【肝臓からのSOS】飲酒で肝臓が疲れたときに出るサインとは?適度な飲酒量や飲み過ぎたときの対処法
年末年始はお酒を飲む機会が増え、ついつい飲み過ぎてしまうことも。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれますが、肝臓に負担がかかったときに、肝臓から出されるSOSサインがあります。 この記事では、肝臓が疲れてきたときに出るサインや肝臓に負担をかけずにお酒を飲む方法、飲み過ぎたときの対処法などを解説します。
お酒の飲み過ぎが肝臓によくない理由
体内にアルコールが入ると、肝臓で酵素が働いて「アセトアルデヒド」という物質に分解されます。アセトアルデヒドには毒性があり、過剰に飲酒するほどアセトアルデヒドが多量につくられます。お酒を飲み過ぎると頭痛や吐き気、二日酔いなどが起こるのはアセトアルデヒドが原因です。
また、アセトアルデヒドは肝臓の細胞を傷つけ、脂肪の分解を抑制するため、肝臓に中性脂肪が蓄積し、脂肪肝(アルコール性脂肪肝)につながります。さらに、脂肪肝が慢性的に続いた状態でアルコールを摂取し続けると、アルコール性肝繊維症、さらに肝硬変へと症状が進行します。
・アルコール性脂肪肝……中性脂肪が過剰にたまり、肝臓が全体的に肥大する。進行するとお腹が張る、疲れやすい、食欲がないなどの症状が現れる。肝臓には通常3~4%の脂肪があるが、これが30%以上蓄積した状態が脂肪肝。
・アルコール性肝繊維症……脂肪肝から症状が一歩進み、肝硬変になる前段階。肝臓が繊維化(かさぶたのような物質が蓄積)し、通常の機能が果たせない状態になる。発熱、全身の倦怠感、食欲不振、腹部の張り、体重減少、嘔吐、下痢などを引き起こす。
・肝硬変……肝臓の繊維化が進行することで健康な肝細胞が減り、肝臓が萎縮して代謝や解毒機能が低下する。黄疸、腹水、浮腫(むくみ)などが生じ、肝がんのリスクも格段に高くなる。肝硬変が進行すると肝不全となり、死に至ることもある。
飲酒で肝臓が疲れると出るSOSサインとは?
肝臓は沈黙の臓器と呼ばれる通り、少々のダメージを受けても、壊れた部分を自力で治しながら、黙々と働き続けます。そのため、症状が進行するまではとくに目立った症状が現れません。気づいたときには、症状がかなり進行している場合も多くあります。
しかし、肝臓に負担がかかっているときには、次のような肝臓からのSOSサインが現れることがあるので、このサインを見逃さないようにすることが大事です。
・疲れやすくなる。
・食欲不振、吐き気がする。
・酒に弱くなった、飲みたくなくなった。
・白目の部分が黄色くなる。
・手のひらが赤くなる。
・赤ら顔になる。
適切な飲酒量とは?……国内初の飲酒ガイドライン
これまで適切な飲酒量の目安は、ビール(中瓶)〇本、日本酒〇合などと表記されていましたが、厚生労働省が策定する新しいガイドラインでは、アルコールによる病気のリスクを高める飲酒量として「純アルコール量」をもとに換算する方式を採用しています。
お酒に含まれる純アルコール量は次の計算式で求められます。
純アルコール量(g)=摂取量(ml) × アルコール濃度(度数/100)× 0.8(アルコール比重)
例えば、ビール 500ml(アルコール度数5%)の場合の純アルコール量は、500(ml) × 0.05 × 0.8 = 20(g)で、20gとなります。
この純アルコール量を基準にした1日の適正な飲酒量は、男性40g、女性20g以下と定められ、男性の場合では、ビール500ml(アルコール度数度数5%)で2本以下、女性の場合は1本以下ということになります。
なお、純アルコール20gは、ビール500ml(アルコール度数5%)1本のほか、日本酒1合、チューハイ350ml(アルコール度数7%)1本、ウイスキーダブル1杯、ワインでグラス1杯半くらいの量になるので、目安にすると良いでしょう。
肝臓に負担をかけないお酒の飲み方
お酒にはリラックス作用や血行促進作用な健康に良い働きもたくさんあります。お酒は適度な飲酒量を守っていれば「百薬の長」となりますが、飲み過ぎれば「万病のもと」となります。そこで肝臓に負担をかけないお酒の飲み方を知っておきましょう。
・すきっ腹で飲まない。
・チェイサー(やわらぎ水)と一緒に飲む。
・栄養バランスの良いつまみ(野菜や豆腐、豆類など)を食べながら飲む。
・会話をしながらゆっくり飲む。
・ノンアルコール飲料に替える。
・週に2日は休肝日をつくる。
飲み過ぎたときの対処法
飲み過ぎたときには、体内のアルコールやアセトアルデヒドなどの代謝物を速やかに薄めて、体外に排出することが大切です。次のような方法で対処すると良いでしょう。
・体内のアルコールを排出するために水を多く飲む。
・抗酸化ビタミンを含む食品(トマト、キウイ、いちご、みかんなど)を食べる。
・肝機能を高める作用のある「ウコン」を配合したドリンク剤やサプリメントを摂取する。
・健胃や胃粘膜を修復する作用のある胃腸薬を利用する。
まとめ
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、異常が起こっても症状が現れにくいため、肝臓から出されるSOSサインを見逃さないことが大事です。また、適度なアルコール量を守り、肝臓に負担をかけないお酒の飲み方を心がけると良いでしょう。
AUTHOR
小笠原まさひろ
東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。
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