声がかすれる、喉に異物感…ただの風邪じゃない場合も?「喉頭がん」まさかのサイン|医師が解説
声がかすれる、喉の異物感といった症状が現れる喉頭がんは3タイプに分類されており、喫煙習慣や過度のアルコール摂取によって発症しやすくなります。喉頭がんを疑うサインや治療方法などについて、医師が解説します。
喉頭がんとは?
喉頭がんは、人間のがん全体の数%程度を占める発症頻度の高い悪性疾患ではないものの、耳鼻咽喉科領域ではよく見られるがん疾患のひとつです。
喉頭がんは60歳以上の年齢層に発病のピークがあり、その発生率は10万人に3人程度と比較的少ないですが、喉頭がんを患う人の95%以上が喫煙者であって、その男女比は10:1で格段に男性において罹患率が高いという特徴を有しています。
喉頭は声門上部、声門部、声門下部の3つの部位に分類されており、喉頭がんの多くは声門部、次いで声門上部に発生して、その組織型はほとんどが扁平上皮癌です。
喉頭がんの発症リスクの代表的な要因としては、喉頭がん罹患者の喫煙率は90%以上と非常に高率であり、長年に渡る喫煙習慣が深く関与していることが示されています。
また、アルコールの多飲歴が声門上がんの発生に関与しており、飲酒行為に伴う喉頭への継続的な刺激が喉頭がんの発がん因子として認識されています。
喉頭がんのなかでも、ケースバイケースによって、初発症状、進行度、代表的症状、転移率、治療法、生命予後まで様々な臨床経過の様式を呈します。
喉頭がんを疑うサインとは?
喉頭がんにおける典型的な症状は、発生部位により初期症状は異なるものの声がかすれる「嗄声症状」であり、特に声門がんでは小さな病変でも早期の段階で嗄声症状が出現するがゆえに、約90%の症例で早期がんのうちに発見されやすいという特徴があります。
その一方で、声門上がんの場合には、腫瘍が小さいうちは特有症状がほとんど自覚されず、腫瘍がある程度大きくなって初めて喉の異物感、血痰、嗄声、呼吸困難などの症状が出現するため、早期がんで指摘されるケースは30%程度しか存在しません。
また、声門上部では周囲のリンパ器官の流れが豊富なので、声門上がんは声門がんに比べて頸部リンパ節転移が多いことも特徴の一つとして知られています。
総じて、声がかすれる、喉の異物感がある、血痰や呼吸困難が出現する、首のリンパ節が腫れている場合などは、喉頭がんを疑いますので、頭頚部外科や耳鼻咽喉科など専門医療機関を受診してください。
喉頭がんが疑われた際には、喉頭内視鏡検査を行って、腫瘍性病変が認められた場合には患部から組織片を採取して生検検査を行い、病理検査でがんの確定診断に繋げます。
また、がん病変の広がりや深達度、頸部リンパ節転移の有無を確認するために、造影剤を用いてCT検査やMRI検査、PET-CT検査などを実施することもあります。
喉頭がんの治療とは?
基本的には、喉頭がんに対しては放射線療法や手術治療など個々の喉頭がんの症例で病期に応じた治療が選択され、特に早期がんの場合には、放射線治療、腫瘍切除術、喉頭部分切除術などを含めて発声機能を温存する治療法が主に推奨されています。
進行がんのケースでは、放射線治療でがん組織をすべて制御できる割合が低くなるので、一般的には発声機能が生涯失われる喉頭全摘出術を施行されることが多く、術後には食道発声や電気喉頭などをはじめとする代替音声手段で発声を補うことが必要になります。
抗がん剤などを用いる薬物療法は、喉頭を温存するため放射線治療や手術処置と組み合わせて使用されることが多く、遠隔転移所見を認めた喉頭がんのケースなどに対して実践されることも経験されます。
まとめ
これまで、喉頭がんとはどのような病気か、喉頭がんを疑うサインや喉頭がんの治療などを中心に解説してきました。
喉頭部位に形成される頭頸部がんの一つである喉頭がんは、「声門がん」「声門上部がん」「声門下部がん」の3タイプに分類されており、喫煙習慣や過度のアルコール摂取によって発症しやすく、最も罹患数が多いのは「声門がん」であり、全体の半数以上を占めています。
基本的には、喉頭がんに対しては、放射線療法や手術治療など個々の喉頭がんの症例で病期に応じた治療が選択されます。
喉頭がんでは、生存率を落とすことなく放射線、喉頭部切除、放射線と抗がん剤の併用療法など発声機能を残した治療を選択する見極めが重要であるため、耳鼻咽喉科専門医などに適切なタイミングで相談することが推奨されます。
AUTHOR
甲斐沼 孟
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。
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