「世界子どもの日」に心をよせて|のまど看護師が見つめ続けてきた、フィリピンの子どもたちのこと

 「世界子どもの日」に心をよせて|のまど看護師が見つめ続けてきた、フィリピンの子どもたちのこと
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鈴木真帆
鈴木真帆
2023-11-23

「のまど看護師」として東南アジアやアフリカなどの公衆衛生分野で活動してきた筆者・鈴木真帆は自身の仕事と並行して、フィリピンの児童養護施設の子どもたちへの支援を続けてきました。今回は「世界子どもの日」に因んで、フィリピンの子どもたちの様子をお伝えします。

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世界子どもの日とは

日本では5月5日が子ども日ですが、国際連合(国連)が世界中の子どもたちの相互理解と福祉の向上を目指して、1954年に11月20日を「世界子どもの日」に制定したことはご存じでしょうか。

世界で生まれてくる子どもたち

日本では少子高齢化が進み、2022年の厚生労働省による報告では、日本の合計特殊出生率(以下、出生率 *注1)は1.26で、これは出産可能な年齢の女性が生涯に産む子どもの数が2人未満(1.26人)であることを意味しています。日本以外の先進国ではイタリア、スペイン、ドイツなども少子化が進んでおり、出生率が2.0を切っている国は珍しくありません。1.5を下回ると「超低出生率」といわれ、日本では1994年以降1.5未満が続き、人口の減少が懸念されてます。東南アジアでもシンガポール(1.2)とタイ(1.5)は出生率が低いのですが、同じ地域でもフィリピンとラオスは(2.7)(*注2)と高い出生率を維持しています。

注1:出生率には「出生率」と「合計特殊出生率」の2つがあり、「出生率」は年齢や性別の区別なく、その年に生まれた人口1000人あたりの出生数で、「合計特殊出生率」はその年における15~49歳の女性の各年齢別出生率を合計したもの。後者の方が出産可能な年齢を対象としており、より正確な指標であるとされています。

注2:2022年11月の出生率は2以下に下がったという報告も一部あるが、これはCOVID-19の感染拡大に伴う何ら化の影響が生じていると考えられ、最終的な報告は2.5または2.7となっている。

なぜ、フィリピンの出生率は高いの?

さまざまな理由が考えられますが、大きな理由の一つは宗教にあります。フィリピンでは人口の約80%がカトリックで、宗教上の理由から避妊や中絶に対して否定的です。その他にも女性の社会進出が進んでおり、産後もキャリアを形成しやすいこと、大家族で暮らしているため家庭内に育児の担い手が何人もいることに加え、メイドさんやベビーシッターを雇いやすく子育てがしやすい環境が整っていることなどが挙げられます。

その一方で、フィリピンには25万人ともいわれるストリートチルドレンがいます。日本のような戸籍制度がないため、はっきりした数はわかりませんが、マニラ首都圏では信号待ちをする車に物売りの子どもが近寄ってきたり、レストランなどの外で物乞いをする子どもをよく目にします。経済成長が著しいフィリピンですが、それにより貧富の格差が大きくなり、世界銀行の報告によると今も人口の約2割は貧困であるとされています。

ストリートチルドレンは、家族全員が路上で暮らしているケースもありますが、大半は貧困に起因する親の暴力から逃れたり、路上で物を売ってお金を稼ぐためにそのまま路上で暮らすようになった子どもたちです。特に日本のように子どもへの社会保障が整っていないため、家族から見放された子どもたちは路上で生活するしかありません。

路上で暮らす子どもたちの危険

常に事故やケガのリスクがあることに加え、満足な食事がとれないため慢性的な栄養不足で、それにより感染症などの病気にかかりやすくなります。教育の機会を奪われるため、正しい知識がないままに、空腹を紛らわす目的でドラッグに手を出したり、悪い大人に騙されてしまうこともあります。

 

子どもたちが安心して暮らせる場所

ストリートチルドレンの数に対して、国が用意できる施設が足りてないため、民間団体やNGOなどが政府と協力して子どもの保護を行なっています。そのような支援を日本の団が行なっていることはご存じでしょうか。私が2006年から支援を続けている特定非営利活動法人アイキャン(注3)ではマニラ首都圏に児童養護施設を設立し、16名の子どもたちを預かっています(2023年11月現在)。入所当初は食事をとられることを警戒して、ごはんを隠しながら食べていた子どもが、スタッフや寮母さんから愛情を受けるうちに、みんなで一緒に食事ができるようになるなど嬉しい変化が見られます。

日本でも子どもを取り巻く環境が複雑化しておきており、10年連続で不登校の子どもが増えているそうですが、まず大切なことは家でも学校でも子どもが安心できる場作りではないでしょうか。

この世界子どもの日に、改めて子どもたちが安心できる環境は何かを考えてみませんか。

注3:特定非営利活動法人アイキャン…愛知県名古屋市に本部をおき、来年はフィリピンで活動を始めてから30周年。

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鈴木真帆

鈴木真帆

特定非営利活動法人アイキャン(名古屋本部)代表理事。正看護師。タイ王国チュラロンコン大学にて公衆衛生学修士課程修了。地元北海道の総合病院で看護師として勤務後、パキスタンにて医療系NGOのインターンを経て、主に東南アジアやアフリカにおいて国際NGO、公益財団法人、JICAで国際保健・公衆衛生分野で経験を積む。フィリピンに住んでいた時にアイキャンと出会い、2007年より理事に就任、2021年より現職。現地を知る者として、現地と日本を繋ぎ循環するPay it forward(ペイフォワード)な世界を目指し、日々活動を行なっている。



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