コロナ禍で浮き彫りになった価値観の違い|価値観が違う相手と上手に付き合うには?臨床心理士が解説

 コロナ禍で浮き彫りになった価値観の違い|価値観が違う相手と上手に付き合うには?臨床心理士が解説
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石上友梨
石上友梨
2021-10-24

価値観の違いに悩んでいませんか?コロナ離婚といった言葉を聞く機会もあるように、コロナ禍でそれぞれの価値観の違いを感じやすくなっています。パートナーや友人など対人関係だけではなく、コロナ禍で会社がどのような対応を取ったかで、会社の考え方と自分の価値観が合わないと感じた方もいるでしょう。今回は価値観が違う相手と上手に付き合う方法をお伝えします。

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コロナ禍で価値観の違いに気づいた!?

私たちはそれぞれに価値観を持っており、それに基づいて考えたり行動したりしています。価値観は、生まれ持った気質、生まれ育った環境や対人関係を通して少しずつ形成されるものです。もちろん、その文化における法律や社会的な望ましさは関係しますが、「何が正解」「何が正しい」というものではありません。2020年以降、コロナ禍による大きな環境の変化によって、パートナーや職場の同僚など、それぞれの価値観の違いが見えやすくなっているのではないでしょうか。コロナという未知のものに対してどのように考え、どのように行動するかは、価値観の影響を受けるものです。また、一緒にいる時間が増えたことで価値観の違いに気付きやすくなったかもしれませんね。

それぞれの価値観を認めること

価値観の違いに気づいた場合、もちろん「相手と距離を取る」「お別れをする」という選択肢があります。しかし、現実的にはすぐにお別れすることは難しく、上手に付き合っていく必要があるかもしれませんね。そのような時、まずは相手の価値観を認めることが必要です。もちろん社会的に望ましくない価値観の場合は、認められない場合があると思います。しかし、そうではなく、偏見を持っているだけであったり、自分の価値観から相手の価値観を判断してしまっている場合があります。このような偏見は知識不足からくるかもしれません。まずは、相手の価値観を知ること、相手の背景を知った上で、このような価値観を抱くこともあると理解する姿勢を見せ、共感はできなくても「こんな風に考える人がいることも、まあまあ分かるな」程度に理解を進めていきましょう。

相手を不快にせず同調しないコミュニケーション

価値観が違う相手とコミュニケーションを取らないといけない場面があると思います。その際は、お互いの価値観を認めた上で、「価値観」と「行動」と分けて考え、価値観を否定しないことがポイントです。価値観や感情などは個人の自由ですし、他人が強要できるものではありません。一方で、「行動」はその場に合ったものもあれば、不適切なものがあります。頭の中にどのような想いを抱えても他人に迷惑をかけませんが、それをその場でどのように表現するか「行動」は適切・不適切があるのです。「そんな考えはおかしい」「そんな気持ちになっちゃダメ」など相手の感情や想いは否定せずに、「あなたはそう思うんだね」「あなたはそう感じたんだね」と同調をするのではなく、相手が主語になる文章として伝え返しましょう。

喧嘩をしないで話し合うために

先ほどお伝えしたように、価値観や感情などは個人の自由ですが、行動には適切・不適切があり、その「行動」について話し合う必要があるかもしれませんね。例えば、マスク未着用が禁止の場所でマスクを外している場合などでしょうか。任意ならば、マスクをしていないことが不適切とは言い切れませんが、禁止なら不適切な行動になるかもしれません。その場合は、「客観的な事実を伝えること」「アイメッセージで伝えること」がポイントです。客観的な事実を伝えるとは、例えば、「この場所はマスクの着用が義務付けられています」など、私情ではなく第三者も承知できるような事実を伝えることです。また、アイメッセージは、「私は心配です」といった自分が主語となるメッセージのことです。例えば、「あなたがマスクをしていないことで注意を受けないか、私は心配しています」「私は罹患することが不安です」などです。

相手と同様に、あなたの感情や想いはあなたの自由です。そかし、それを相手に伝えた上で、どのような選択をするのかは相手次第です。相手の考えを変えようなど、何かを期待したり強要したりすることは避けましょう。そして、あなたの考えを否定するわけではないというメッセージを伝えつつ、自分は何を感じているのか適切な範囲で伝えてみましょう。

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石上友梨

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。



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