「朝ごはんは学力アップによい」は本当?管理栄養士が教える、子どもの学力を伸ばす食事
「朝ごはんが大事」とは一般的によく言われているものの、その具体的な理由をご存知ですか?朝食はお子さんが元気に一日過ごすためのエネルギーチャージの機会であるだけでなく、学力アップにもつなげてくれる重要な食事です。一方で、10代後半から20代にかけて朝食の欠食率が上がっていくことが問題視されています。本記事では朝食の大切さについて解説するため、お子さんに限らず大人の皆さまもぜひ参考にしてみてください。
なぜ朝食が大事なの?
朝食の一番の目的は、エネルギー補給です。ただじっと寝ているだけでも、体はエネルギーを消費します。起床したばかりの脳は、エネルギーが不足している状態です。脳にとっての唯一のエネルギー源はブドウ糖です。このブドウ糖が欠乏したまま過ごした場合、生命維持が行えなくなり、集中力や記憶力も落ちてしまいます。朝食はしっかりとエネルギーチャージをおこない、やる気をアップさせるためにも重要な食事なのです。また、文部科学省の調査により、男女ともに朝食を毎日食べる集団は、時々或いは毎日食べない集団よりも、学力・体力の点数が高いことが判明しています。
朝食のポイント
朝食をしっかり食べることは、体内時計を整え、睡眠の質をよくするともいわれています。朝食は1日を通して健康に過ごすためにも、大事な食事なのです。
前項で朝食を食べることが生命維持のみならず学力にもかかわることがわかりましたが、よく噛むことも脳の活性化につながるといわれています。また、栄養素は互いに協調しあって健康を維持してくれるため、バランスよく食べることも重要なポイントです。
学力アップにつながる栄養素
前述のとおり、食事はどれかの栄養素に偏ることなくバランスよく食べ、さまざまな栄養素を摂取することが一番大切です。その中で、とくに学力アップに寄与してくれる栄養素をピックアップして紹介します。
DHA・EPA:記憶力アップ
DHAはドコサヘキサエン酸、EPAはエイコサペンタエン酸が正式名称で、どちらも体内で作ることができない多価不飽和脂肪酸です。近年は「中性脂肪を減らす」といった機能性を謳ったサプリメントもよく目にします。DHA・EPAは血流を改善して血栓を予防する作用のほか、脳の神経伝達をスムーズにし、記憶力や集中力を高めるといわれています。
DHA・EPAの双方を含む代表的な食品がさば缶です。朝食ではごはん派の方は納豆と合わせたり、パン派の方はホットサンドにしてもよいでしょう。栄養とともに塩味と旨味がたっぷりの缶汁を使ったスープもおすすめです。キャベツや白菜、ミニトマトなど、火が通る野菜と合わせれば、忙しい朝でも簡単に作ることができます。
カルシウム:神経の情報伝達を助ける
カルシウムは体内のなかで最も多く体内に存在するミネラルです。カルシウムはお子さんの骨や歯を形成するために不可欠ですが、細胞の内外の情報伝達をするはたらきもあります。これにより、筋肉の収縮や神経興奮の抑制、ホルモンや酵素のはたらきを活性化するなど生体の機能を幅広くサポートすることから、お子さんの心身の成長のためにも重要な栄養素です。
カルシウムはどの年代にも重要な栄養素ですが、厚生労働省が策定した日本人の食事摂取基準(2020年版)において、最も推奨量が多い年齢が12~14歳です。成長期には積極的にカルシウムを摂りましょう。
朝食でカルシウムを補給するためには、乳製品や小魚がおすすめです。チーズとしらすの組み合わせは、ご飯にもパンにもよく合います。豆腐を食べる場合、木綿豆腐の方が絹ごし豆腐よりもカルシウムを多く摂取することができます。
ビタミンB群:エネルギー代謝をサポート
ビタミンB群はビタミンB1・B2・B6・B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン8つの栄養素で構成されたグループです。グループで一緒に摂ることで、より効果的にはたらくといわれています。ビタミンB群のとくに重要なはたらきが、エネルギーの代謝です。食事から摂取した糖質・たんぱく質・脂質を体内でエネルギーとして使えるようにしてくれます。グループのなかでもビタミンB2は「発育のビタミン」と呼ばれる程にお子さんの成長に不可欠で、欠乏した状態では成長障害のリスクが高まります。
ビタミンB群は動物性・植物性の食品のどちらにも含まれるため、複数の食材を組み合わせて摂りましょう。朝食で摂りやすい食品といえば、卵です。ビタミンB12や葉酸が豊富な海苔を合わせるのもよいでしょう。
まとめ
本記事では、朝食の必要性や学力アップをサポートしてくれる栄養素について解説しました。朝食は生命活動を維持するために不可欠であるだけでなく、勉強や仕事にしっかり集中するためにもとても大事な食事です。朝食をしっかり食べて、元気に一日のスタートを切りましょう。
〈参考文献〉
・栄養素図鑑と食べ方テク|中村丁次|朝日新聞出版
AUTHOR
栗城智子
大学卒業後、食品メーカーにて商品開発や品質保証の業務に従事し、管理栄養士を取得。特定保健指導やドラッグストア勤務において、人々の食事や健康、サプリメントに関する悩みに寄り添う。上記資格のほかフードスペシャリスト、離乳食・妊産婦食アドバイザー、日本化粧品検定1級、アロマテラピーアドバイザーなどの資格を保有。食と健康について学びを続けている。現在は子育てをしながら管理栄養士ライターとして執筆や商品監修に携わる。
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