女性ホルモンと深く関係?【皮膚科医が解説】30代40代で急増する顔のシミ「肝斑」の原因と対策
気づいたら広がっていて、一度できると治りにくいのがシミ。そのなかでも特に女性にできやすのが「肝斑(かんぱん)」です。肝斑ができる原因を知り、自分でできる予防法やクリニックで受けられる治療法を皮膚科医の豊田雅彦先生に教えていただきました。
意外と多いシミの種類。肝斑とほかのシミとの違いとは?
「肝斑」はシミの一種であり、シミにはほかにもさまざまな種類があります。まずはシミの種類と特徴を理解しておきましょう。
「シミには大きくわけて、肝斑、老人性色素斑、雀卵斑(じゃくらんはん)、炎症性色素沈着、後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)の5種類あります。一言でシミと言っても種類によって色、発症する場所、発症の仕方が異なり、皮膚トラブルを起こさないためにも自己判断でケアを行わず、皮膚科を受診してシミの種類を確定してもらうと安心です」(豊田雅彦先生)
代表的なシミの特徴
肝斑
頬骨あたりにほぼ左右対称に現れ、茶色で輪郭がはっきりしない状態で広がる。
老人性色素斑
顔だけでなく紫外線があたりやすい手の甲、前腕などにも現れる。茶色や黒色など色はさまざまで、輪郭は明瞭で類円形をしている。
雀卵斑
いわゆるそばかすのことで、目の下に薄茶色の円形のシミが点々とできる。遺伝性の場合が多く白人や色白の人に多く見られる。
炎症性色素沈着
ニキビやアトピー性皮膚炎などの皮膚トラブルがベースにあり、それらの跡がシミとなってできたもの。
後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)
アザの一種で、目の下の頬、おでこの横や鼻の頭に現れ、見た目は肝斑と似ているがシミのもとになるメラニンが溜まる場所が異なる。肝斑はメラニンが表皮(肌の表面)と真皮(皮膚の深い層)にあるのに対して、ADMは真皮だけに存在する。メラニンの溜まる場所が表皮に近いほどシミが黒味を増すため、ADMは青みを帯びた褐色をしている。
男性より女性にできやすい肝斑。その理由とは?
肝斑ができる原因については皮膚科医の間でも未だ意見がわかれており、完全に解明されていないのが現状です。しかしながら、女性ホルモンと紫外線が肝斑の形成に深く関わっていることは確か。ここでは肝斑と女性ホルモンの関係をクローズアップします。
「肝斑は、妊娠や出産、月経周期が乱れる閉経前といったタイミングで形成されるため、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンのバランス変動が関係していると考えられています。また経口避妊薬(ピル)を服用している方は、服用していない方に比べて肝斑が出やすいこともわかっています。肝斑のもとになるメラニンを作り出すメラノサイト(色素細胞)にはエストロゲン受容体があり、エストロゲンによってメラニンが増えることは研究によって明らかです。またプロゲステロンの分泌量が増える妊娠初期、後期にも肝斑が多く形成されるため、ふたつの女性ホルモンのバランス変動や、特にエストロゲンの分泌量の変化が肝斑の形成に深く関与しているといえるでしょう」(豊田雅彦先生)
肝斑ができやすい年齢は、妊娠・出産を迎える30歳~40歳です。では、閉経するとどうなるかというと……。女性ホルモンの分泌が低下すると、新たに肝斑ができることはなく、反対にできた肝斑が消えた例もあるそう。ただし閉経後にホルモン補充療法を行っている方は、引き続き現れる可能性があります。
美白化粧品や美顔ローラーで悪化も!? 肝斑の予防法をチェック
肝斑を増やさないためには、日々のケアが肝心です。肝斑予防のために「今日から始めたいケア」と、美肌意識の高い人ほど注意したい「今すぐやめたほうがいいケア」とは。
「肝斑は女性ホルモンの影響以外に、紫外線の影響も強く受けて発症するため、一番の予防は日焼け対策です。肌がデリケートで日焼け止めクリームを塗れない方は、日傘や帽子をかぶるだけでもある程度は予防できます。また肝斑に限らずシミ全般に通じる大切なケアが保湿です。角質層にはうるおいを保つために働くセラミドという細胞間脂質がありますが、肝斑ができる部分の角質は薄くて乾燥しやすいため外からセラミドなどのうるおい成分を補う必要があります。十分にうるおいが保たれると皮膚のターンオーバーが早まり、メラニンの排出が促進されます」(豊田雅彦先生)
また、シミ予防やシミを目立たなくする美白化粧品は、本来であれば女性の味方。でも自分の皮膚に合わない化粧品を使っていると、肝斑が良くなるどころか悪化させてしまう場合も。ほかにも良かれと思って続けているケアが、実は皮膚にとってNGなんていうことが少なくありません。
「肝斑が形成された皮膚を採取してみると、その部分に炎症があることがわかりました。炎症が起きている皮膚に合わない化粧品を使うとさらに悪化し、肝斑が広がったり、濃くなったりする結果に。化粧品を使って沁みる、腫れる、かゆいなどの症状が出たら使用を中止して皮膚科を受診し、皮膚科医のすすめる化粧品に切り替えてみるのも一案です。また皮膚に刺激を与えるケアも要注意です。例えば、小顔効果を謳った美顔ローラーは、それを使用すること自体は悪くありませんが使い方に注意が必要。なぜなら、強い摩擦は肝斑の大敵だからです。肝斑ができる頬骨まわりは避けて、力を入れ過ぎず、3日に一度を目安に行うようにしましょう。またクリームを塗るときはすり込む必要はなく、指で優しくたたくようにして。洗顔時のごしごし洗いも禁物ですよ!」(豊田雅彦先生)
マスクが手放せない昨今は、マスク擦れによって肝斑が悪化するケースも少なくないそう。マスクによるかゆみやかぶれが気になるときは、我慢して着け続けずに自分の肌に合う素材のものを探してみましょう。
肝斑ができてしまったら……。悪化を止めるために今日からしたいこと
肝斑ができたとしても紫外線対策は継続し、皮膚の炎症を悪化させる美容ケアは控えることが大切。さらに肝斑の一因とされるストレスや睡眠不足にも気をつけて。
「ストレスが肝斑に及ぼす影響ですが、ストレスを受けると脳の視床下部から下垂体を経て副腎皮質に指令が伝わり、コルチゾールというホルモンが分泌されます。すると血圧や血糖値が上昇しストレスに対して体は臨戦態勢に入ります。このコルチゾールの分泌に関わる物質はメラノサイトを刺激し、シミのもとになるメラニンを増加させる作用があるため、上手に気分転換してストレスを溜めない生活を心掛けることが大事。また細胞を傷害する酸化ストレスも肝斑の大敵です。酸化ストレスを抑制するには、抗酸化作用の強いビタミンA・C・Eを含む次のような食品を積極的に摂るようにしましょう」(豊田雅彦先生)
■ビタミンACEを多く含む食品の一例
ビタミンA(人参、ほうれん草、かぼちゃ、レバーなど)
ビタミンC(柑橘類、キウイ、アセロラ、パプリカ、ブロッコリーなど)
ビタミンE(豆類、ナッツ、アボカド、うなぎなど)
「睡眠については何時間寝たかよりも、ゴールデンタイムと言われる『入眠からの3時間』に深く眠ることが鍵になります。なぜならメラトニンという熟睡効果のあるホルモンはゴールデンタイムに分泌され、これがメラニンの製造もとであるメラノサイトの働きを抑制するからです。メラトニンには強力な抗酸化作用もあり、これを成分とするサプリメントで肝斑が改善した研究報告もあります」(豊田雅彦先生)
改善効果が期待できる、皮膚科で受けられる治療とは?
セルフケアで改善が難しい場合などは、皮膚科で肝斑の治療を行うことをおすすめします。その際のおもな治療法は、トラネキサム酸とビタミンCの内服療法、皮膚科医が処方・推薦する保湿剤や美白剤などによるスキンケア・外用療法、ケミカルピーリングやレーザートーニングなどの美容施術の3種類です。レーザー治療が最も効果が高い印象がありますが、豊田先生曰く「内服療法、外用療法の順に試して改善効果が低い場合に、第三の選択肢として考えるのが望ましいです。なお肝斑は再発の可能性があるので、治療を受けて改善しても紫外線対策など日々の予防を続けてください」とのこと。
「皮膚科で行う治療法を説明すると、内服療法で使うトラネキサム酸とは、人工合成されたアミノ酸です。このアミノ酸にはメラノサイトの働きを抑制し、メラニンを作る過程をストップさせる効果があります。早いケースでは8週間程で効果が現れますが、一般的には半年間飲み続けることをおすすめします」(豊田雅彦先生)
次に微弱なレーザーを数回にわたった照射し、メラニンを少しずつ減少させていくレーザートーニングの効果や注意点は?
「原則として糖尿病・高血圧などの疾患を持っている人、出血しやすい作用のある薬を服用中の人、妊娠中の人、治療部位に金の糸を入れている人などは、レーザートーニングを受けられません。しかしクリニックによって条件が異なる場合がありますので、予約前に説明を良く聞いて確認をとるようにしましょう。その効果には個人差があり、1回で少し薄くなる方もいますが、通常3回目位から効果が認められることが多く、ほぼ完全に肝斑のシミが消失するためには、通常5〜8回の治療が標準的な回数です。通常2~4週間に1回程度の通院を要します。なお、回数を重ねても効果が認められない場合は、他の治療・施術との併用や切り替えが必要とされることもあります。レーザートーニングは痛みやダウンタイムはほとんどありませんが、施術後に軽い赤み、ヒリヒリ感や腫れを生じることがあります。これらは通常数日で消失しますが、万が一ひどくなる(強い腫れや水ぶくれなど)ようなら、施術を受けたクリニックに問い合わせてください。また、ニキビのような毛包炎(おでき)が生じる可能性もあります。レーザー照射後の皮膚は紫外線に過敏な状態となるため、日焼け止めなどの紫外線対策を徹底しましょう。皮膚が乾燥傾向となりますので化粧水などによる保湿も必要です」(豊田雅彦先生)
また急激に肝斑が悪化した場合は、女性ホルモンや甲状腺ホルモンが関係する疾患が隠れていることも否定できません。皮膚科を受診することは肝斑の改善だけでなく、大きな病気の早期発見につながる可能性もあるそうです。
教えてもらったのは…豊田雅彦医師
うるおい皮ふ科クリニック院長。富山医科薬科大学付属病院皮膚科に勤務し、1994年より米国ボストン大学医学部皮膚科学教室 皮膚病理・電子顕微鏡部門に留学。2005年にクリニックを開業し、皮膚科・アレルギー科・美容皮膚科・形成外科・漢方皮膚科を専門にする。美容皮膚科ではシミ・シワ・たるみ・くすみ治療、ケミカルピーリング、イオン導入、各種レーザー治療、スキンケアなどを扱う。
AUTHOR
ヨガジャーナルオンライン編集部
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