〈ツナ缶〉主流は「マグロ」ではなく「カツオ」?栄養や味に違いはある?ない?管理栄養士が解説
サラダや和え物、炒め物など、さまざまな料理に使えて便利なツナ缶。ツナといえば「マグロ」のイメージがありますが、「カツオ」を原料にしたツナ缶があることをご存じでしょうか?この記事では、ツナ缶の原料による栄養価や味の違いについて解説します。ツナ缶の違いを知り、毎日の料理に活かしてくださいね。
ツナ缶の原料は3種類
ツナの缶詰をよく見ると、「マグロ」と書かれている商品以外にも「カツオ」と記載されているものがあることがわかります。実のところ、ツナ缶の原料にはビンナガマグロ、キハダマグロ、カツオの3種類の魚が主に使われています。
ビンナガマグロは別名「ビンチョウマグロ」とも呼ばれるマグロの一種です。脂がのった「ビントロ」は、寿司でも人気のネタですね。日本ではビンナガマグロのツナ缶が最高級とされており、3種類のなかではもっとも高価。加熱すると身が白っぽくなることからホワイトミートと呼ばれ、缶詰にも記載されています。
キハダマグロはマグロのなかでも魚体が大きく、100kgを超えることもある魚です。ビンナガマグロよりも漁獲量が多いため、キハダマグロのツナ缶は比較的リーズナブル。身は若干黄みがかっており、ビンナガマグロのホワイトミートに対してライトミートと呼ばれています。
日本ではツナ=マグロと思われがちですが、世界的な主流はカツオのツナ缶です。ツナ缶の原料3種類のなかではもっとも漁獲量が多く、価格が手頃であることがその理由のようです。カツオも黄みがかった色をしているため、ライトミートと呼ばれます。
カツオは、英語で「skipjack tuna」といわれるように、海外ではツナの一種とみなされています。実は「ツナ」は、スズキ目サバ科マグロ族に分類される魚を指す言葉。マグロ族には、ビンナガマグロやキハダマグロなどのマグロ属のほかにカツオ属も分類されるため、カツオも「ツナ」と呼ばれるのです。
栄養価に違いはある?
ビンナガマグロ、キハダマグロ、カツオを原料としたツナの栄養価を比べてみましょう。次の表は、油漬け缶詰100g当たりの主な栄養価を比較したものです。
ビンナガマグロ | キハダマグロ | カツオ | |
エネルギー(kcal) | 279 | 265 | 289 |
たんぱく質(g) | 18.8 | 17.7 | 18.8 |
脂質(g) | 23.6 | 21.7 | 24.2 |
糖質(g) | 0.1 | 0.1 | 0.1 |
食塩相当量(g) | 0.9 | 0.9 | 0.9 |
鉄(mg) | 1.8 | 0.5 | 0.9 |
ビタミンE(mg) | 8.3 | 2.8 | 2.6 |
ビタミンK(μg) | - | 44 | - |
ビタミンB6(mg) | 0.15 | 0.26 | 0.40 |
ビタミンB12(μg) | 2.0 | 1.1 | 2.8 |
ビンナガマグロのツナは鉄が多く、キハダマグロのツナにはビタミンKが含まれるなどの違いが見られるものの、基本的に大きな差はありません。
キハダマグロやカツオのツナ缶を指す「ライトミート」は、身の色を表しています。エネルギーが少ないことを意味しているのではないことに注意しましょう。
上記はツナ缶の油を含んだ数値です。油を取り除いて使用する場合、エネルギーや脂質はより少なくなります。
一方で、ツナ缶の油にはDHAやEPAなどの脂質が溶け出ています。DHAとEPAは血栓の予防、血液中のコレステロールや中性脂肪の低減などの効果が期待できる脂質です。エネルギーや脂質の過剰摂取に注意しながら、ツナ缶の油まで料理に活用できるとよいですね。
味と使い方の違いは?
実のところ、3種類のツナ缶の味には差がほとんどありません。しかしあえて比較すると、以下のような違いが見られます。
ツナ缶でも高級とされるビンナガマグロの味は、臭みが少なくあっさりとしています。そのまま食べてもおいしいので、サラダにトッピングしたりサンドイッチにしたりするのがおすすめです。
キハダマグロはうまみがあり、さまざまな料理に使える万能なツナ缶です。価格も手頃なので、ツナマヨおにぎりや炒め物など、いろいろな料理に活用しましょう。
カツオは身が引き締まっており、魚らしい味わいがあります。出汁感があることから、和食と好相性です。
各食品メーカーがさまざまなツナ缶を販売しています。水や野菜スープに浸した水煮タイプのツナ缶や、3種類の魚以外の原料を使ったものもあります。この記事を参考にしながら味を比較して、お気に入りのツナ缶を見つけてみてください。
【参考文献】
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
はごろもフーズ「シーチキン情報 | 知る楽しむ」
AUTHOR
いしもとめぐみ
管理栄養士。国立大学文学部を卒業後、一般企業勤務を経て栄養士専門学校に入学し、栄養士資格を取得。病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験して2022年に独立。食が楽しくなるレシピを発信するほか、栄養・健康分野の記事執筆を中心に活動中。
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