「痛い婦人科検診」と「痛くない婦人科検診」何が違う?産婦人科医に聞いた

 「痛い婦人科検診」と「痛くない婦人科検診」何が違う?産婦人科医に聞いた
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婦人科検診時に感じる独特の痛みや違和感、不快感。「そういった痛みや違和感を、極力感じさせない検診を心がけている」と話すのは、「麻布モンテアール レディースクリニック」院長で、産婦人科医として20年以上のキャリアを持つ山中医師。婦人科検診で痛みを感じるか否かを分ける違いは何かを聞いてみた。

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産婦人科医として20年以上になります。患者様からのアンケートでよく「診察が痛くなかった」という評価をいただいています。

病院で検査を受ける際、誰でも心配なことのひとつに「何か痛いことをされるんじゃないか」ということがあります。婦人科検診は非常にデリケートな部分の検査ですので、これまでこの痛みについて配慮しながら行なってきました。

痛みが起こりうるポイントについて解説しながら、婦人科検診の内容について、詳しくお伝えしたいと思います。

婦人科検診で痛みが起こりうるポイント

クスコ(腟鏡)のサイズが合っていない

婦人科検診では、クスコという器具を使って腟を開き、子宮腟部(子宮の入り口の部分:子宮がん検診で細胞を採取する部分)を観察します。このクスコにはSS~LLくらいまでサイズがあります。このMサイズ、普通サイズに思われますが、日本人にはやや大き過ぎるようです。膣の入り口の広さや、膣の長さには個人差があり、サイズの合っていない大きいクスコを使うと、必要以上に膣の入り口が拡張され痛みを生じます。

クスコ
クリニックで見せていただいたクスコ。左からSS、S、M、Lの順。
クスコ
クスコの直径サイズで比較。大きさにだいぶ違いがある。

痛みがある、不安を感じる場合は、そういった声を医師や看護師に伝えることで、検査に使用するクスコのサイズを変えることができます。しかし一方で、SSサイズのクスコは膣から子宮腟部までの長さが短いため、しっかり腟部を開くことができず、検査に時間がかかってしまうこともあります。

子宮腟部(子宮の入り口部分)の角度に個人差がある

子宮がん検診では、子宮腟部から細胞を採取するため、子宮腟部(子宮の入り口)をクスコの先端で固定(展開)する必要があります。子宮腟部が真っ直ぐこちらを向いている場合は、その展開は容易ですが、多くの女性はいくらか下を向いていたり、上を向いていたりと角度がついています。その角度がついている子宮腟部を、クスコのブレードの先端だけでこじるように正面を向かせると痛みを生じます。慣れた医師であれば、そういったことも考慮しながら、スムーズに固定(展開)することができます。

子宮ガン検診
クスコを使って腟部を開き、ブラシを入れて子宮腟部の細胞を採取している

内診

婦人科で行なわる内診は、双合診ともいわれ、医師が膣内に片方の指を入れ、もう片方の手で下腹部を圧迫して、子宮や卵巣の大きさ等を調べる方法です。これは、経腟超音波がなかった時代からの手技で、産婦人科医の基本とされています。

婦人科検診でも、この双合診が行なわれますが、その圧迫が強すぎると痛みを生じることがあります。骨盤内に炎症がある場合など、双合診が重要な場面もありますが、初期の子宮筋腫や卵巣腫瘍など診断は超音波検査の方が優れていますし、排卵障害を起こす多嚢胞性卵巣など超音波検査でしか診断できない病態もあります。

超音波検査

古い超音波は、解像度が悪いので、強く押しつけなければ描出が困難なことがあります。最近の超音波は性能がよくなり、それほどではありませんが、超音波のプローブ(膣内にいれる部分)の入れ方によっては痛みを生じることがあります。

超音波
超音波検査で使用している検査器具。使用時に潤滑ゼリーなどを塗って使用することが多い。

何をされるかわからない不安

「これから診察をします」とか、「今から○○します」といった声かけは、検査を受けられる方の不安を和らげるのに大切なことです。見えない部分の検査になりますので、これから何か接触のある検査がありますというサインがあれば、気持ちの準備も整えられるかと思います。

子宮腟部の細胞を採取する際には、小さなブラシなどでこすらなければいけないので、この瞬間にはいくらか痛みや違和感が伴います。この時も「今から少し痛みがあるかもしれません」など丁寧な声がけが必要です。

子宮
子宮腟部の細胞を採取する小さなブラシ(麻布モンテアールクリニックで採用しているもの)

婦人科検診の詳細と、それに伴う痛みの原因について説明してきました。

膣の壁自体は痛みを感じにくい部分ではありますが、外陰部は皮膚の痛点があり、子宮は子宮腟部(入口)~子宮頸管(通り道)~子宮体部(子宮の中)まで痛みを感じる部分です。そういうことを理解した上で、ひとつひとつの検診操作を、丁寧に必要以上の力をいれることなく行なうことが医師にとって大切なことだと思います。

痛みや不快感を減らすために、受診者ができること

病院に行く上で、一番の不安は「何か痛いことをされるんじゃないか」ということではないでしょうか。

婦人科検診は、内診や器具を使う以上、いくらか痛みや不快感を伴うものではあります。

できるだけ力をいれないということは大切なことですが、緊張していたり、クスコや内診の際に反射的に力が入ってしまうこともあります。完全に力を抜いて置くということは難しいことかもしれませんが、事前にどういった流れでどんな検査が行なわれるのかが分かっていれば、その不安や緊張は軽減できるものと思います。

事前に医師や看護師に質問や相談をし、検査中も何かあれば、我慢をせずに伝えてください。

婦人科検診は5分ほどの短い時間で終わる検査ですが、早期に病気を見つけるという意味でとても大切な検査です。

安心して検査を受けられる環境を整えることも、医師や看護師の役割だと考えています。

教えてくれたのは…山中智哉医師
医学博士、日本産科婦人科学会専門医、日本抗加齢医学会専門医。現在、「麻布モンテアール レディースクリニック」にて、体外受精を中心とした不妊治療を専門に診療を行なっている。

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ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



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