「どうしようもなくさびしい…」冬に〈孤独感〉が強まるのはなぜ?心の専門家が教える、原因と解消方法
冬、特に12月から1月は、クリスマスやお正月にまつわるイベントやイルミネーション、音楽などが街中にあふれ、明るく楽しげな空気が漂います。その一方で、無性に「寂しい」と感じ、孤独感を強める人も少なくありません。実は、冬はほかの季節以上に「孤独」を感じる要因が揃いやすい季節なのです。そこで今回は、冬の「孤独感」の原因と解消法を解説します。
冬に「孤独感」が強まる理由とは?
冬には「孤独感」を強める3つの要素があります。
気候がネガティブな気分を引き起こす
私たちの心身の調子は、思っている以上に「気候」に左右されます。特に「日照時間」と「うつ病」との関連については多くの論文で発表されています。(*1)
日照時間の短い冬は、ネガティブな思考や気分を引き起こしやすく、ほかの季節なら気にも留めないような出来事をきっかけに「どうせ私はひとりぼっちだ」などの孤独を感じる可能性があります。症状が悪化すると「冬季うつ(季節性感情障害)」になる場合もあります。
寒さや冷たさは「人との距離」を感じさせる
2020年に発表された研究(*2)では、「温かいカイロ(温かさ)」を身につけた学生は、「冷たい氷嚢(冷たさ)」を身につけた学生よりも、他者に対して「自分のことが伝わっている」「相手のことが理解できる」と感じることが明らかになりました。
つまり、寒さ・冷たさを感じる機会の多い冬は「誰もわかってくれない」「他者とコミュニケーションがとれない」と孤独を感じやすい季節なのです。
「和」を大事にする日本文化も影響している
日本人は「みんな」「集団」と同じルールや常識を守って行動すべきという「和の文化」を重視しています。
そのため、「クリスマスは恋人と過ごすもの」というルールが提示されると、「クリスマスなのにひとりだ!」とルールを守れない自分に焦ったり、「どうせクリぼっちですよ」と自虐したりします。普段はひとりで平気なのに、お正月がやけに寂しくなるのも「お正月は家族や親戚で集まるもの」という常識から外れた自分を感じるからかもしれません。
冬の孤独感への対処法
ここからは、冬の孤独感への対処法をご紹介します。
今すぐできる短期的な対処法
■日光を浴びる
朝はカーテンを開け、日の光を浴びましょう。日光は私たちの精神を安定させる「セロトニン」の分泌を促します。晴れた日は、買い物がてら散歩してみるのも良いでしょう。
■暖かくして過ごす
寒さは孤独を強めます。
・防寒具を身につける
・暖房器具を活用する
・温かい飲み物を飲む
・お風呂にゆったり浸かる
など、身体を温めて過ごしましょう。
■ボランティアや寄付に取り組む
「自分が必要とされている」という実感が得られると、孤独感は和らぎます。ボランティア活動や寄付に取り組んでみましょう。提供した時間・労力・金額以上の心の温もりが得られるはずです。
■植物やペットを可愛がってみる
「自分が必要とされている」という感覚を得るなら、植物やペットを世話してみるのもおすすめ。「植物やペットは住居や仕事の都合で世話し切れない」という場合は、コミュニケーションがとれるロボットやぬいぐるみなどを可愛がるのも良いかもしれません。
コツコツ取り組む長期的な対処法
■SNSなどで人とつながる
趣味などの活動をSNSに発信してみると、人からの反応が得られて、少しずつつながりが拡がっていきます。好きな話題が共通しているので話しやすいのも魅力です。
ただし、受動的にSNSを見ていると幸福感が下がるという研究報告も!(*3)「自分の好きなことを発信したい!」「仲良くなれそうな人を見つけるぞ!」という主体的な使い方がおすすめです。
■おひとりさま時間を楽しむ
何もできないまま「私は孤独だ」と考えていると、どんどん落ち込んでしまいます。
悶々と悩み続けないように、やりたいことリストを作ってみましょう。やりたいことを1つ1つ達成していけば、ひとりでも充実した時間を過ごせます。
気の向くままに見て回るひとり旅や、盛り上がりを気にせず曲を選べるひとりカラオケなど、気を遣う他者がいないからこそできることをやってみるのもおすすめです。
おわりに
孤独感やネガティブ思考は、心の問題と思われがちですが、冬という気候の影響も少なくありません。ぜひ身体を労わってみてくださいね。
参考文献
*1 白川修一郎・大川匡子・内山真・小栗貢・香坂雅子・三島和夫・井上寛 ・ 亀井健二(1993)日本人の季節による気分および行動の変化 精神保健研究 39 pp81-93.
*2 工藤 恵理子(2020)対人相互作用場面における温かさ・冷たさの感覚―身体化認知の適応的機能の検討 科研研究費助成事業 研究成果報告書
AUTHOR
佐藤セイ
公認心理師・臨床心理士。小学生の頃は「学校の先生」と「小説家」になりたかったが、中学校でスクールカウンセラーと出会い、心の世界にも興味を持つ。大学・大学院では心理学を学びながら教員免許も取得。現在はスクールカウンセラーと大学非常勤講師として働きつつ、ライター業にも勤しむ。気がつけば心理の仕事も、教える仕事も、文章を書く仕事もでき、かつての夢がおおよそ叶ったため、新たな挑戦として歯列矯正を始めた。
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