「後屈」はアドレスの姿勢に影響?後屈を深めるのに必要なことは【ゴルフが上達するヨガ】
渋野日向子さん専属トレーナーである斎藤大介さんに、ヨガやゴルフを上達する上で欠かせない「体の動き」について解説していただく「ゴルフヨガ」の連載。今回は体の動きの中でも身近でありかつシンプルとも言える「後屈」をテーマにお届けします。
後屈の動きとゴルフの関係性
ゴルフはスイング軸を中心にした回転運動です。回転運動がスムーズに行われるためには、スイング軸が安定していなければなりません。そのためには体の前後左右のバランスを整える必要があります。
ところが現代人は一日中座った姿勢で仕事をしている人が多いので、脊柱が慢性的に屈曲している猫背の状態になっています。さらに通勤中や自宅でもスマートフォンをのぞき込んでいる時間が長いので、頚部も屈曲して前後のバランスが崩れています。
このバランスを整えないと正しいスイングにはたどり着けないのですが、ほとんどの方がフィジカルコンディショニングよりも技術の習得を優先しています。本来であればバランスのよいアドレス(構え)を身につけてから技術を習得するべきなのですが、アドレスのバランスが崩れているので正しいスイングが身につかない人がとても多いのです。
アドレスのバランスが崩れているゴルファーの約9割が悪い前かがみの姿勢でクラブを構えています。
脊柱はスイング軸において上半身の回転にとても重要になりますから、脊柱と頚部が過剰に屈曲しているとスイング軸がゆがんでいる状態になり、回転運動がぎこちなくなります。
また、股関節から正しく折り曲げることも難しくなります。 ゴルフスイングは下半身と上半身を別々に動かし、体のねじれ(捻転差)の力を利用してボールを打ちます。平均的には股関節が45度回転し、肩関節が45度回転すると合わせて90度の理想的な体のねじれになります。そのねじれを作るには股関節をしっかり折り曲げ、上半身と下半身を切り離さなければなりません。ほとんどの方がこの部分でつまずいています。
前かがみの姿勢を改善してアドレスのバランスを整えるには、「後屈」で体の背面に刺激を入れるのが効果的です。特に股関節は「後屈」で柔軟性を出さないと「前屈」ができないくらい硬くなっている人が多いので重点的に取り組みます。
ただし、体が柔らかいためアドレスで腰を反りすぎてしまう方も中には今おり、スイング中に力が抜けているケースもあります。これは女性に多い症状ですが、「後屈」の安定性を高めることで克服できます。お尻とお腹に力を入れて体を反らせる動きを身につけると適切な「後屈」になります。
後屈の動きの捉え方
「前屈」の動きを解剖学の視点で細分化すると、「脊柱」「股関節」「足関節」「頸部」の複合的な「屈曲」とお伝えしました。「後屈」の動きも同じように表現できます。「脊柱」「股関節」「頸部」の複合的な「伸展」です。
「屈曲」は関節を曲げる動作、「伸展」は関節を伸ばす動作です。この両方の動きをバランスよく取り入れることが、アドレスのバランスを整えることにつながります。アドレスのバランスが整えば、スイングのバランスも自然に整います。
日ごろからヨガに取り組んで正しい姿勢を身につけている方はゴルフとの相性が抜群にいいと感じます。一方で、ゴルフでスイングが安定せずに伸び悩んでいる人は、ヨガに取り組むことで悩みを解決するきっかけがつかめるのではないかと思います。
後屈の動きの細分化とポーズによるチェック
股関節の伸展のチェック
安定したゴルフスイングを身につけるために最も重要な股関節の柔軟性をチェックします。チェックポイントは2カ所。1・股関節が爪先のラインよりも前に出ているかどうか、2・肩がかかとのラインよりも後ろに出ているかどうかです。
●これはNG
背中だけ反って股関節が前に出ないのが男性に多いNGパターンです。逆に女性は腰だけ反りすぎてしまうNGパターンもあります。
脊柱の伸展のチェック
両手を上げて脊柱が均等にカーブするように反らせます。お腹に力がないと背中が反れないので、ある程度の強さも必要になります。
頚部の伸展のチェック
顔の向きを水平よりもマイナス10度(80度)くらいまで後ろに傾けるのが理想です。おそらく60度くらいしか後屈できない人が多いと思います。
「後屈」の動きを身につけるアプローチ方法には2パターンあります。体の前側を伸ばして可動性で「後屈」を出していくパターンと、体の後ろ側を締めて安定性で「後屈」を出していくパターンです。それぞれいくつかのエクササイズを用意しますので、ぜひ取り組んでみてください。
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