「値引きの魚は冷凍保存したいけど…衛生的に大丈夫?」管理栄養士が回答


止まらない物価高で家計が苦しくなった方も多いのではないでしょうか。値が張る魚はできるだけ安く購入したいけれど、値引きの魚は鮮度も落ちていそうだし、すぐに使わない場合は冷凍保存しても大丈夫なのか心配になりますよね。そこで今回は、値引きされた魚を冷凍保存するのは衛生的にOKなのか、管理栄養士が解説します。
日本人の魚の摂取量について
日本人の1995年からのたんぱく質摂取状況の調査にとよると、魚の摂取は6割近くに減少してしまっています。食の欧米化に伴って食肉の摂取が増えたことが原因の一つではありますが、近年の物価高の影響でますます魚を購入しづらくなっているといえるでしょう。魚肉のたんぱく質は肉類に比べて消化吸収が良く、DHAやEPAなどの必須脂肪酸、ビタミンB・D、カルシウムなど多くの栄養素が含まれているため、できるだけ日常的に摂取してほしい食材です。

値引きしている魚は冷凍できる?
結論からいいますと、値引きしている魚は冷凍保存が可能です。消費期限が切れている品物はお店には並ばないので、食べるのに問題はないでしょう。すぐに食べない場合はむしろ上手に冷凍保存をした方が、品質も栄養も劣化させず衛生的に食べることができるのでおすすめです。ただし、お店に並んでからしばらく経っている状態なので、買ってからすばやく下処理をして、品質低下や食中毒を防ぐことが大切です。

冷凍・解凍のポイント
冷凍は上手にすればおいしい状態をキープすることができますが、たんぱく質の酸化が誘発されることもあります。ポイントは、品質の劣化(酸化・乾燥)を防ぎ、ばい菌を極力増やさないようにすることです。
<冷凍のポイント>
- 塩や昆布で締める
魚の水分を塩や昆布が抱えるため傷みにくくなるだけでなく、うまみ成分であるグルタミン酸を増やす効果があります。疲労回復効果や免疫力アップにも役立つ成分です。塩締めは魚に塩を振りかけて10分程度置き、キッチンペーパーで水分をふき取ります。昆布締めは昆布を酒で軽く拭き、魚の切り身をのせて冷蔵庫で3時間~半日程度寝かせます。
- 急速冷凍で変質を防ぐ
-5℃~-1℃の凍り始めの温度帯をできるだけ短時間で通過させることがポイントです。水の分子が大きな氷結晶を生成しやすい温度帯なので、魚肉の組織が氷に圧迫されて損傷しやすくなります。また、酵素なども変質し、解凍時のドリップなどで栄養が損失してしまいがちです。氷結晶を小さくするために、魚に保冷剤をのせたり、アルミのバットにのせて冷凍庫の冷気がすばやく伝わるようにしましょう。

〈解凍のポイント〉
解凍する際に水分(ドリップ)が出てしまうと、栄養も一緒に流れ出てしまいます。ドリップを少なくし、魚肉を変質させないためにできるだけ低い温度で解凍することがポイントです。
- 氷水で解凍する
溶け始める温度である1℃前後をキープできるため、ドリップが一番少なくて済む方法です。保存袋に入れたままの魚を氷水をはったボウルに入れ1時間程度置きます。 - 冷蔵庫で解凍する
魚を冷凍庫から冷蔵庫へ移し、5~6時間かけてゆっくり解凍することでドリップがあまり出ず、味も劣化しにくくなります。
まとめ
値引きの魚を冷凍保存・解凍する時のポイントをご説明しました。正しく冷凍することができれば、食費の節約につながるだけでなく、魚の摂取量も増えて健康的な生活を送ることができそうですね。
参考文献:半額の魚を冷凍保存したい!あり?なし?/魚食普及推進センター
完全版その調理、9割の栄養捨ててます!/世界文化社
ライター:やなぎかおり
特別養護老人ホームにて介護食の大量調理や栄養士業務を経験。働きながら管理栄養士の資格を取得。その後、中学校給食センターにて献立作成、給食管理、食育授業に携わる。結婚、出産を経て、ヘルスケア栄養指導士の資格を取得。子育てをしながら栄養に関する記事執筆を行っている。
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