大人もかかる?夏に気をつけたい感染症「手足口病」|医師が教える、子供からうつらないための対策

 大人もかかる?夏に気をつけたい感染症「手足口病」|医師が教える、子供からうつらないための対策
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2024-07-20

保育施設や幼稚園など、小児を中心に夏季に流行する手足口病は大人でも罹患する可能性があります。子供からうつさない対策など、医師が解説します。

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手足口病とは?

手足口病は主に、夏季に流行するウイルス性の感染症であり、罹患者のほとんどは小児例ですが、まれに大人にも感染します。

手足口病は、口の中や、手足などに水疱性の発疹が出る、ウイルスの感染によって起こる感染症であり、子供を中心に、主に夏に流行します。

感染症発生動向調査によると、例年、報告数の90%前後を5歳以下の乳幼児が占めていて、病気の原因ウイルスは、主にコクサッキーウイルスA6、A16、エンテロウイルス71(EV71)で、その他、コクサッキーウイルスA10などが原因になることもあります。

主な感染経路は、飛沫感染、接触感染、糞口感染(便の中に排泄されたウイルスが口に入って感染)です。

特に、この病気にかかりやすい年齢層の乳幼児が集団生活をしている保育施設や幼稚園などでは、子供達同士の生活距離が近く、濃厚な接触が生じやすい環境であることや、衛生観念がまだ発達していないことから、手足口病の患者が発生しやすいと考えられます。

乳幼児では、原因となるウイルスに感染した経験のない者の割合が高いため、感染した子供の多くが発病します。

手足口病の代表的な症状と子供からうつさない対策とは?

手足口病における代表的な症状としては、口腔内粘膜や手の甲、足底部などに水疱性の発疹が現れて、1〜3日間発熱することがあり、水疱は、かさぶたにならずに1週間程度で治る場合が多く見受けられます。

一般的に、感染してから3~5日後に、口の中、手のひら、足底や足背などに2~3mmの水疱性発疹が出ます。

発熱は約3分の1程度の症例において認められますが、あまり高くならないことがほとんどであり、高熱が続くことはほぼありません。

ほとんどの発病者は、数日間のうちに治る病気ですが、稀に髄膜炎、小脳失調症、脳炎などの中枢神経系の合併症、あるいは心筋炎、神経原性肺水腫、急性弛緩性麻痺など、さまざまな症状が出ることがあります。

特に、EV71ウイルスに感染した場合には、他のウイルスによる手足口病と比べて、中枢神経系の合併症を引き起こす割合が高いことが判明しています。

手足口病には有効なワクチンはなく、また手足口病の発病を予防できる薬もありませんので、一般的な感染対策として、接触感染を予防するために手洗いをしっかりとすることと、排泄物を適切に処理することが重要です。

保育施設などの乳幼児の集団生活では、感染を広げないために、職員と乳幼児が、しっかりと確実に手洗いをすることが大切であり、おむつを交換する時など排泄物を適切に処理することが重要なポイントとなります。

一般的に、手足口病に対する特効薬はありませんが、口内炎に対して鎮痛薬で痛みを緩和する、あるいは粘膜保護剤の軟膏などが処方されることがあります。

感染症に伴う症状が悪化すれば、小児科など専門医療機関を受診しましょう。

まとめ

これまで、夏に気をつけたい感染症「手足口病」は大人もかかるのか、その代表的な症状と子供からうつさない対策などを中心に解説してきました。

手足口病は、手掌部や足底部、口腔内などに小さな水ぶくれのような発疹(ほっしん)を引き起こす感染症のことです。

主に、コクサッキーウイルスやエンテロウイルスに感染することによって発症する病気であり、小児を中心に夏季に流行する特徴があり、大人でも罹患する可能性があります。

手足口病の原因ウイルスに対する抗ウイルス薬はなく、発熱などの症状を和らげるための対症療法が治療の主体となります。

子供からうつさない対策としては、日々の手洗いやうがいなど一般的な感染予防策が重要であり、症状が心配であれば、小児科など最寄りの医療機関を受診しましょう。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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