「サボる」と「頑張らない」の違いって?頑張りやさんが頑張ることに疲れた時の対処法

 「サボる」と「頑張らない」の違いって?頑張りやさんが頑張ることに疲れた時の対処法
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井上敦子
井上敦子
2020-08-10

「リラックスしましょう」「頑張らないで力を抜きましょう」というセリフを、ヨガのクラスではよく耳にします。最近はゆるく生きることや、頑張らずに生きることをオススメするような風潮もあります。しかしながら、「頑張ること」に慣れている人にとって「頑張らないこと」は難しいもの。力の抜き方が分からない、頑張らないとサボっている気がしてしまう…そんな方も多いのではないでしょうか。今回の【疲労回復とヨガ】では、頑張り屋さんが頑張ることに疲れた時の対処方法をお伝えしていきます。

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頑張ることがDNAレベルで染み付いている!?

頑張ることを美徳とする日本の文化。結果に全ての価値を置くことなく、結果に至るまでの過程で「頑張った」ことにも価値を置く。美しい文化であると、個人的には思います。結果に価値を置く実績主義の欧米文化が根付いてきた今でも、結果だけではなく過程を大事にするという価値観は、私たち日本人の根底に根強くあるのではないでしょうか。

そんな文化的背景を持つ私たちは、小さな頃から「頑張ればうまくいく」「頑張って!」という言葉を受けて育ってきた人が多く、頑張ることに大きな価値があるのだと信じ込んでいる場合が多いようです。もちろん、誰かが言ってくれる「頑張って!」に支えられることもある。頑張ること自体が悪い訳でもありません。でも、「頑張らなきゃうまくいかない」という呪縛にとらわれてしまうことは、自分を不自由にしてしまいます。頑張ることがDNAレベルで染みついている頑張り屋さんは、どうしたらラクになれるのでしょうか。

頑張ればうまくいく?

まずそもそも、「頑張ればうまくいく」というのは本当でしょうか?私がヨガクラスで見る限り、その答えはノーです。適度な頑張りはもちろん必要ですが、頑張り過ぎは成功を遠ざけるだけでなく、その人の持っている力を発揮することを阻害してしまいます。良い結果を生むために頑張っているのに、結果的にはその頑張りが良い結果を遠ざけてしまう…そんな矛盾を感じている頑張り屋さんも多いように見受けます。

ヨガのポーズで考えてみると分かりやすいので、例を挙げてみましょう。例えばバランス系のポーズ。バランス系のポーズは適度な「遊び」がポーズをキープする鍵となります。車のハンドルの遊びのようなものです。つまり、筋肉や関節をガチッと固めるようにしてキープするのではなく、筋肉や関節に余裕を残し、身体がぐらついた時にそれを微調整できるだけの「遊び」を持つ。その遊びが、長時間のポーズのキープを可能にしてくれます。

頑張り過ぎるタイプの方は、この遊びがない場合が多い。力み過ぎて肩が上がってしまったり、しっかりポーズをキープしなきゃ!というマインドにより身体が緊張してしまったり。緊張すると筋肉は硬くなるので、ポーズの完成を遠ざける事態を招きやすいのです。この力みと緊張は、「頑張る」ことによる弊害です。リラックスし力を抜くことが出来れば、たいていの場合はもっと良いパフォーマンスを出すことが出来る。これはヨガポーズのみならず、日常生活や仕事にも共通する事柄だと思っています。

どうしたら頑張らないでいられる?

緊張せずにリラックスしたい、適度に頑張る程度に留めたい。頑張らないことで自分がラクになれると分かっていても、「頑張ることが普通」だという人生を送ってきた人にとって頑張らないことは難しい課題。頑張らないことを頑張らなきゃ・・・といったややこしい状態に陥ることもあるかも知れません。

以下は、心と身体に「頑張り」が染み込んでいる人に向けたヨガ的アドバイスです。頑張る自分を否定するのではなく肯定的にとらえながら、力みを手放していけたら良いですよね。

頑張りと緩めることを交互に

まず、緊張(ストレス)と弛緩(リラックス)の関係性を理解しましょう。この緊張と弛緩というのは、本来どちらがいいとか悪いというものではありません。例えば筋肉。筋肉は緊張と弛緩を交互に繰り返し、バランスをとりメリハリをつけることでパフォーマンスが向上します。筋トレなどを日常的に頑張り過ぎると筋肉の緊張により動きが悪くなってしまうのですが、緩めることで働きが良くなるのです。

筋肉だけでなく、思考や行動、生活全体に対しても同じことがいえます。ヨガではバランスという概念を大切にしますが、緊張とリラックスのバランスが取れたとき私たちは心地よく感じるように出来ているし、能力を最大限に発揮することが出来るのです。

まずその仕組みを理解し、頑張り過ぎることの弊害を理解することが大切です。「頑張ればうまくいく」という思い込みがあるようであれば、「頑張ったぶん緩めた方がうまくいく」という新しい価値観を自分に染み込ませていきましょう。

どんな自分でもOK!というマインドを

幼少期に「頑張って!」と周りから受けた言葉を、知らず知らずのうちに今の自分に向かってかけていることはありませんか?もしくは、頑張らないことに対しての罪悪感はありませんか?

頑張って褒められた体験、頑張って認められた体験は、成功体験として深い部分に大人になった今も残っています。逆に言うと、頑張らない自分は嫌いだ、認められないと潜在的に思っているという可能性も。「頑張らない自分は認められない存在だ」という思考が根本にあると、リラックスすることはとても難しいものです。

頑張っている時の自分だけに価値を置くことなく、頑張らない自分も受容する。ヨガの実践は【自己受容】する力を育てると言われます。自己受容とは、「どんな自分でもOK!」「どんな自分でも大丈夫」と思える感覚です。ヨガのポーズの練習やヨガ哲学の勉強は、この「どんな自分でもOK!」という感覚を養っていくことが出来ます。ヨガを実践されていない方も「どんな自分でもOK!」という感覚を、頑張り過ぎてしまう時や頑張っていない自分を責めてしまう時に繰り返し思い出してみて下さい。リラックスしようと試みても難しい場合は、マインドの深い部分に働きかけることが大切です。「どんな自分でもOK!」と頑張らない自分も受容していきましょう。それが結果を生み出す秘訣であり、頑張り屋さんがラクになるキーワードだと思っています。

真面目であることも、頑張ることも、とても美しいことです。頑張り屋さんの気質が自分を苦しめたり疲労させるのではなく、自分を安心させ輝かせるものへと変化していきますように。

ライター/井上敦子
20代前半、心身のバランスを崩していた時期にヨガに出会い、不眠症をヨガで克服した経験を持つ。30代半ばに勤めていた大手企業を退社し、ヨガ講師に転身。現在は、『眠りのヨガ』と呼ばれるヨガニードラを、古典的な手法に加え最先端の欧米の手法も深く学びながらクラスを展開している。15年間の会社員生活の経験から、現代人の抱えやすいストレスをリリースするクラスを得意とし、導者養成講座・コラム執筆・アプリ監修・海外リトリート主催など幅広く活動中。Instagram:@yoga_atsuko.inoue

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