【研究者が提唱】「物忘れ」には良い面がある? その理由とは?
その物忘れが、学習の一形態であることがわかった。
スーパーの列に並んでいるときに、ふと思うことがある。あるいはデスクに座っているとき。もしくは交通渋滞に巻き込まれているとき。高校時代の理科の先生の名前を思い出せない。どうしてこんなことが起こるのだろう?その人と1年間、理科の勉強をコツコツと続けてきたのに、今は何も記憶にない。記憶力が落ちているのかもしれない。あるいは、かつてほど記憶がはっきりしていないのかもしれない。あるいは、そうではないかもしれない。このような物忘れは必ずしも悪いことではない、という研究者の新たな理論が提案されている。
トリニティ・カレッジ・ダブリンの研究者が提唱したこの理論は、物忘れのすべてのケースで、エングラム細胞(記憶を保存する細胞)がアクセス可能な状態からアクセス不可能な状態に切り替わることを示唆している。そして、そのアクセスできない状態において、記憶へのアクセスができなくなり、物忘れを引き起こすというのだと言う。
この研究者らは、物忘れの多くは環境の変化が原因であることを提唱している。高校時代の理科の先生の名前を忘れてしまったということではなく、必ずしも覚えている必要はないのである。ということは、結局のところ、忘れてしまったわけではない。あなたの脳は、現在の環境と期待に適応しているに過ぎないのである。
物忘れが回復する可能性がある理由
研究者らは、この種の物忘れは学習の一形態に分類され、永久に失われるというよりはむしろ、環境の必要性や相互作用によって回復するとしている。
ただし、この回復は、アルツハイマー病などの記憶系疾患を持つ人には当てはまらないことに注意する必要がある。これらの病気は、エングラム細胞へのアクセスに悪影響を及ぼし、永久的な記憶喪失や損傷を引き起こすからだ。
まだ予備的な段階だが、研究者らは、今後の記憶や物忘れに関する研究で、これらの新たな概念を取り上げることに注目している。さほど重要でないことを思い出せない、といった悩みとはサヨナラできるかもしれない。エングラム細胞の順応性は、物忘れの負の側面に関する一般的な概念に疑問を投げかけている。
高校時代の理科の先生の名前や、以前の家の近くの通りにあったレストランの名前が思い出せなくなったとしても、心配しないで欲しい。その記憶は、おそらく特定の環境では役に立たないので、脳は一時的にそれを手放しているのだ。(実際、高校の理科の先生の名前を、現段階で覚えておく必要があるだろうか? おそらくそうではないだろう。)
教えてくれたのは…エレン・オブライアンさん
エレン・オブライアンはヨガジャーナル のスタッフライター。ライフスタイル、カルチャー、健康分野を得意とする。Twitter: @ellenobrien0
ヨガジャーナルアメリカ版/「Researchers Say Forgetfulness Can Be a Good Thing. Here’s Why」
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ヨガジャーナルアメリカ版
全米で発行部数35万部を超える世界No.1のヨガ&ライフスタイル誌。「ヨガの歴史と伝統に敬意を払い、最新の科学的知識に基づいた上質な記事を提供する」という理念のもと、1975年にサンフランシスコで創刊。以来一貫してヨガによる心身の健康と幸せな生き方を提案し続けている。
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