「たくさん食べたのに、すぐお腹が空くのはなぜ?」病気との関係を管理栄養士が解説


満腹になるまで食べたにもかかわらず、すぐにお腹が空くように感じた経験はありませんか?空腹感が我慢できず、間食したことがある方もいるでしょう。実はこの空腹感、「血糖値の変動」に原因があるかもしれません。この記事では、食後すぐにお腹が空く理由を管理栄養士が解説します。空腹を感じにくい食事の摂り方も解説するので、ぜひ参考にしてください。
空腹感の鍵を握るのは「血糖値」

食べ物の消化には通常3〜5時間程度かかるため、食後2時間ほどで胃が空になることはまずないでしょう。それにもかかわらず空腹を感じるのは、血糖値のコントロールに原因があるかもしれません。
血糖値は、食事で糖質を摂取すると上がります。上昇した血糖値は「インスリン」と呼ばれるホルモンの働きにより、正常な値に戻ります。
インスリンの役割は、体の細胞に働きかけて血液中の糖質を取り込ませること。細胞に取り込まれた糖質はエネルギー源として利用されるため、血糖値は次第に下がり、正常な値に戻るのです。
しかし、食事を摂ってから時間が経ち、血糖値が低下した状態が続くと、体はエネルギー不足に陥ります。すると、脳は生命を維持するために、体に空腹を感じさせてエネルギーの摂取を促します。これが「お腹が空いた」と感じる仕組みです。
したがって、食後すぐに空腹を感じるのは、血糖値がうまく調整できていない可能性があります。
すぐにお腹が空くのは炭水化物の食べすぎが原因

インスリンが必要以上に分泌されて、食後の血糖値が一時的に下がりすぎることがあります。これにより体は低血糖の状態になり、脳は「エネルギーが不足している」と錯覚して、食事直後でもお腹が空いたように感じます。
インスリンの過剰な分泌は、ご飯やパン、麺類などの炭水化物の食べすぎが原因かもしれません。これらの食べ物には糖質が多く含まれており、炭水化物をたくさん食べるほど血糖値も上がりやすくなります。
炭水化物の食べすぎにより急上昇した血糖値を抑えようとして、体はインスリンを大量に分泌し、結果として血糖値が下がりすぎてしまうのです。炭水化物をお腹いっぱい食べたのにすぐに空腹を感じるのは、この血糖値の乱高下が影響している可能性があります。
血糖値の乱高下が続くと、血管に負担がかかり、動脈硬化が進むおそれがあります。インスリンを分泌する膵臓にも負荷がかかるため、膵臓の機能が低下して糖尿病になるリスクも高まるでしょう。
また、インスリンを分泌するタイミングがずれて、食後の血糖値が急上昇するケースもあります。これは、インスリンの分泌機能に異常が起きた「隠れ糖尿病」と呼ばれる状態であり、放置していると糖尿病が進行する可能性があります。
「食べたのにお腹が空く」を防ぐ食事の摂り方

食事を摂ったのに空腹を感じる状態を防ぐためには、血糖値の急上昇を抑えることが大切です。具体的には、次のように食事の摂り方を工夫しましょう。
・炭水化物だけの食事にせず、おかずも食べる
・野菜・海藻・きのこのおかずから食べる
・よく噛んでゆっくり食べる
・食事を抜かない
おにぎりやパン、麺類だけで食事を済ますと、血糖値が急上昇しやすくなります。そのため、おかずも一緒に食べるようにしましょう。
とくに食物繊維は、糖質の吸収スピードを遅らせて、血糖値の上昇を緩やかにする作用が期待できます。食物繊維が豊富な野菜・海藻・きのこを使ったおかずを食事に取り入れ、これらのおかずから食べはじめることで、血糖値の急上昇を防げるでしょう。
また、丼ものやラーメンなど炭水化物だけの食事は、速食い(早食い)になる傾向があります。炭水化物を一気に食べることでも血糖値は上がりやすくなるため、品数が多い定食メニューがおすすめです。
食事を抜いて空腹状態が長く続くと、次の食事で血糖値が上がりやすくなることも分かっています。血糖値を安定させるためには、1日3食、規則正しく食べることも重要です。
食事を摂ったのに空腹を感じる方は、血糖値のコントロールに不具合が生じている可能性があります。動脈硬化や糖尿病のリスクを軽減するためにも、食事の摂り方を工夫して血糖値の急上昇を防ぎましょう。
【参考文献】
全国健康保険協会「どうしてこんなにお腹が空くの!?」
厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「インスリン」
厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「食後高血糖」
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