デンマークで私が学んだのは、"私のこと"だったかもしれない【私のウェルビーイング】

 デンマークで私が学んだのは、"私のこと"だったかもしれない【私のウェルビーイング】
Chiaki Okouchi
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生活を共にする

フォルケホイスコーレの特徴に、先生も同じ学校内で生活するという習慣があります。私の過ごした両校では学長が敷地内に暮らし、先生が家族で住んでいる学校もありました。暮らしているのは全ての先生ではありませんが、学長や先生、あるいは生徒たちがみんなで小さなこどもをあやしている姿は、まるで大家族のような空間でした。

私たちは朝昼晩の3食のほか、午前と午後のコーヒータイムも食堂で取ります。食事を一緒にすると、それは自然と会話をすることにも繋がります。私はあまり親しくない人との食事は緊張しますし、そのうえ苦手な言語の壁があります。けれども、いつも誰かが私のことを気にかけてくれて、話しかけてくれました。

また、学校の中で暮らしているので、自分がいい状態の時もあれば、そうでない時もあります。あるいは、よそいきの顔で猫を被り続けることも限界があります。その今の自分の素直な状態に、人と一緒に生活しているからこそ、観察ができるようになったとも感じます。

ある時、私が落ち込んでいると、先生からこんな言葉をもらったことがあります。「どんな感情があってもカーペットの下に隠さず、ハグしてあげてね。」人間なんだから、怒ったり、悲しんだりするのは当たり前なのに、これまでなぜだかそういうネガティブな感情を拒絶し、認めたくなかった私。けれども友人たちも、とことん私の気持ちを聞いてくれて、一緒に涙を流してくれて、でも必要であれば1人にさせてくれて。いつも程よい距離感で、たくさんの手を差し伸べてくれる人たちに囲まれて、自分の気持ちの向き合い方を学んだ気がします。

そんな毎日を繰り返し、たとえ数ヶ月というひと時の住まいであっても、そこが自分にとっての居場所であると感じることができました。そしてそこで人の温かさに触れ、好きなことをしながらのんびりと時間を過ごせたことは、私にとって大きな癒しでもありました。環境的、精神的な余白のある時間を体験し、初めて自分の心の機微を見つめることができたように思います。実際の授業の様子など、また次回ご紹介をさせていただければと思います!

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https://eng.uvm.dk/adult-education-and-continuing-training/non-formal-adult-education

AUTHOR

大河内千晶

大河内千晶

1988年愛知県名古屋市生まれ。大学ではコンテンポラリーダンスを専攻。都内でファッションブランド、デザイン関連の展覧会を行う文化施設にておよそ10年勤務。のちに約1年デンマークに留学・滞在。帰国後は、子どもとアートに関わることを軸に活動中。



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夕陽が綺麗だと、みんな学校から駆け出て写真を撮る姿が好きでした