"怠け者だから"じゃない!人気トレーナーmikikoさんに聞いた「運動が続かない本当の理由」とは
「幸せを定義する」ということ
ーー私のフォロワーの方はダイエットしている方が多いんですが、例えばプロフィールに「○月までに目標○キロ!」と書いているのを見ると、モチベーションのためにやっていると思うのですが、自分を追い詰めることになっていないかなと心配になることもあります。
mikiko:プロフィールに体重を書いている方よくいますね。自分を体重で定義してしまっている典型例ですね。体重に左右されてしまうなら、それは自分で幸せを定義できてないっていうことだと思います。お金と一緒で、「年収800万円になりたい」とか、なったらなったで「もっともっと」ってなってしまう。自分の満足を定義できているとそうならないけど、学校とか仕事のように目標を掲げて「そこに向けてやれ!」「目標達成したら次の目標を!」ってなるのは軍隊みたいだなと感じます。仕事と学校と目標の設定の仕方と、ダイエットの目標設定の仕方を混ぜこぜにしちゃうと、どんどん迷子になってきちゃいますね。
ーー仕事と勉強の努力と同じような括りにされていることが多いですよね。体重をコントロールできる人は仕事ができる、っていう考え方をする人もいます。
mikiko:頑張ってると絵面がいいんですよね。テレビでも特集されるけど、体重100キロの人が頑張って80キロになりました、とかストーリーが立てやすいので…。ダイエットによる変化はメディアでも使われやすいですよね。
ーーmikikoさんがトレーナーをしていて特に嬉しいと思う瞬間はどんな時ですか?
mikiko:たくさんあるけど、パッと思い浮かんだのは、本人の中で「あ、私いまトレーニングをやってる自分のことが好きになってきたかも」っていうのを感じとれる時とか、笑顔が増えたり自分の体のことややっていることを楽しそうに話してくれる時でしょうか。本当にこの人は変わってきてるんだなって思います。
それは見た目の変化とかではなく、自分の人生自体を好きになれてきているということ。やっていることに対して心がキラキラしていて、この人本当に楽しんでるなっていう感覚。本当にこの時間を楽しんでいるなって感じると嬉しいです。
あとはクライアントが自分の体について学んでいるのを楽しんでいる時。「こんなの知らなかった」「これってどういうこと?」とか、学びを楽しんでいると、どんどん質問が出てくるんです。教える=教育者、相手に気づかせてあげるっていう実感がすごく好きです。
ーーパーソナルトレーナーって言うと、結果にコミットしないと怒られるっていうイメージが何となくあるんです。でもそういうところを喜びとしてくれているのはクライアントさんとしてもきっと嬉しいと思います。
mikiko:結果の定義が違うのかなと思います。痩せるっていう結果を定義している人もいるけれど、私の場合は、その人の人生が好転することを機に、この時に私の人生が変わったなと思ってもらえることを大事にしています。そういう気持ちになってくると体が自然と変わってくるし、結果は、体がどうこうのの先にある、と認識しています。
よく、パーソナルトレーナーは仕事とプライベートは必ず分けろ、クライアントは友達じゃないからって言われるけど、私はそれには反対していて。週に1〜2回会う人って、「親より会っている人」ですよね。親より会ってる人に線引きするって表面的だなと思って。それよりかは、自分の私生活を話すのもそうだしクリスマスパーティに行ったり遊んだり、気が合う人であれば一緒にコーヒー飲みに行ったり、そういう付き合い方のほうが人間らしい。パーソナルトレーナーと言うよりは、チームメイトとして付き合うようにしています。物凄い愚痴を言いながら有酸素運動する方もいるんですよ。「きついけど喋るのが止められない!」って(笑)
ーーそこまで関係性ができて、おしゃべりしながら運動出来ると、行くのが楽しみになりそうですね。まさに続けられる!
mikiko:セッションに来た時に泣いていたクライアントさんもいました。その日最後のセッションだったので、セッション中断して一緒にバーに行って話しました(笑)。「ありがとう、すっきりした」って言って帰って行きましたね。
運動してるどころじゃない精神状態だったのに来てくれた、っていう、そういう出来事は本当に何回かだけど、ありますね。あと、クライアントが誰かに「私のトレーナー」じゃなくて、「私の友達」って紹介してくれたとき「よし!」ってなります(笑)
お金のやりとりもあるし予約もあるから、線を引かないといけないのはそうなんだけど、「ビジネスですので!」って線を引くのではなく、そういった考え方は、自分の中で核にしているところですね。
毎日の筋トレをタスクとして自分に課してしまう人に伝えたいこと
ーー摂食障害になっていて、タスクとして毎日の筋トレを自分に課してしまう方もいるんですが、こういった方にmikikoさんだったらどう声をかけますか?
mikiko:「楽しい?」って聞きますね。フィットネスってフィットなライフスタイルになることだから、プロセスとか生き方の話なんです。結果じゃなくて生き方の話だから、フィットネスがタスクになったり義務付けになると苦しくて仕方なくなる。タスクにして、「あれもやらなきゃこれもやらなきゃ」って私もそういう時期があったけど、「楽しくないならやめていいんだよ」って一石を投じるようにしています。揺らがない人に声をかけてもガードが強くなるだけなので、時間を置いてまた違う方向から石を投げたりします(笑) 方向性を変えながら...コミュニケーションですよね。自分が話すだけじゃなくて、コミュニケーションして「聞くが9割」。私も話すのは大好きだけど、1話したら10聞くようにしています。
ーークライアントさんも自分のお話聞いてくれるの嬉しいですよね。mikikoさんは自分のお仕事を天職だと思いますか?
mikiko:思ってます!(笑)息するように仕事できます。
ーーフィットネストレーナーって、たぶん一生できる仕事ですよね。
mikiko:よくクライアントと話すのは、「もし私が宝くじ当たっても続けるよ」って言ってます。だから私はラッキーなのかな、って思いますね。好きなことを続けるエネルギーを持ち続けられたことは、本当にラッキー。「あんたは頑固だよね、親のいうこと聞かないよね」って言われてきて、それが頑固になり続けて自分の心がワクワクすることを追求して突っ走ってきたらここに辿り着いた、っていう感じで。
海外に行く時にも、親から「どうして普通になれないの?普通に大企業入って結婚して幸せな生活してくれないの?」って言われたこともあって。だから面と向かって「それは親としては幸せになれるかもしれないけど、心の中がゾンビみたいになっている娘を見て、それでも自分の欲が満たせたらハッピーなの?」と聞いたことがあります(笑)。そうやって周りの声をラグビーみたいに跳ねのけながら、続けてきました(笑)。やりたくないことをどんどん省いていった結果がこれですね。
ーー日本にいるとどうしても「日本の枠に収まらないと」と思って苦しくなる人もいるけど、自分の立ち位置を客観的に見ることも大事なことですね。
mikiko:私が日本にいるときは、私が日本を変えることは無理だって思って海外に出たけど、日本の方々と話すようになって今は日本に恩返ししたいって思うようになりました。フィットネスに対する日本の文化を変えられたら、そんな存在になれたらと思ってnoteを更新したりTwitterでメッセージ性のあるようなものを発信しています。
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パーソナルトレーナーとしての学びや喜びを楽しそうにお話してくださったのが印象的で、フィットネスだけではなく、人生そのものを後押ししてくれるような、とてもポジティブな気分になれるインタビューでした。
1人でトレーニングするとストイックになりすぎたり、楽しさよりも苦しさを感じてしまいがちですが、楽しくコミュニケーションをながら、自分の体と生活に合ったトレーニングをすることが、心にとっても大事で継続できるウェルネスなのかもしれません。
現在はニュージーランド在住の方に向けてレッスンしているmikikoさんですが、今後は日本の方向けにオンラインでできるサービスも検討中とのこと。ぜひフォローしてみてくださいね!
お話を伺ったのは…mikikoさん
ニュージーランド在住のパーソナルトレーナー。自身の失敗経験を元に個人差や体質を重視した『mikiko式フィットネス論』を提唱。一生ブレない視野と学びを届けるフィットネスを哲学としている。筑波大学健康増進学修士。ニュージーランドベストトレーナー入賞。
twitter@mikikofit
AUTHOR
吉野なお
プラスサイズモデル・エッセイスト。雑誌『ラ・ファーファ(発行:文友舎)』などでモデル活動をしながら、摂食障害の経験をもとに講演活動やワークショップのほか、ZOOMでの個人セッションも行っている。mosh.jp/withnao/
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