発揮することができなくなります。ヨガのポーズでも股関節を使った動きはたくさんあります。しっかりとトレーニングすれば、ヨガの上達にもつながるでしょう。
前述のように、現代人は脊柱が非常に柔らかくなってしまい、股関節も硬いので、結果として体が縮こまりお腹の前側が硬くなっています。つまりは、後屈では体の前側が硬くなり伸びにくいので、動きが取りにくくなっています。
猫背タイプの人は、お腹の前側を引き締めるような前屈の動き(前屈の安定性)よりも背骨を真っ直ぐにキープする「前屈の可動性」や、後屈の動きのエクササイズがオススメです。これについては、「後屈編」でお伝えします。
ヨギーの脊柱は柔らか過ぎ?体の使い方を知ってエクササイズを楽しもう
ヨガのポーズにある「ウッターナーサナ」。柔軟性の高い人であればお腹が太モモに付き、手のひらが床にペッタリと着くほど曲がる人もいますよね。お腹の力を使い、腰やお尻、太モモ裏も伸びるので、とても気持ちがいい!と思う人もいるでしょう。
でもスポーツの観点からすると、手が床に着くほどの前屈は「脊柱が極端に柔らかすぎる」と捉えます。スイングで振りすぎて腰を痛めたりと、柔らかすぎるがゆえ力加減がわかりにくく、怪我をする可能性もあります。
もちろん、適度な筋力があり体の使い方を熟知している人は大丈夫だと言えますが、柔らかければ柔らかいほどいいというわけでもないのです。ヨガでは柔軟性につい注目してしまいますが、正しく骨や関節、筋肉を使って動くことは、他のスポーツと同様に大切なことだと言えるかもしれませんね。体の動きや使い方について正しい知識を得ることで、動く楽しみをどんどん増やしていきましょう!
Text by Yumiko Ozawa
Photos by Azusa Hasegawa
Model : Akane Mishina
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