いつも不機嫌な人の「フキハラ」臨床心理士が教える対処法
あなたの近くに、いつも不機嫌オーラを放っている人はいませんか?「不機嫌ハラスメント(フキハラ)」なんて言葉も登場するくらい、不機嫌な人に悩んでいる人は多いようです。そこで今回は、いつも不機嫌な人の対処法についてご紹介します。
いつも機嫌が悪いのはなぜ?
実は、不機嫌な人のコミュニケーションは「赤ちゃん」や「幼児」とほぼ同じ。
「思い通りにならないこと」を「不機嫌(≒泣く)」という手段でコントロールしようとしているのです。
では、どんなものをコントロールしているのか見てみましょう。
「不機嫌」で「責任」から逃れようとする
責任を他者に押しつけるときに、「不機嫌」が利用される場合があります。
例えば、自分がミスしたときでも、「あの人が××と言ったから!」「○○さえなければできた!」と不機嫌な態度を見せ続けると、周囲の人が「確かにあの人も悪かったね」「○○があったのは不運だったね」など、受け止めてくれる可能性があります。
その結果、自分が抱えるべき責任から逃れられるのです。
これは、自分が先に手を出したにも関わらず、やり返されると「○○ちゃんが叩いた!」と泣く子どもの心理に似ています。
「不機嫌」で「不快」を解消しようとする
「なんだかイライラする」とか「トラブルが解決できない」といった不快な状況を自分で処理できない場合に「不機嫌」が使われる場合もあります。
あからさまな不機嫌ムードを醸し出すと、「どうしたの?」と愚痴を聞いてくれる人や、「私がしてあげるよ」と手伝ってくれる人など、自分の代わりに不快な状況を改善してくれる人が見つかるのです。
これは赤ちゃんが「おむつが濡れた」「お腹が空いた」などの不快感を「不機嫌(≒泣く)」で訴え、解消させようとするのに似ています。
「不機嫌」で「他者」をコントロールしようとする
私たちは不機嫌な人を見ると、心配する気持ちから、その人の望むことをしてあげたくなることがあります。あるいは、不機嫌な人がそれ以上不機嫌になるのが怖くて、なるべく刺激しないために、言われるがままになる場合もあるでしょう。不機嫌な態度に付き合うことにうんざりして「はいはい、わかりました」と要望に応じてしまうこともあるかもしれません。
不機嫌には人をコントロールする力があるのです。
ただ、基本的に大人は不機嫌で人を動かすことをよしとしません。要望は言葉で伝えます。不機嫌な態度で人を動かそうとするのは、おもちゃが欲しくて、床にひっくり返って、駄々をこねる子どものようなやり方だからです。
いつも不機嫌な人への3つの対処法
ここからは、いつも不機嫌な人への3つの対処法をご紹介します。
自分に責任があることだけ謝る
不機嫌な人から「あなたが悪い!」と責任を押し付けられそうになったときに、慌てて謝るのはNG。
まずは「どこまでが自分自身が負うべき責任の範囲なのか」を冷静に考えます。その上で「〇〇についてはごめんなさい。でも××に関しては私の責任ではありません」と自分の責任の分だけ謝りましょう。「あのときもあなたのせいで、私は酷い目にあった!」など、過去の出来事を持ち出される可能性もありますが、「今はその話については関係がありません」と、はっきり線引きをします。
相手が背負うべき責任の押し付けには、NOを示すことが大事です。
自分の心身を守る「時間」と「空間」を確保する
相手の機嫌が直るまで関わっていると、自分の心身が消耗してしまいます。「いつまで・どこまで対応できるのか」という限界をはっきり示しておきましょう。
自分に対応する余裕がないなら、距離を取るのもOK。不機嫌な人は「酷い」とあなたを責めるかもしれませんが、大人である以上、自分の機嫌は自分でとるのが本来のあり方です。あなたが責められる理由はありません。
また、癇癪を起こした子どもに静かな部屋で過ごしてもらうことで気持ちを落ち着ける「クールダウン」という方法があります。大人の不機嫌であっても、周囲が構わず放っておいた方が落ち着くこともあります。
「不機嫌」を理由に態度を変えない
「不機嫌だから」と言って、機嫌をとったり、特別扱いしたりするのはNG。「不機嫌な態度をとればコントロールできる人だ」と思われてしまいます。不機嫌な言動に気づいても、態度を変えず、淡々と接しましょう。
もちろん、喧嘩するのもよくありません。
おわりに
不機嫌な人に根負けし、周囲が「あの人はそういう人だから」と、赤ちゃん・幼児扱いをすると、ますます不機嫌な人の言動は悪化していきます。
きちんと大人として接し、相手の責任や感情については引き受けられないことを示しましょう。「この人には何も押し付けられない」「この人はコントロールできない」と気づいた相手は、あなたから離れていくはずです。
AUTHOR
佐藤セイ
公認心理師・臨床心理士。小学生の頃は「学校の先生」と「小説家」になりたかったが、中学校でスクールカウンセラーと出会い、心の世界にも興味を持つ。大学・大学院では心理学を学びながら教員免許も取得。現在はスクールカウンセラーと大学非常勤講師として働きつつ、ライター業にも勤しむ。気がつけば心理の仕事も、教える仕事も、文章を書く仕事もでき、かつての夢がおおよそ叶ったため、新たな挑戦として歯列矯正を始めた。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く