【医療用大麻がついに解禁】今さら聞けない、大麻と医療用大麻は何が違う?薬剤師が解説

 【医療用大麻がついに解禁】今さら聞けない、大麻と医療用大麻は何が違う?薬剤師が解説
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大麻草から製造された医薬品の使用を可能にする、大麻取締法などの改正案が成立しました。大麻の医療上の有用性を認める一方で、大学のアメフト部員の大麻所持が発覚し、逮捕者が出るなど、若者を中心に大麻の不正使用が広がる懸念も高まっています。 この記事では、大麻と医療用大麻の違い、医療用大麻を活用する目的などを解説します。

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そもそも大麻とは?

大麻とは、大麻草(学名:カンナビスサティバ)という南アジア原産の一年草で、世界中に自生している植物です。茎から丈夫な繊維が取れるので、昔から栽培され、衣類などに利用されてきました。

大麻には100種類以上の化合物(成分)が含まれています。このうち大麻の花や葉には、「THC」(テトラヒドロカンナビノール)という成分が含まれており、独特の精神作用があります。THCが脳内の神経伝達物質を調節するCB1という受容体と結合すると脳の報酬系回路と呼ばれる部分が活性化します。すると快楽、酩酊感、陶酔感、幻覚、鎮静、抗不安、鎮痛などの薬理作用が現れます。具体的には、強い快感が生じる、気分がハイになる、多幸感が得られる、恐怖心がなくなる、攻撃的になる、疲れや痛みが緩和されるなどの作用が生じます。

一方で、THCには依存性があり、乱用によって次のような症状が現れます。

●知覚の変化(時間や空間の感覚がゆがむ)

●学習能力の低下(短期記憶が妨げられる)

●判断力の低下(善悪の区別がつかなくなる)

●運動失調(瞬時の反応が遅れる)

●精神障害(統合失調症やうつ病を発症しやすくなる)

●知能指数(IQ)の低下(短期・長期記憶や情報処理速度が下がる)

●薬物依存(大麻への欲求が抑えられなくなる)

こうした重篤な健康被害を起こす危険があるため、原則として国内ではこれまで大麻草の所持や栽培を禁止してきたのです。

なぜ今、医療大麻が必要なのか?

大麻はTHCの作用による重大な健康被害が危惧される一方、海外では医療用としての有用性も認められています。現時点で、医療用大麻の研究や使用が最も進んでいる病気は「てんかん」です。てんかんは、脳内に異常な電気信号が発生することで、けいれん発作を繰り返す病気です。

日本には100万人ほどの患者さんがいるといわれていますが、このうち3割の患者さんは、抗てんかん薬を使用しても発作が出現する「難治てんかん」という重度のてんかんを患っています。欧米では難治てんかんの治療のために、大麻草に含まれる「カンナビジオール」(CBD)という成分が含まれる「エピディオレックス」という医薬品などが使用され、有効性が確認されています。同薬は研究目的で日本国内でも治験が行われていますが、旧大麻法では医療現場で活用できないため、医療関係者からは法改正を求める声が高まっていました。なお、カンナビジオール(CBD)とは、大麻草の成熟した茎や種子のみから抽出・製造されたもので、大麻草に含まれる成分の中でTHCの次に多く含まれる成分です。THCのような有害な作用や依存性はないとされ、アメリカでは現時点で35州がCBDの使用を合法化しています。

また、難治性てんかんと同様に、CBDの使用により症状の改善が期待できる病気には、

●がん

●パーキンソン病

●トゥレット障害

●ALS(筋萎縮性側索硬化症)

●筋ジストロフィー

●自閉症スペクトラム障害(ASD)

●PTSD(心的外傷後ストレス障害)

●ADHD(注意欠陥・多動性障害)

●強迫性障害

●躁うつ病

●不安障害

●アトピー性皮膚炎など皮膚疾患

●拒食症

などがあげられます。

大麻
CBD、THC、CBN、CBG、THCV、CBCのマリファナの差分式の分子化学構造を視覚的に描いたもの。図/Adobe Stock

大麻使用罪の新設

旧大麻取締法では、大麻の栽培、所持、譲り受け、譲り渡し、輸出入に関して罰則が設けられていましたが、大麻の「使用」は含まれていませんでした。その理由は、大麻草はこれまで国内で神事や衣料品などに使われており、許可を得た栽培農家が収穫時などに成分を吸う可能性があり、これを処罰対象から外すために使用罪が規定されていなかったのです。しかし、使用罪がないことで、「使用しても大丈夫」といった誤解が生じ、大麻に手を出すハードルが下がることで、大麻が薬物使用の入り口となる「ゲートウェイ・ドラッグ」となっているのも事実です。そこで、若者を中心に大麻の不正使用が広がる懸念を避けるために、覚醒剤など他の規制薬物と同様に「使用罪」を新設し、正当な理由がない場合の使用は、7年以下の懲役となることが法律に盛り込まれました。

まとめ

大麻に最も多く含まれる「THC」(テトラヒドロカンナビノール)という成分には、身体や精神に重大な悪影響を及ぼす恐れがあります。一方で、THCを含まない「CBD」(カンナビジオール)には、これまで治療が困難だった病気の改善に役立つことが期待され、医療用として使用できるよう法改正が行われました。また、大麻の「使用罪」が新設され、大麻製品の取り締まりを強化することも新法に盛り込まれています。こうしたことから今後、医療用大麻の医薬品としての活用が、広がっていくものと考えられます。

<参考文献>

厚生労働省 「今、大麻が危ない!」

東京都保健医療局 「大麻ってなに? | みんなで知ろう危険ドラッグ・違法薬物」

政府広報オンライン「若者を中心に大麻による検挙者が急増!「誘われて」「興味本位で」が落とし穴に。」

『お医者さんがする大麻とCBDの話』(正高祐志 著)

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AUTHOR

小笠原まさひろ 薬剤師

小笠原まさひろ

東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。



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