目が疲れると充血するのはなぜ?疲れ目やかすみ目が起こる原因と効果的な目薬の選び方|薬剤師が解説
パソコンでの長時間の作業やスマホを頻繁に見る習慣、細かい書類を見つめる仕事などで、目の疲れを訴える人が増えています。そんなときに上手に利用したいのが市販の目薬。しかし、目薬にはさまざまな種類があり、どの目薬を選べばよいか、分からないという人も多いと思います。 この記事では、目の疲れの原因や解消法、症状に合った目薬の選び方などをご紹介します。
目が疲れる・目がかすむ原因とは?
私たちの目は、よくカメラに例えられます。水晶体がレンズ、網膜がフィルムと同じ役割をしています。外から入ってきた光は、角膜を通って、水晶体で屈折してピントが合い、網膜で像が結ばれます。
水晶体は、遠くのものを見るときは薄くなり、近くのものを見るときは厚くなってピントを合わせています。水晶体の厚みを調節しているのが、水晶体の周囲にある「毛様体筋」という筋肉です。
毛様体筋は、自ら伸縮してピントを調節し、とくに近くの物を見るときに縮んで緊張します。そのため、パソコンやスマホ、テレビの画面などを長く見続けていると、毛様体筋が緊張しっぱなしで酷使され、それが目の疲れになります。
また、目がかすむのは、目が疲れている状態で視点を違う所に移すと、目の緊張状態がうまく解除できないため、ピントが合いにくく、物がかすんで見えてしまうのです。
その他にも、近年、急増している「ドライアイ」をはじめとした目の疾患、メガネやコンタクトレンズの度が合っていないことも目の疲れやかすみの原因になります。
※ちなみに、物が見えにくいとき、目を細めてみると多少見えやすくなるのは、「ピンホール効果」という現象で、目を細めて通過する光の量を絞ることで、ピントが合いやすくなるためです。ただし、目の周囲の眼輪筋に負担がかかるため、おすすめはできません。
目が疲れると充血するのはなぜ?
白目の部分を結膜といい、目が疲れてくると、結膜部分が充血し、血走ったように見えることがあると思います。
これは、目を酷使して疲れてくると、その回復のために、目に栄養や酸素を運ぼうとして、周囲の血液循環が高まり、血管が拡張し、血管が赤く目立つためです。(血管が切れているわけではありません)
その他にも、ドライアイやコンタクトレンズの長時間使用も目が酸素不足になるため、充血の原因になります。
なお、充血だけをとろうとしても、根本原因である目の疲れ(目の緊張状態)を改善しなければ、充血が繰り返し起こる可能性は高いといえます。
疲れ目に効く目薬の選び方
目薬と一口にいっても、「疲れ目」「目の乾燥」「目のかゆみ」「ものもらい」など、症状によって使う目薬は異なります。
また、成分だけでなく、差し心地にも違いがあります。スッキリ感の強いクールなもの、刺激の少ないソフトな差し心地のものなどいろいろです。こうした清涼感の違いも目薬を選ぶ基準にするとよいでしょう。
疲れ目・かすみに有効な成分
疲れ目やかすみ目には、次のような成分が入った目薬が効果的です。
・ネオスチグミンメチル硫酸塩……目のピント調節機能を改善
・L-アスパラギン酸カリウム……目の組織の呼吸を促し新陳代謝を促進
・ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)……疲労した目の末梢神経の機能を高める
・シアノコバラミン(ビタミンB12)……毛様体筋や末梢神経に作用してその働きを改善
・タウリン……眼の組織の栄養となり組織を活性化する
など
【疲れ目・かすみ目の目薬の製品例】
「ロートビタ40α」「Vロートプレミアム」(ロート製薬)、「スマイル40EX」(ライオン)、「サンテ40プラス」「サンテメディカルアクティブ」(参天製薬)、「アイリス40」「アイリス フォン リフレッシュ」(大正製薬) など
目の充血に有効な成分
・塩酸テトラヒドロゾリン……血管を収縮させる
・塩酸ナファゾリン……血管を収縮させる
【充血を改善する目薬の製品例】
「サンテメディカルガードEX」(参天製薬)、「スマイル40メディクリアDX」(ライオン)、「ロートリセb」「ロートリセブラン」(ロート製薬)、「アイリスAGクール」(大正製薬)など
一般的な目薬には、これらの成分をバランスよく配合したものが多いですが、とくに気になる症状がある場合には、成分の内容や配合量などを増やした製品をおすすめします。
なお、「ものもらい」の場合は、抗菌剤が入った「抗菌目薬」でなければ、治りませんので注意してください。
疲れ目を解消する日常習慣
こまめに目を休める
疲れ目を解消するには、基本的に目を休めることが大切です。パソコンでの作業や細かな書類を見続ける仕事などの場合、1時間に5~10分くらい目を休めるのが理想的です。できれば、なるべく遠くを見るようにするとよいでしょう。
明るい画面の見すぎに注意
パソコンやスマホなどの液晶画面は明るさを強くすることで見えやすくしています。この明るさを生み出すために使われるのが「ブルーライト」という光です。目に見える光の中で最もエネルギーが強く、散乱しやすい性質を持っています。
そのため、長時間見続けると目の疲れを引き起こしやすくなります。また、生体リズムを乱し、睡眠の質や量にも影響を及ぼすと指摘されているため注意が必要です。
意識してまばたき
ずっと同じところを見続けていると、まばたきの回数が減り、目が乾燥して疲れ目の原因になります。そのため、意識してまばたきをするようにしましょう。また、目を軽く閉じたり、ギュッと閉じたりするのも目の休息になります。
目の体操
上下左右に目をぐるぐると動かすと、目の周辺の筋肉のコリがほぐれます。ただし、やり過ぎは逆効果。気持ちいいと思える程度にしてください。
温める・冷やす
熱いおしぼりや温めたアイマスクなどを両目に当てると、血行が促進し、疲れ目の解消につながります。また、温めると冷やすを繰り返すのも効果的です。
まとめ
目の疲れやかすみ、目の充血はパソコンやスマホの画面などを長時間見続けることで、ピントを調節する毛様体筋などの筋肉の緊張や、目に酸素や栄養が十分に行き渡らなくなることが原因です。
これらの症状の改善のためには、根本的には目を休めることが必要ですが、目薬の利用も便利で効果的です。
目薬を選ぶときは、パッケージに「目の疲れ」「かすみ目」「眼精疲労」などと表記された製品を選ぶとよいでしょう。もし、気になる症状がある場合やどの目薬を選べばよいか、わからない場合は、薬剤師や登録販売者に相談してください。
AUTHOR
小笠原まさひろ
東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。
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