子供の発疹・発熱・嘔吐や下痢が起こったら?幼稚園・保育園でかかりやすい病気と対処法|薬剤師が解説

 子供の発疹・発熱・嘔吐や下痢が起こったら?幼稚園・保育園でかかりやすい病気と対処法|薬剤師が解説
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親にとって子どもの成長は何よりの喜びですが、成長に伴って起こりやすい病気やケガなどもあり、心配は尽きません。とくに発熱や発疹などの症状が出たときには、どのように対処すればよいか、分からないこともあるでしょう。この記事では、幼稚園・保育園でかかりやすい病気と対処法を解説します。

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乳幼児の心身状態は大人とどう違うのか?

乳幼児の心身状態として、まずあげられるのが抵抗力、免疫力が弱いこと。ウイルスなどによる感染症は一度かかると免疫力がついてかかりにくくなるのですが、乳幼児の場合、初めて出会うウイルスばかり。そのため感染症にかかりやすく、しかも悪化しやすい傾向があります。

成長に伴って徐々に生活の場も広がりますが、子どもは初めての経験に対して冒険心と恐怖心、緊張が交じった、いわばストレス状態にあります。大人なら経験的に「こうすればよい」と判断できるのですが、子どもは予測できないため、思いもよらない事故が起こるのです。

また、3~4歳になると自立心ができますが、このとき親の制御が行き過ぎると大きなストレスとなってしまいます。

幼稚園・保育園でかかりやすい病気

幼稚園や保育園は子どもたちが集団生活を行う場所ですから、さまざまな感染症にかかる可能性が高くなります。なかでも、もっともポピュラーな病気はかぜとインフルエンザでしょう。次に多いのが、2歳前後までは嘔吐・下痢、2~3歳以降は感染性胃腸炎です。

次のような病気の症状が出たら、幼稚園や保育園を休ませ、早めに適切な治療を受けることが大切です。

かぜ

かぜのウイルスの感染による上気道の炎症。のどの痛み、鼻水、せき、発熱などがおもな症状。

インフルエンザ

インフルエンザウイルスの感染によって起こる。高熱、頭痛、だるさなど、かぜより強い全身症状が出る。

嘔吐・下痢

ウイルスの感染によって起こり、乳幼児に多い。嘔吐と下痢が強く出る。便に少量の血が混ざることも。

はしか(麻疹)

麻疹ウイルスの感染によって起こる。かぜに似た症状の後、39度前後の発熱、小さな赤い発疹が全身に出る。

水ぼうそう

水痘(すいとう)ウイルスの感染によって起こる。赤い発疹から水疱(すいほう)、かさぶたに変化する。強いかゆみを伴う。

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)

ムンプスウイルスによる感染症。37~38度の熱が出て、耳たぶのつけ根からほお、あごにかけて腫れる。

感染性胃腸炎

多くはかぜのウイルスが原因で胃や腸の粘膜に炎症が起こる。嘔吐から始まることが多く、水様便が出る。

とびひ(伝染性膿痂疹)

おもに黄色ブドウ球菌の感染で起こる。虫刺されやひっかき傷から感染。ブヨブヨの水疱ができて膿(うみ)を持つ。

突発性発疹

ウイルスが原因。突然、39度前後の高熱が出て、3日後くらいに下痢とピンクの細かい発疹が全身に出る。

プール熱(咽頭結膜熱)

アデノウイルスが原因で起こる夏かぜの一種で初夏から秋口に多い。症状は高熱、のどの炎症、結膜炎など。

手足口病

2~6歳に多い夏かぜの一種。口の中や手のひら、足の裏、ひざ、おしりに米粒大の発疹ができる。例年7月に流行のピークとなる。

ヘルパンギーナ

コクサッキーA群ウイルスによる夏かぜの一種で38~39度の高熱、のどの奥の腫れ、痛みなどが起こる。4歳以下がほとんどで、6~7月が流行のピークとなる。

発疹が出たらどう対処すればよい?

発疹が出る子どもの病気は、はしか、水ぼうそう、手足口病、突発性発疹、アトピー性皮膚炎などさまざまな種類があり、病気によって薬の種類や対処法が異なります。市販のステロイド剤という薬を使用することで発疹の症状を軽減させることもできますが、症状に合った適切な治療を行うためにも、薬を塗る前に医師の診察を受けることをおすすめします。

なお、発疹があっても熱がなく元気であれば、入浴しても構いません。子どもは新陳代謝が活発ですから、入浴で皮膚を清潔にしてあげたほうがよいでしょう。

熱が出たらどうすればよい?

子どもは体温を調節する機能が未熟なため、ちょっとしたことで熱が上がります。熱は体が病気と戦っている証拠と考え、解熱剤は38.5度以上で、ぐったりして元気がないときだけに使うようにしてください。解熱剤を使用する場合は、「アセトアミノフェン」という成分が入ったものを使用します。薬局やドラッグストアなどで「小児用の解熱剤」といえば、適切な薬を選んでもらえます。

また、発熱は体から水分を奪いますから、白湯や番茶、スポーツ飲料などで水分補給を十分に。入浴や外遊びは熱が下がって1日たち、元気が出てからにしましょう。

嘔吐や下痢が起こったら?

もっとも多いのがウイルスの感染によって起こるケースです。嘔吐や下痢は脱水症状を招きやすく、急速に進行しますから、水分補給を十分に行いましょう。脱水症の初期症状は、おしっこが少ない、泣いても涙が出ない、唇が乾くなどです。

吐いた後は、30分くらいは何も与えず、その後は吐いてもよいので、少しずつ白湯などを飲ませて様子をみます。下痢のときは、便の様子をみながら、りんごのすりおろし汁、野菜スープ、おかゆなど少しずつ消化のよいものを与えてください。

幼稚園・保育園での病気を予防するには?

子どもがかかる病気の多くはウイルスによる感染症で、予防はむずかしいのですが、できるだけ予防し、悪化を防ぐために次のようなことを心がけましょう。

  • 栄養バランスのよい食事を。

  • 睡眠を十分にとる。

  • 規則正しい生活を送る。

  • 外から帰ったら手洗いや消毒を習慣に。

  • 病気によっては予防接種を。

また、少しでも不安な症状が出たときに気軽に相談できる、かかりつけの小児科医をもつことも大切です。病気が悪化してから、深夜あわてて病院へつれて行くのではなく、早めに診察を受けるようにしましょう。

まとめ

子どもは免疫力が弱いため、ウイルスなどによる感染症にかかりやすく、悪化しやすいといえます。幼稚園や保育園は集団生活を行う場なので、さまざまな感染症にかかる可能性が高くなります。発疹が出た場合は、医師の診察を受けること。発熱の場合は、むやみに解熱剤を使わない。嘔吐や下痢の場合は、脱水症予防のために水分を十分に補給してください。

また、子どもが何らかの病気に感染したときは、完全に治るまで幼稚園や保育園を休ませて、他人にうつさないようにすることが大切です。

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AUTHOR

小笠原まさひろ 薬剤師

小笠原まさひろ

東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。



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