【研究結果が示唆】マインドフルネスヨガの実践が「慢性的な痛み」と「うつ症状軽減」に効果あり
ヨガジャーナルアメリカ版の人気記事を厳選紹介。8週間のヨガと瞑想のプログラムは、慢性的な痛みを低減し、オピオイド鎮痛薬(医療用麻薬)に代わる方法として注目を浴びています。
慢性的な痛みとうつ病は、同時に発生しやすい障害で、自殺のリスクを高めます。米国国立薬物乱用研究所(NIDA)によると、米国内では1億人以上の成人が慢性的な痛みを抱えており、21世紀のオピオイド・エピデミック(米国では鎮痛薬オピオイドの過剰服用による死者数が深刻な社会問題となっている)の深刻な要因となっています。米国国際疼痛学会によると、2012年、慢性的な痛みの治療には6,350億ドル(約65億8780万円)以上の費用がかかりました。
しかし、最新の研究によると、マインドフルネスを実践することで、慢性的な痛みとうつ病の両方が低減され、臨床治療を補い、痛みをマネジメントするためのオピオイドの代わりとなる可能性があります。学術誌「Journal of the American Osteopathic Association(米国オステオパシー協会誌)」に先ごろ発表された研究では、オレゴン州の農村部で1年以上慢性的な痛みとうつ病を経験した28人の成人を対象に、8週間のマインドフルネスを基本としたストレス低減(MSBR)コースの効果を評価しました。
MSBRは、仏教の伝統に根ざした心身に働きかけるプログラムです。マインドフルネス瞑想とヨガを組み合わせて、ストレス、不安、うつ病、慢性的な痛みなどの様々な症状の治療に役立ちます。心理学の専門誌「サイコロジー・トゥディ」によると、ジョン・カバット・ジン博士によって1979年に開発された MBSRは、現在、全米250ヶ所以上の病院と世界数百ヶ所のクリニックで提供されています。
マインドフルネスに基づくストレス低減と慢性的な痛み
「慢性的な痛みは多くの場合、完全に解消されることはないため、たくさんの人が希望を失っています。しかしながら、マインドフルネスヨガと瞑想は体の構造と機能を改善するのに役立ち、ヒーリングのプロセスを補助します」と、オステオパシーの医師で今回の研究の筆頭著者でもあるシンシア・マースク博士は10月のプレスリリースで述べています。マースク博士は、「治療とは病気を取り除くことを意味しますが、ヒーリングはより完全となるプロセスを意味します。慢性的な痛みを抱えている場合、ヒーリングというのは管理可能なレベルの痛みと上手に生きる術を身につけることをも意味します。そのためにヨガと瞑想は非常に有益です」と語っています。
34歳から77歳までの研究参加者たちは、トレーニング経験のあるMBSRインストラクターと共に週2.5時間のハタヨガと瞑想のクラスを受講しました。また参加者らは週6日、1日当たり30分、自分でも実践しました。研究者らは、コースの開始前後に患者の健康に関する質問票、PCS(痛みの破局的思考尺度)、MO(腰痛疾患に対する疾患評価法)の短縮版を用いて、痛み、うつ病、障害のレベルを評価しました。その調査結果として、MBSRは痛み、うつ病、障害の大幅な低下につながる可能性があることを示しており、調査回答者の89%が気分と機能的な能力の改善を認めています。
慢性的な痛みと頭痛
この最新研究は、MBSRの慢性的な痛みに対する効果を初めて研究したのではなく、MBSRがうつ病の同時発症を効果的に軽減できるかどうかを確認することに焦点を当てたものです。アメリカ合衆国退役軍人省によると、この併存疾患は、特に慢性的な痛みに伴い、うつ病とPTSD(心的外傷後ストレス障害)を経験した退役軍人(一般人口の1.5倍)の間で、驚くべき自殺率の上昇をもたらしました。
2014年の研究では、慢性的な痛みの治療を求める患者の約半数がMDD(大うつ病性障害)を経験し、2012年の研究では、オピオイドの過剰摂取が直接的な原因となり、慢性的な痛み、うつ病、自殺願望を引き起こし、主なリスクとなっていることが明らかになりました。アメリカ軍が以前に行ったヨガと瞑想に関する調査報告書(2017年度)には次のようなことが示されていました。「現役および退役軍人の慢性的な痛みを抱える割合は驚くほど高く、25〜82%の範囲である」。ちなみにその報告書には、ヨガのムーブメントや瞑想を実践した退役および現役軍人にはうつ病の症状減少が見られたことを確認したヨガの介入を伴う複数の研究が紹介されています。
国立精神衛生研究所は、自殺が米国の主要な死因であると述べており、疾病管理予防センター(CDC)は、うつ病や身体の痛みなどのメンタルヘルス障害を自殺の主な危険因子だとして指摘しています。8月に発表された最近のCDCレポートは、感染拡大中の新型コロナウィルスによるパンデミックがアメリカ全土のメンタルヘルスと自殺願望に与えた影響を詳述しています。6月下旬には、成人の40%が薬物乱用とメンタルヘルスの問題に苦しんでおり、31%が不安やうつ病を経験しています。2018年の同様のデータと比較すると、CDCは、調査の時点で過去1か月以内に2倍以上の回答者が自殺を考えていたことを確認しました(2018年度4.3%に対し、2020年度は10.7%)。
ヨガと瞑想は、うつ病の症状を軽減し、慢性的な痛みの治療に役立つことは科学的に証明されていますが、医師または資格のあるメンタルヘルスの専門家の助言なしに、この方法を治療の代わりに取り入れるのは控えましょう。あなた自身、またはあなたの知人がうつ病に苦しんでいて自殺を考えている場合、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556/午前10時から午後10時まで(※))に電話してください。
※ヨガジャーナルアメリカ版の記事になりますが、電話相談の案内については日本国内の相談ダイヤルを掲載しています。
教えてくれたのは…アンドレア・ライスさん
アンドレア・ライスさんはフリーランスのジャーナリストであり、ヨガジャーナルに寄稿している。彼女の記事は、ニューヨークタイムズ、ベリーウェル、ワンダーラストジャーナル、マインドボディグリーン、ソニマ、NYヨガ+ライフなどの出版物にも掲載されている。2010年からヨガを指導し、初の書籍、「The Yoga Almanac(New Harbinger刊、2020年)」は、季節に応じたヨガの実践法を紹介している。ノースカロライナ州ローリーに暮らし、ヨガ、瞑想、クリエイティブ・ライティングのクラスやワークショップを提供している。TwitterとInstagramで彼女とつながろう。
ヨガジャーナルアメリカ版/「Mindfulness-Based Stress Reduction Alleviates Chronic Pain and Depression, According to New Study」
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