不妊治療を終え「チャイルドフリー( 子どもをもたない生き方)」を受け入れること【不妊治療の現実】

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不妊治療を終え「チャイルドフリー( 子どもをもたない生き方)」を受け入れること【不妊治療の現実】

妊娠や不妊について学んだ記憶はありますか? この連載では、不妊体験者を支援するNPO法人Fineスタッフ、また妊活ヨガセラピストとして活動するわたなべまさよさんが、妊娠を望んでいる人が知っておきたいこと、また不妊治療の現状を連載形式で綴っていきます。いつかお母さんになりたい人はきちんと知ってこれからのライフステージをデザインしてゆきましょう。

不妊治療で何十万円もお金をかけたらさすがに出来るでしょ。そう思うかもしれませんが、体外受精を繰り返しても子どもを授かることなく不妊治療をやめる人は意外と多いのです。今回は「子どもを授かることなく不妊治療を終える」ことについて考えてみましょう。

生殖物語

突然ですが、いつか赤ちゃんがほしいですか?

なぜ、ほしいのですか?

え、そんなの当たり前のことだから……と思ったかもしれませんね。幼い女の子がおままごとやお人形遊びをするとき、ママと子どもが登場するように、その頃から親になる人生のイメージは育まれ、成長とともに修正を繰り返しながら形作られていきます。

例えば、好きな人と結婚して2年位はふたりの生活を楽しんで、それから子どもは男の子、女の子で2、3人。そんな心の中のオリジナルなストーリーのことを「生殖物語」といいます。両親を見て学び、周囲の人間関係や環境、文化、メディアなどからも影響を受けます。

自然と子どもを授かった場合は意識されにくいものですが、努力してもなかなか授からなくなったときに存在の大きさに気づかされます。生殖物語は自分の根っこにあるアイデンティティのひとつにもなるため、望み通りにいかなくなると苦痛を感じてしまうのです。

今、あなたの中にある生殖物語はどんなストーリーですか?もし物語が思い通りに進まなくなったとき、じゃあ子どもがいない物語に書き換えればいい、とすんなりいくものでしょうか……。

不妊治療にピリオドを打つ

不妊治療に足を踏み入れるのはむずかしいことですが、それ以上に難しいのが終えるとき。望みがゼロではないところで終える決断をするのはとても難しいことです。それまでかけたお金と時間が無駄になってしまうと感じたり、身心共に疲れ果てやめる決断ができずに続けてしまう人も少なくありません。スパッと決断できる人は少数派で、休んだり戻ったりを繰り返しながらフェイドアウトするパターンの方が多いのです。

その先の人生を立て直すことを考えると「やめる年齢」というのもあらかじめ考えておく必要があるでしょう。

迷ったときは子どもをほしいと思った理由について考えてみましょう

  • 自分、相手の遺伝子のバトンをつないでいきたい
  • 妊娠、出産を経験し、赤ちゃんを抱きたい
  • 子育ての経験、ひとりの人間を育てていきたい

そして、ピリオドを打てたときは自分をほめてあげましょう。

生殖物語の書き換え

赤ちゃんを持つ将来の夢を手放すのは本当につらいこと。夢を実現できないことは「失敗」と捉えがちになり、生殖物語の書き換えには葛藤が生じます。

この物語は治療を終えた後、子どもを持っても持たなくてもずっと続くもの。何度でも書き込んだり書き直したりできて、そこに正しいとか間違っているということはありません。

不妊治療の終わりは新しい人生のはじまり

それまでエネルギーを不妊治療に注いできた人にとって、治療の終結は悲しさや虚しさを感じ、未練が残るかもしれません。でも子どもがいないことが不幸なことではありません。命や人生について深く考え、絶望を味わっても前を向いて歩んできたことは、決して無駄な経験ではないのです。

治療をやめることは違う幸せに向かう第一歩、と捉えることもできます。同じ物事でも見方によってはネガティブにもポジティブにもなり、傷を癒せるのは自分自身なのです。

チャイルドフリーでいることを決めたカップルは痛みや疑問を抱きつつも、治療から離れて体や時間は自由になり、肩の荷が下りて身軽になります。今までできなかったことや興味がわくこと、ボランティアなどそれまでと違った夢や趣味を極めていくことも可能です。

不妊治療の施設では授からなかった人のためのサポートはほとんどありません。当事者によるサポート、カウンセリングなどを受けて自分の体験を話すと心の回復も進みます。(※)

子どもを持つということ

結婚したら子どもを持つのが当たり前。避妊をやめたら自然に妊娠する。この考え方は教育やメディアからの偏った情報の刷り込み、または情報を自分に都合よく解釈している可能性があるため注意が必要です。

深刻な日本の出生率の低下は、結婚する年齢が高くなることで出産が先送りになり、産みたいけど産めない女性が増えている背景があります。生殖年齢を考えると20代半ばで出産が望ましいものの、今の日本では早いと感じられるかもしれませんね。何となく周りに流されるのではなく、自分の人生にとって子どもが重要なのか考えた上でライフプランを立ててみましょう。

皆さんにとってオリジナルな物語が思い通りに進むことを願っています。

NPO法人Fine ~現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会~

参考書籍

  • 「不妊治療のやめどき」松本亜樹子
  • 「妊活に疲れたら、開く本」平山史朗
  • 「子守歌が唄いたくて」ジャネット・ジャフェ他 小倉智子(訳)

ライター/わたなべまさよ
妊活ヨガセラピスト(不妊ピアカウンセラー・ヨガ講師)不妊体験者を支援するNPO法人Fineスタッフ。長期の不妊治療で心と体のバランスを崩したところ、毎日実践したヨガで回復。その後妊活をサポートする側にシフトし、自治体、病院などで講演やヨガとカウンセリングを併用した妊活ヨガセラピーを行っている。「おやすみ前のリラックスヨガ」22時から20分間オンライン(Zoom)で土曜日をのぞく毎日開催。LINE登録で1ヶ月体験無料。詳しくはホームページまで。

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