【インタビュー】台湾で診療する日本人中医師、小泉文乃さんに聞く「春の過ごし方」のポイント

 【インタビュー】台湾で診療する日本人中医師、小泉文乃さんに聞く「春の過ごし方」のポイント
photo by Ayano Koizumi
竹田歩未
竹田歩未
2025-04-06
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春は中医学においてこんな季節

春は動植物が動き出す季節。人間の身体でも内側から外側に向かっての動きがあり、身体の中の悪いものが表に出てくると考えます。

中医学における「肝(かん)」は西洋医学的な臓器ではなく、身体の機能の事を指します。具体的には、自律神経や情緒をコントロールしたり、血液を溜める役割を担っています。春に肝が活発になると新陳代謝も活発になり、冬の間に溜まった老廃物を排出しようとするのですが、それがアレルギーやニキビとして現れるのです。

それに、肝は気の流れが滞ることが苦手。春は卒業・入学・入社・新年度と社会生活に大きな変化がありストレスの生じやすい季節。ストレスは気の流れが滞る原因であり、これに対抗して全身の気血の流れを整えるために肝がオーバーヒートする「肝気旺盛(かんきおうせい)」の状態になり、熱が上がるのでイライラやニキビが発生。それだけではなく、肝が働き過ぎて弱ってしまうと眠気や倦怠感といった春特有の症状を引き起こします。

ーーー気の流れ、というワードが出てきましたが、中医学で言う「気」とはどのようなものですか?

「気」自体はエネルギーのことで、体の中を巡ってるものという概念なんですが、目に見えないのでイメージが難しいですよね。中医学では「気」は血液が動くためのエンジンの役割で、これがなければ血液が流れないと考えます。同時に、エンジン(気)を動かすためにはガソリン(血液)が必要で、すなわち血液が無ければ「気」も滞ってしまう。このように「気」と血液はガソリンとエンジンのような相互関係で成り立っています。

春の訪れに合わせて身体をアップデート

ーーー中医学の観点から、春の過ごし方のポイントを教えてください。

中医学の古典『黄帝内経』という医学書によると、春は多少夜更かししても問題ないが早起きを意識し、髪はほどいてゆったりとした服に身を包み、自然の中を散歩すること。おおらかな心を持ち、殺生や人を責めることは避けるべきと記されています。具体的には軽いストレッチやラジオ体操で冬の間に縮こまった身体を伸ばすのが良いでしょう。春のほのぼのしたイメージ通りに身も心もゆったりと過ごしたいですね。

食養生について、春を象徴する色が「青(緑)」なので新鮮な葉物野菜や緑色の野菜を積極的に摂取しましょう。ほうれん草・ピーマン・ブロッコリー・グリーンピースなど。それから、芽吹きの季節なので、アスパラガス、芽キャベツ、スプラウトなどを摂取することで成長するエネルギーを得られます。

また、春になりかけの頃はまだ寒さが残り身体が目覚めていない状態。目覚めをスムーズに促すために、ニラや生姜、ニンニクなどの身体を温めるものを積極的に摂りましょう。

ただ、個々の体質によって異なります。元々体質が冷え性の方は温めることを意識するといいですが、逆に更年期症状でカッとなりやすい方や飲酒習慣がある中年太りの方などは身体が熱を持ちやすい状態なので無理に温める必要はありません。

ーーー自分の体質に合った方法で身体を春に適応させることが大切なんですね。

緑の野菜
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プロフィール:小泉文乃(こいずみあやの)さん

台湾在住。薬学博士、中医師。大学教員時代に共同研究のために初来台、中医師という職業に興味を持つ。台湾の大学の中医学部に入学し、現在は台湾で中医師として台北と基隆の2か所で診療を行っている。台湾に日本人中医師がいることの認知向上と中医学の理解のためにSNSを開設、情報発信をしている。

小泉さんのInstagram

小泉さんが診療しているクリニック

●台北:台北聖璽中醫診所 台北市中山區農安街26號2樓
●基隆:基隆生基中醫診所 基隆市仁愛區劉銘傳路1-3號四樓

クリニックサイト(中国語)

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