ストレッチで若く健康に? 科学が解き明かすヨガの効能

Chris Andre

ストレッチで若く健康に? 科学が解き明かすヨガの効能

生物医学の分野では近年、ヨガが研究対象になっており、ヨギが大昔から知っていること、そう、ストレッチによって体を柔らかく若く健康に保てるということが正当に評価され始めている。

すでにヨガを行っている人であれば、ストレッチの良さを納得するためにわざわざ科学者や生理学者に研究してもらおうとは思わないだろう。それよりむしろ、ヨガの練習を深めていく気にさせるような、柔軟性に関する研究があるかどうか尋ねたくなると思う。たとえば、前屈をしている途中で脚の裏側が硬くて止まってしまうことがあるが、科学はこの時何が起きているのか明らかにしてくれるのだろうか。そしてその知識は、ヨガを深めるのに役立つのだろうか。

このふたつの質問に対する答えは、「Yes」だ。生理学の知識があれば、ヨガによって体内に生じるはたらきを思い浮かべることができ、具体的なメカニズムに意識を集中させて、ストレッチを深めることができる。脚の硬さが骨格のずれによるものなのか、結合組織の硬さによるものなのか、あるいは怪我をしないための神経の反応なのかわかれば、最も高い効果を得るために加減ができるようになる。また、心地よく感じられない理由が、怪我の危険を知らせるメッセージなのか、単に新たな領域を刺激しているという知らせなのかわかれば、今の動きをさらに進めるべきか動きを緩めるべきなのか賢い選択をして怪我を避けることができる。

新たに行われている科学的研究が、ヨガの英知を発展させる可能性もある。ヨガに関わる複雑な生理学的作用をもっとよく理解できれば、体を開く一連の方法に磨きをかけることもできるだろう。

なぜストレッチ?

もちろんヨガの働きは柔軟性を高めることにとどまらない。ヨガは心と体から緊張を取り除き、深く瞑想に入ることを可能にする。ヨガでは、「柔軟性」とは心と体を変える一種の「構え、姿勢」である。

しかし西洋の生理学の観点からすると、「柔軟性」とは単に筋肉と関節を可動域いっぱいに動かす能力ということになる。生まれつき備わっている能力で、ほとんどの人が失っていく。ネブラスカ州リンカーンのカイロプラクター、トーマス・グリーンはこのように説明する。「生活では動きが限られていて座ってばかりなので、体はだらけて、筋肉は萎縮し、関節は狭い可動域で落ち着いてしまうのです。」

  狩猟採集時代には、体を柔軟で健康に保つために必要な動きが、毎日自然に行われていた。かといって、現代の座ってばかりの生活だけが、筋肉と関節を収縮させている犯人とは言えない。活動的な人でも、加齢に伴い体の水分が失なわれ、体が硬くなっていく。成人する頃には、体の組織から15%の水分が失われて、柔軟性も失われ、怪我をしやすくなる。筋肉の繊維は互いに付着し始め、細胞が交差結合して、平行に伸びている筋肉が別々に動かなくなる。さらに、体の柔軟な繊維が、次第に膠原(こうげん)性結合組織と結びついていき、体はいっそう柔軟性を失っていく。このような組織の加齢は、悲惨なまでに動物がなめし革になっていく過程に似ている。ストレッチをしなければ、私たちはからからに乾いて、なめし革のようになってしまうのだ!ストレッチをすれば、組織の潤滑成分の産生を活性化することによって、脱水の過程を鈍化させることができる。また、ストレッチによって細胞の交差結合が解消されて、筋肉の平行に走る構造が再構築されるようになる。

小型化された潜水艦が血管に注入されたラクエル・ウェルチ主演のSF特撮映画(1970年代制作)を覚えているだろうか。西洋の生理学がヨガの練習にどのように役立つかしっかり理解するために、この映画のように、内なる探求を続けて、体内に深く潜って筋肉の働きを調べていこう。

筋肉とは臓器である。多種多様の分化した組織が一体化して、ひとつの役割を果たしている。(生理学者は筋肉を3種類に分けている。内臓の平滑筋、心臓の特殊な筋肉(心筋)、骨格の横紋筋である。ただ、この記事では骨格の筋肉(骨格筋)に話を絞ることにする。てこの働きをして骨を動かすおなじみの筋肉である。)

筋肉の具体的な機能は、もちろん動くことだ。これは、収縮や弛緩によって形を変える特殊な細胞の束、筋繊維によって生み出されている。筋肉は収縮と伸長を交互に繰り返しながら、協調して一連の組織的な動きを行って、体のさまざまな動きを生み出している。

骨格の動きでは、働いている筋肉(つまり収縮して骨を動かす筋肉)は「作動筋」と呼ばれる。その反対の筋群(弛緩伸張して動きを可能にする筋肉)は「拮抗筋」と呼ばれる。骨格の動きには必ず、作動筋と拮抗筋の協調的な活動が絡んでいる。作動筋と拮抗筋は、運動解剖学における陰と陽である。

ストレッチ(拮抗筋の伸張)は骨格の動きの方程式の半分に相当するが、多くの運動生理学者は、健康な筋繊維の弾力性を高めることは、柔軟性を改善させるうえで重要な要因にはならないと考えている。『Science of Flexibility (Human Knetics, 1998)』の著者、マイケル・オールターによれば、現在行っている研究によって、個々の筋繊維は断裂する前に、静止長の150%以上伸びることがわかったという。この伸長性が、筋肉を幅広い動作に対応するのを可能にしている。ほとんどのストレッチや最高に難しいアーサナも行えるようになるのもこの伸張性のおかげだ。

ストレッチを阻んでいるのが筋繊維でないとしたら、いったい何が原因なのだろう。柔軟性を制限しているものと、柔軟性を高めるためにすべきことについては、ふたつの異なる見解がある。一方は、筋繊維のストレッチ自体に注目せずに、結合組織の柔軟性を高めることに注目している。つまり、筋繊維を束ねたり、カプセルのように包んだり、ほかの臓器と網の目のように結んだりする細胞の柔軟性に着目しているわけだ。他方は、不随意神経系である自律神経の「伸展反射」をはじめとする機能に注目している。ヨガはこの両方に働きかけるため、柔軟性を高める方法としてきわめて効果的なのだ。

Translated by Setsuko Mori

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