流産・死産。それらを繰り返す「不育症」を知ってますか?【不妊治療の現実】

 流産・死産。それらを繰り返す「不育症」を知ってますか?【不妊治療の現実】
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妊娠や不妊について学んだ記憶はありますか? この連載では、不妊体験者を支援するNPO法人Fineスタッフ、また妊活ヨガセラピストとして活動するわたなべまさよさんが、妊娠を望んでいる人が知っておきたいこと、また不妊治療の現状を連載形式で綴っていきます。いつかお母さんになりたい人はきちんと知ってこれからのライフステージをデザインしてゆきましょう。

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妊娠したら夢いっぱいのマタニティライフ。出産までの道のりは大変そうだけどほとんどは順調に赤ちゃんを出産できてるんじゃないかな。そうイメージを持つ人も多いかもしれませんね。でも現実は想像以上の人たちがお腹の中で赤ちゃんを亡くすという悲しいお別れを経験しているのです。いつか赤ちゃんをと思う人は流産・死産、それらを繰り返す不育症について知っておきましょう。

流産

妊娠22週より前に妊娠が終わること。妊娠全体の約15%という割合で起き、年齢が高くなるにつれて赤ちゃんの染色体異常は起こりやすくなるため流産するケースも増えます。(※1)

死産

妊娠12週より後にお腹の中で亡くなった赤ちゃんを出産すること。2019年の死産は19,454件。安定期に入っても50人にひとりの割合でおきています。(※2)

グリーフ(悲嘆)ケア

大人が病気で亡くなるようにお腹の中の赤ちゃんもいろいろな原因で亡くなります。どんなに手を尽くしても残念ながら防ぐことも進行を止めることもできません。受け止め方は人によってさまざまですが、手に入るはずだった幸せを突然失う体験はそう簡単に受け入れることはできません。戸籍に入るわけでもお葬式をするわけでもなく、周囲からは見えにくい「死別」なのです。

産んであげられなかったのは自分のせいと自分を責めてしまう中、周囲からの反応に更に傷つけられます。医療施設では取り出された赤ちゃんをまるで物のように扱われて会うこともできなかったり、パートナーとはつらさの重みが違うことで関係が悪化したり、親族や友人に打ち明けると「働き過ぎたから」「またすぐに妊娠できるでしょ」「いつまでも泣いていたら赤ちゃんも悲しむよ」などと言われてますます孤立してしまいます。深い悲しみの中に長い期間とどまり深刻な状態になる人もいます。このようにひとりで抱えてしまい、表面化していないのが現状です。

流産、死産をなかったことにしないで心のケアをすることが大切

  • ・悲しんでもいい
  • ・しっかり出会ってしっかり別れることを意識する
  • ・つらい思いはひとりで抱えずに誰かと分かち合う

語ることのなかった思いが表面化すると少しづつ回復に向かい、前に進む気力も出てきます。全国には不妊専門相談センターが設けられています。(※3) 当事者団体による相談もありますので、うまく利用するのもひとつの方法です。(※4)

次の妊娠がわかってからはまた流産してしまうのではと不安になるかもしれませんが、生活を制限しすぎずに趣味の時間も取り入れながらリラックスして過ごすことが大切です。

不育症

妊娠はするものの2回以上の流産や死産を繰り返す不育症。連続して3回以上連続する流産を習慣流産といいます。中には10回以上繰り返す人もいますが、出産までできないというわけではなくて無事に出産する人も多くいます。原因は抗リン脂質抗体、染色体、子宮の形、内分泌異常などいろいろ分かってきているもののまだ解明されていないことも多く、検査をしても原因が特定できない場合は確立された治療法はありません。明確な指標がない中病院によって評価もさまざま。当事者は効果が実感できなくて、あいまいな検査や治療に揺れてしまいます。

妊娠した喜びと流産、死産を繰り返すと、妊娠はうれしいことだけど同時に怖い。この悩みを抱える人は多いのです。不育症で悩む人たちの声を国は重く受け止め、経済的、精神的な負担を軽くするために動き出しました。社会の理解が進み、安心して妊娠・出産できる環境になることが望まれています。

正しい知識を得てまさかのときに備える

子どもの頃の性教育は「避妊」が強調され、結婚したら妊娠するのが当たり前というイメージが自然とできているのかもしれません。不妊、流産・死産、不育症の生殖の正しい知識を得る機会はなく、当事者になってはじめて知ることばかり。間違った知識のせいで後悔したり、傷つくことも多いのです。

生殖知識をきちんと知ったうえで女性がライフプランを立て、私らしく自分の望む人生を進んでいきましょう。

※1. 日本産科婦人科学会 流産・切迫流産
※2. 厚生労働省の人口動態総覧
※3. 不妊専門相談センター
※4. NPO法人Fine

ライター/わたなべまさよ
妊活ヨガセラピスト(不妊ピアカウンセラー・ヨガ講師)不妊体験者を支援するNPO法人Fineスタッフ。長期の不妊治療で心と体のバランスを崩したところ、毎日実践したヨガで回復。その後妊活をサポートする側にシフトし、自治体、病院などで講演やヨガとカウンセリングを併用した妊活ヨガセラピーを行っている。「おやすみ前のリラックスヨガ」22時から20分間オンライン(Zoom)で土曜日をのぞく毎日開催。LINE登録で1ヶ月体験無料。詳しくはホームページまで。

※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。

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