ミニスカートへの挑戦状|私の、私による、私のためのボディポジティブ

 ミニスカートへの挑戦状|私の、私による、私のためのボディポジティブ
Gena
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2022-02-26

痛みも苦しみも怒りも…言葉にならないような記憶や感情を、繊細かつ丁寧に綴る。それはまるで、音楽のような言葉たち。抜毛症のボディポジティブモデルとして活動するGenaさんによるコラム連載。

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「20代後半になったらもうミニスカートは履けないよね」という話で友だちと意気投合したことがある。

2、3年前の話で、私たちが26歳とか27歳ごろのこと。

普段その子とはあまり趣味は合わないので、ここの価値観は一緒なんだねと変な風に感心したのを覚えている。

誰がそんな風に決めたんだろう。どうして普段生活圏の違う友人と私は揃って「ミニスカートは20代前半まで」という風に信じていたんだろう。

アメリカではバリバリのキャリアウーマンでも、膝上丈のスカートをはきこなしているのを見かけるし、それに対する違和感はない。

『グッド・ワイフ』(アメリカのリーガルドラマ)のアリシアとかかっこいいよね。

なのにどうして日本人の女性だと急に違和感があるんだろう?

若くない女性の生足は見苦しいものなの?

あ〜あ、残念。私ももっとミニスカートを存分に着こなして、若さを満喫したかったな・・・と思いかけて、自分にその経験がまったくないことに気がついた。

私はミニと名のつく服を思春期以降着た記憶がない。

例外は高校の制服のスカートだけど、それもかろうじて膝上ぐらいだった。

 

中学で不登校になってから一気に体重が増えた。
日中家にいる時間はとても静かで、部屋の壁は白くて病院のようだった。

世間から切り離されたような孤独な空間にいると、何もしない時間だけがゆっくりと流れる。
その間に脂肪が静かに私の身体の上に降り積もっていった。

ししゃもだった私の足は、子持ちのシャケぐらいのサイズになった。
身長が175センチ近くあることもあり、みるみる服が着れなくなった。

UNIQLOの一番大きなジーンズが履けなくて試着室で泣きそうになったのもこの頃。
万人向けのライフラインのサイズ規定からもはみ出してしまったのか、という実感があった。

でも私はまだ高校生で、新しい素敵な私を探していた。

高1のある日、噂を耳にした。
「北欧からすんごいブランドが日本にやってくるらしい。めちゃくちゃオシャレな服が1000円とか2000円なんだって!銀座にできるんだって!」

2010年頃はファストファッションの嵐が吹き荒れていて、FOREVER 21、H&M、ZARAなどが至るところに出店し始めていた時期だった。

同級生のなっちゃんはなんでも楽しく大げさに話すので、「1000円とか2000円とか」というのは当時の事実とは多少の誤差はあったけれど、おしゃれという点では間違っていなかった。

そして当時注目されていた価格やファッション性のおまけ的な要素として、でも私にとって嬉しかったのはそういったファストファッションの海外ブランドはサイズ展開が予想以上に豊富だったことだった。

私は「新しくて素敵な私探し」に余念がなかった。お財布と相談しながらしょっちゅう店に通った。

そこで身を持って意外なことを学習した。それはサイズ的に身体が入るからといって、その服を着こなせるというわけではないということ。

「体型が変われば」

「顔が変われば」

「髪が生えれば」

「若返れば」

私たちは理想に近づくことができるのだろうか?

外見よりも、心につけられた鎖のほうがきっとずっと重たくてしつこい。

色が派手すぎる、肌の露出が多すぎる、丈が短すぎる…そういう理由で何度も購入を見送った服がある。

モデルの着画はこんなに素敵に見えるのに。

これは完全に着る側の気持ちの問題だと思う。 服の進化に気持ちが伴わなっていないのだ。

母は試着室の私を見てよく悲鳴のような声をあげた。 「短い!太い脚が丸見えよ」

母の声は世間の声でもあったと思う。

私はなりたい自分の声を聞くよりも、世間の声に耳を傾けるようになった。

それが冒頭の会話につながる。

 

ところが、28歳ごろに、自分最大のコンプレックスである抜毛症を受け入れるために始めた「ボディポジティブ」という活動が思わぬ形で今になって影響を及ぼし始めた。

ボディポジティブは、もともとプラスサイズの方が主流で始まった運動だと私は認識しているんだけど、最近ではボディダイバーシティー(身体の多様性)と合流して定義の幅が広がってきている。

ボディポジティブの多くは、「隠せない」自分の身体上の特性が前提にあることに最近気がついた。

隠せない特性をどうポジティブに捉えるか。モデルだったらさらにそれをどう素敵に見せるか。

ここがボディポジティブの肝だと思うのね。

その点私はずるかったのかもしれないな、と思った。

私の抜毛部分はかろうじて隠せる。この活動を始めてからも日常生活で外に出るときは隠してきた。

なぜならそれはやはり変わらず「抜毛」というのは私の心のとても繊細な部分であり、友人でも家族でもない人にとやかく言われる筋合いはないからだ。

世間の声を跳ね返すシールド。

自分のことを好きになる魔法の杖。

自分の身体と心を労る絹のシーツ。

自分と違う相手を当たり前に受け入れ、自分もまた受け止めてもらう柔らかなネット。

私の、私による、私のためのボディポジティブ。

そういうものを信じて飛べるようになった私は、ミニスカートに挑戦してみることにした。
これまで選んだことのないド派手な色のセーターにも。

 

髪を染め直し、意気揚々とセルフ写真館へ向かった。

不思議なことに、カメラの前にしっかり距離を取って立つと、私の足は試着室で見ていたよりもしっくりきた。

赤毛から除く頭皮にも違和感がない。

 

カメラの中の私は素敵だった。

高校生のころから探し求めていた"新しくて素敵な自分"にようやく手が届いたのかもしれなかった。

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記念すべきこの服はプライベートでも大事に着ようと思う。

(※試着の結果、スカートよりもパンツの着心地がよかったので今回はパンツになったのはご愛嬌ね)

どう?みんなは自分の外見に関する価値観のアップデートはもう済んでる?

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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90年代生まれのボディポジティブモデル。11歳の頃から抜毛症になり、現在まで継続中。SNSを通して自分の体や抜毛症に対する考えを発信するほか、抜毛・脱毛・乏毛症など髪に悩む当事者のためのNPO法人ASPJの理事を務める。現在は、抜毛症に寄り添う「セルフケアシャンプー」の開発に奮闘中。



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