「のどに違和感…」放置してはいけない、注意したい危険な〈のどの違和感〉と隠れた疾患は|医師が解説
のどの違和感を自覚している際には注意が必要です。いくつかの疾患が疑われる場合も。隠れた病気の可能性について、医師が解説します。
①逆流性食道炎
逆流性食道炎は、下部食道括約筋の機能が低下することで、胃酸が逆流を起こして食道に炎症が広がる病気です。
食道の蠕動運動が悪くなると胃の内容物が一時的に逆流した際に迅速に胃に送ることが困難となり、食道にさらに炎症を惹起させます。
逆流性食道炎は、加齢・食事の内容・肥満・姿勢などによって、食道を逆流から守る仕組みが弱まる、あるいは胃酸が増えすぎることで胃液が逆流するために起こります。
逆流性食道炎のその他の原因として、脂肪分や蛋白質の多い食事内容を食べ過ぎることで胃酸が過剰に増加する、あるいは薬の副作用なども考えられています。
逆流性食道炎の症状は非常に多岐に渡ることが知られており、無症状な方もいる一方で、胸焼けや胸痛、もしくはのどの違和感などを自覚する場合もありますので、注意が必要です。
②カンジダ性食道炎
カンジダ症は、カビ菌の一種が体の表面に感染し、赤みやかゆみ、痛みなどを生じる病気です。口や喉、食道、皮膚、陰部など発症する部位が多様なほか、乳児から高齢者までの幅広い年代に発症するため注意が必要です。
カンジダ症の直接的な原因は、カンジダ属の真菌で、最も多いのがカンジダ・アルビカンス菌(Candida albicans)の感染です。
カンジダ菌は病原性の強い菌ではありませんが、病気や薬剤の服用などで免疫力が低下すると急激に増殖し、カンジダ症を発症しやすくなります。
特に、食道カンジダ症とは、食道内に発症するカンジダ症で、内視鏡検査で食道の粘膜表面に白い苔状の付着物が確認できます。
③鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性貧血は体内の鉄分が不足することで赤血球中に含まれるヘモグロビンが作成できなくなることで引き起こされる病気であり、貧血の中で最も疫学的な頻度が高い疾患として知られています。
なぜ、鉄欠乏状態に陥るかといえば、大きく分類すると①鉄需要が増加する、②鉄供給が低下する、③鉄が喪失するの3パターンに分類されます。
無症状の場合もありますが、典型的な症状としては動悸、息切れ、慢性的な疲労感や倦怠感以外にものどの違和感、あるいは匙状爪という爪が反り返って割れやすくなる、あるいは舌がひりひりして味覚障害を呈するなどが考えられます。
のどの違和感や貧血症状を認める際には、内科などを受診して精査してもらうように心がけましょう。
検査結果に応じて、鉄剤の経口投与など適切な治療を実践していきます。
注射治療もありますが、過敏反応を始めとする合併症も考慮されますので、原則経口内服治療が推奨されます。
代表的な症状に、のどの違和感、胸焼け、胸の痛み、食べ物を飲み込む時の痛みなどがありますが、無症状である場合も多く、内視鏡検査で偶然発見される場合も少なくありません。
④咽喉頭異常感症
咽喉頭異常感症は、咽頭喉頭に異常な感じる状態です。
原因を特定することができない真性咽喉頭異常感症(真性)、そして原因が特定可能な症候性咽喉頭異常感症(症候性)があります。
咽喉頭異常感症は「咽頭喉頭に異常な感じがある症状」を訴える症候群であり、特定することが可能な症候性咽喉頭異常感症には咽喉頭酸逆流症、喉頭アレルギー、咽頭癌・口腔がんなどの腫瘍性病変、鉄欠乏性貧血、うつ、不安障害など多岐に渡る疾患が含まれます。
真性の咽喉頭異常感症では、明確な発症原因の同定はできませんが、慢性的な不安や緊張感、疲弊などのストレスからくる自律神経の乱れも関連性があり、自律神経のバランスが崩れて交感神経が優位になると、食道付近の筋肉が過剰に収縮して症状が出やすくなります。
咽頭等異常感症の代表的な症状としては、のどの違和感や異常な感じが出現し、場合によっては何かがのどに引っ掛かって圧迫感やイガイガ感を自覚するケースもありますが、実際の食事や呼吸にはほとんど問題がありません。
これまで意したい危険な〈のどの違和感〉と隠れた疾患などを中心に解説してきました。
のどの違和感を自覚している際には、逆流性食道炎、カンジダ性食道炎、鉄欠乏性貧血、咽喉頭異常感症などの病気を疑います。
消化器関連の病気や精神的な原因によっても、のどの違和感を自覚することがありますので、心配であれば最寄りの内科やかかりつけの医療機関で相談して、適切な診療科を紹介してもらいましょう。
AUTHOR
甲斐沼 孟
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。
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