帆立と菜の花の葛あんかけ|身ごと心ごと"あったかい"を求めて|せきねめぐみの、肩の力を抜くごはん

 帆立と菜の花の葛あんかけ|身ごと心ごと"あったかい"を求めて|せきねめぐみの、肩の力を抜くごはん
Megumi Sekine
関根愛 
関根愛
2021-12-25

SNSで見かける、彩り豊かな食事の写真。見るからに栄養がありそうで、こんな食生活を送ってみたいと思う人は多いでしょう。でも「そんなに頑張れない…」という人も少なくないはずです。時間もない、料理が得意じゃない、不器用なあなたに伝えたい「頑張らないごはん」。意識すべきポイントは、とってもシンプルです。今日からできる「簡単な食養生」、教えてくれるのはマクロビオティックマイスターの関根愛さんです。

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みなさん、おはようございます。信仰のある方もない方も、メリークリスマス!一年間走り続けた日々をちょこっと減速させて、わずかでもゆっくり過ごせる時間がありますように。さて本連載は、これで本年は最後となりました。今日は年の瀬の体を労る、私のいちおし冬の一品「帆立と菜の花の葛あんかけ」をご紹介。

この時期になると、数えきれない種類のお鍋用の出汁が店頭に並びますね。寄せ鍋やちゃんこ鍋、キムチ鍋など定番ものから変わり種まで、年々新商品がどんどん出てきて目まぐるしい。時間のないときなどは大助かりではありますが、その都度少なくないプラごみを出してしまうし、なんとなく人工的な味付けに体が癒されない、そう繊細に感じている人もいるのではないでしょうか。そんなときは、ホタテです。ホタテを買ってみてください。ホタテとキノコ(干した舞茸や椎茸はとくにオススメ)を入れた水を沸騰させ、出汁がでてきたら火を止め、塩麹や醤油麹をちょこっと溶き入れる。これだけで体に優しく美味しいお鍋の出汁ができます。ホタテが特に良い仕事をしてくれるんですね。貝は小さい身の中に海の旨味をぎゅぎゅっと蓄えてくれているんだなあと思わず感心してしまいます。

さいごに旬の菜の花を加え、ひと煮立ちさせてください。ほろ苦さが美味しい菜の花は、βカロテンやビタミンCなどのビタミン類やミネラルをバランスよく含み、寒くてガチガチになりがちな冬の血行促進、風邪予防としてぴったりな野菜。長いこと火にかけると栄養素が失われますので、さっと火を通すくらいでOK。ざっと器に盛って完成です。湯気たつうちに熱々を噛み締めて食べれば、さっきまでの末端の冷えも吹き飛び、あっというまに体ごとほかほかに。うっかり菜の花を煮込みすぎてしまったら、栄養分が溶け出した汁ごと、ちゃんと全部いただいてくださいね。葛粉を溶いてとろみを出すとより体が温まるので、芯から冷えた日はぜひ葛を使ってみてください。

近頃よく温泉へ行きます。泉質や効能はさまざまあれど、共通しているのはひとつ。それは、どこへ行っても湯上りにとんでもなく幸せな心地がしている、ということ。その理由を科学的に分析することもできるのでしょうが、何より素直な自分の体がこう言っています。「あったかいって、さいこう!とってもきもちいい!」。体の芯から満ち足りて、思わず頬がゆるんでしまうほどの、何にも変えがたい温かさ。体が喜べば、心もほぐれる。あとはもう何もいらない...。あったかいって、もうそれだけで幸せなことなんだなあと思わずにいられません。こんなふうにして、自分が本当に喜ぶ状態、普段からちゃんと感じてあげていますか?

健康は、体と心のどちらもが健やかな状態であること。体は心につられるし、心は体につられる。そのことをしっかり分かったうえで、世間に氾濫する数多の健康に関する情報に流されず、自分自身の心地よさを時間がかかっても見つけること。それはたった今世間でもてはやされているものや、周りの人たちが進んでやっていることとたとえ違っていても、自分の体と心で本当に感じている心地よさならばそれで良いのです。自分の健康は、自分にしか作れません。お医者さんまかせ、世間まかせの健康は卒業して、自分自身が「本当に良いと感じるセンサー」を一緒に磨いていきましょう。

ひとりひとりが思う「健康」は、皆ちがって当たり前。「なんのために私は健康でいたいの?」と、今いちど自分に問いかけてみてください。やりたいことをやり続けていくためかもしれないし、共に生きていく家族のためかもしれない。生まれてきたことの意味を探し自分にしかできないことを実践していくなら、唯一無二の健康を創造していく過程の上にそれはきっとあるはずです。おのおのにとっての「健康」が見えてくればきっと、もやもやした迷いは消え、何をしていくべきかが自然と見えていくはず。この小さな連載が、みなさんそれぞれにとっての健康づくりの一助となれていましたらたいへん幸いです。どうぞ良き新年をお迎えください。今年一年、どうもありがとうございました。

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AUTHOR

関根愛 

関根愛

俳優を始めた十数年前よりアトピーなどさまざまな心身の不調を感じてきたことで、薬に頼るのをやめて自分の体の声を聴きながら養生していくために自然食を始める。「じぶんらしく生きるための食養生」をテーマにInstagramやnote、Youtubeで日々発信をつづける。マクロビオティックマイスター。映画制作者、ライター、翻訳者としても活動。座右の銘は「山動く」。



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