自分一人だと簡単な食事で済ませてしまう人に伝えたい、料理とセルフコンパッションの関係

 自分一人だと簡単な食事で済ませてしまう人に伝えたい、料理とセルフコンパッションの関係
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石上友梨
石上友梨
2024-02-20

皆さんの中には「自分一人だと簡単な食事で済ませてしまう」「誰かのためなら作れるけど、自分のためには作る気が起きない」という人もいるのではないでしょうか。それはなぜでしょうか。セルフコンパッションの観点から考えてみたいと思います。

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「自分のために丁寧に食事を作る」セルフケアにおいて有効な方法は前回の記事でも紹介しています。

セルフコンパッションとは?

セルフコンパッションとは、自分への思いやりのことです。条件付き承認ではなく、どのような自分でも、どのような気持ちでもありのまま受け入れて、自分を大切にすること。セルフ・コンパッションはアメリカの心理学者クリスティン・ネフ先生が提唱し、セルフコンパッションを実践することがいかに大切か、様々な研究によって実証される中で急速に広まりました。セルフ・コンパッションには3つの要素があり、一つ目は「マインドフルネス:何かに注意をむけて、気づいたことをありのまま受け入れる」。二つ目は、「セルフカインドネス:自分に優しくする」。三つ目は、「共通の人間性:他者と自分の共通点に意識をむけ、一人ではないと感じる」。現在はセルフ・コンパッションを高めるための様々な方法が書籍やワークショップなどで学ぶことができます。

料理は家事の中でもエネルギーが必要

私自身もかつては自分のために料理を作ることをしませんでした。誰かのために作るならやる気が出るのに、自分一人だと出来合いのもの、簡単なもので済ませてしまったり。しかし、セルフコンパッションを実践するようになり、自分のために料理を作ることが好きになりました。料理は家事の中でも複雑でエネルギーが必要なものになります。例えば、うつ病の患者さんなど、家事の中でも料理ができなくなったというケースが多いです。なぜ大変かというと、料理はマルチタスクになります。例えば、Aの食材を水につけている間に、Bを粉に塗して…等、複数同時に進む工程がある場合が多いです。また、料理は判断することが多くあります。無限にあるレシピの中から、今日は何を食べようかと決断し、スーパーでどの野菜が新鮮か選別し、食材の量に応じて調味料を調整して…など様々な判断を迫られます。心のエネルギーが低下している時、ストレスが強い時は、マルチタスクも、判断することも大きな負担となります。

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料理とセルフコンパッションの関係

「胃袋をつかむ」という言葉があるように、料理が他者を喜ばせるための手段だという意識が強く、なおかつセルフコンパッションが低いと、「他者は喜ばせるべきだけど、自分は喜ばせるべき存在ではない…」と自分のために料理を作ることに無意識的に抵抗を感じるかもしれません。自分で自分を褒める、労う、大切にする習慣がないと、自分のためだけに、時間をかけて、自分を喜ばせるために料理をしようと思えなくなるのも当然です。そして、自分は価値がないから…という意識が、食事だけではなく、睡眠、人間関係など、様々な場面で自分を大切にしない方向に進んでしまうことがあります。

しかし、前回の記事で伝えたように、「女性は男性よりも、メンタルヘルスが食事の影響を受けやすいこと」が分かっています。自分の身体に耳を傾け、自分にとって必要なこと、自分を思いやることが大切です。自分の好きな食事、栄養バランスの摂れた食事、丁寧に作られた食事。その時々に合わせて、食事の場面でも自分を思いやれるといいですね。「カフェテリア実験」という昔の有名な実験があります。様々な食物や飲料を用意しておき、動物に好きなものを選択させると、不足している栄養素を含む食物を選択していたというもの。つまり、私たちは今の自分にとって不足している栄養素を自然と求める可能性がある。スーパーに行き、今日はミカンが食べたいなと感じたら、ビタミンが不足しているのかも。そんな身体に問いかけた食材選びも楽しいのではないでしょうか。

料理とマインドフルネス

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料理をしながらマインドフルネスを実践のもおすすめです。セルフコンパッションにはマインドフルネスが含まれるように、自分を思いやるためには、自分の気持ちや感覚など内面に気づく練習も必要です。料理をする中で五感を働かせて、食材を切る感覚や音、香り、火を通すと色が変わるような色彩など、五感に意識を向けながら料理をしたり、その工程で「楽しいな」「この香り好きだな」など、感情の変化に意識を向けてみましょう。様々な工程を楽しみながら料理をすると、料理に対する意識が違うものに変わっていくかもしれませんね。

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石上友梨

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。



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