フルーツジュースは健康に良い?悪い?管理栄養士が考えるフルーツジュースの落とし穴
なんとなくフルーツジュースは、健康に良さそうと思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、その認識は誤っているかもしれません。今回の記事では、フルーツジュースを摂取することによる影響について管理栄養士が解説します。
フルーツジュースって健康に良くない?
果物は、さまざまな研究により生活習慣病予防に役立つことが分かっています。しかし、日本人の果物摂取量は少ない傾向にあり、1日当たりの目標量200gに届いてないのが現状です。特に20〜40代では摂取量が少なく、果物を毎日ほぼ食べている人の割合は半分にも満たないようです。果物摂取の意識調査によると、「値段が高い」「食べるのが面倒」などと考えている方が多いとされます[1]。
健康意識のある方のなかでは、健康のために市販のフルーツジュースを取り入れている方もいらっしゃるかもしれません。フルーツジュースであれば、カットなどの手間が省けて手軽に果物を摂取しやすいでしょう。しかし、フルーツジュースを飲むことはかえって健康を損なう恐れがあると指摘されているのです。
フルーツジュースがもたらす影響とは?
フルーツジュースの摂取による健康への影響については、世界的に研究されています。いくつかの論文をもとに、どのような影響があると考えられるのか見てみましょう。
清涼飲料水または100%フルーツジュースの摂取とがんとの関連を調べた研究をまとめたレビュー論文によると、100%フルーツジュースを飲む量が増えると、がんのリスクが高くなる可能性があると報告しています。また、果物または果物の加工品の摂取と慢性疾患との関連を調査した研究をまとめた論文によると、缶詰の果物や加糖のフルーツジュースと比べると100%フルーツジュースの方が健康に役立つ可能性があると示唆しています。しかし、長期的に飲むと体重増加につながる可能性があるため、慢性疾患を予防するには生の果物の方が好ましいようです[2,3]。
これらの研究報告では、フルーツジュースは生の果物と比べて食物繊維が少ないこと・満腹感を得られにくくカロリーを摂りすぎてしまう恐れがあることが健康に影響するのではないかと考えられています[2,3]。
生の果物とフルーツジュースの栄養成分の違い
実際に生の果物とフルーツジュースは、栄養成分値にどのような違いがあるのでしょうか。今回はパイナップルを例とし、100g当たりの生の果物とフルーツジュースの栄養成分値を比べてみましょう。
パイナップル | パイナップルジュース | |
エネルギー | 54kcal | 46kcal |
食物繊維 | 1.2g | 0g |
カリウム | 150mg | 210mg |
カルシウム | 11mg | 22mg |
ビタミンB1 |
0.09mg | 0.04mg |
ビタミンC | 35mg | 6mg |
葉酸 | 12μg | 9μg |
このように生の果物と比べると、ジュースの場合、カリウムなどのミネラルが生の果物よりも多いものの、食物繊維やビタミンが少ないことがわかります[4]。
一般的に果物はビタミンやミネラル、食物繊維を補給するのに適した食品とされますが、フルーツジュースは生の果物よりもビタミンや食物繊維の含有量が減ってしまうのです。そのため、フルーツジュースを飲んでも、同じ量の果物の栄養素を摂取できてないといえます。今回紹介した研究結果で「フルーツジュース=悪物」とははっきりとはいえませんが、健康のために果物を取り入れるならフルーツジュースよりも生の果物の方がおすすめです[5]。
果物を取り入れてみよう!
日本人は果物の摂取量が少ないとされるため、できるだけ取り入れたいものです。そうはいっても、「値段が高い」「食べるのが面倒」と感じる方も少なくないでしょう。生の果物を取り入れるのが難しい場合は、カットフルーツや冷凍フルーツを利用するのがおすすめです。カットフルーツや冷凍フルーツはカットしたりむいたりする必要がないため、手軽に食べやすいとされています。また、商品によっては比較的安くコンビニやスーパーで販売されているため、手に入れやすいでしょう。今回の記事を参考に、ご自身に合った方法で果物を取り入れてみてくださいね。
【参考文献】(2024年4月24日閲覧)
AUTHOR
一ノ木菜摘
管理栄養士/ライター。短大卒業後、病院で栄養士として働きながら管理栄養士免許を取得。その後は病院の管理栄養士やコールセンターなどの経験を経てライターとして活動を始める。ダイエットや食品、メンタルなどのヘルスケアについて論文などの科学的根拠をもとにコラムを執筆している。
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