キズが早くきれいに治る!ハイドロコロイド絆創膏の特徴と正しい使い方3つのポイント|薬剤師が解説
ハイドロコロイド素材を使った新型の絆創膏を使う人が増えています。従来の絆創膏にはなかったメリットがある一方、使い方も異なるため、正しく使用しないと傷が悪化する恐れもあります。この記事では、ハイドロコロイド絆創膏の特徴や使い方の注意点などについて解説します。
ハイドロコロイド素材とは?
ハイドロコロイド素材とは、皮膚にぴったりくっつくための粘着剤(疎水性ポリマー)と、水分を吸収・保護するハイドロコロイド粒子(親水性ポリマー)でできています。
従来の絆創膏は、皮膚を乾かしてかさぶたをつくって傷を治していましたが、ハイドロコロイド素材の絆創膏は、傷口から出てくる浸出液という皮膚を再生させる体液を吸収して、皮膚を乾かさずに傷を治します。これを「湿潤療法」(モイストヒーリング)といいます。
ハイドロコロイド絆創膏の特徴
ハイドロコロイド絆創膏には、主に次の3つの特徴があります。
傷が早く治る
従来の絆創膏は傷口を乾かして、かさぶたをつくり、その下で浸出液が皮膚を再生して傷を治していました。しかし、ハイドロコロイド絆創膏では、皮膚を乾かさず、かさぶたをつくらずに傷を治します。
言わば、ハイドロコロイド素材がかさぶたの代わりとなり、傷を治す浸出液を皮膚に閉じ込めたまま皮膚を再生します。かさぶたをつくったり、はがしたりする必要がないため、その分の時間が大幅に短縮できるので、傷が早く治るのです。
傷がきれいに治る
ハイドロコロイド素材の絆創膏はかさぶたができません。かさぶたができると傷跡が残りやすくなるため、ハイドロコロイド素材の絆創膏を使うことで傷がきれいに治ります。
とくに女性にとっては、手や足、顔などに傷跡が残るのは、避けたいのではないでしょうか。
痛みが少ない
傷口が空気に触れると、神経が刺激されるため痛みが生じます。ハイドロコロイド素材の絆創膏は、傷口が空気に触れないように、表面にポリウレタンフィルムがコーティングされています。
内側のハイドロコロイド素材と外側のポリウレタンフィルムが二重構造になっているため、傷口が空気に触れることがありません。傷口が空気に触れないため、神経を刺激することがないので、従来の絆創膏のように傷口が“ヒリヒリ”、“チクチク”するといった痛みが少ないのです。
ハイドロコロイド絆創膏の正しい使い方
ハイドロコロイド絆創膏は、従来の絆創膏とは別の方法で傷を治すため、使い方も異なります。
傷口は消毒しない
従来の絆創膏は、傷口を消毒液などで殺菌し、その上から絆創膏を貼っていたと思います。しかし、ハイドロコロイド絆創膏では、消毒液などを使わず、傷口を水だけできれいに洗い流して使用してください。
消毒剤の中には、刺激が強くキズが治る上で必要な細胞組織にダメージを与え、治りを遅らせてしまう場合があります。また、消毒液だけでなく、殺菌剤の入った軟膏やクリームを塗布してもいけません。
もし、消毒液などを使ってしまった場合は、水でしっかり洗い流してから、使用してください。
感染がある傷には使えない
ハイドロコロイド絆創膏は、すりキズ、切りキズ、かきキズ(ひっかきキズ)など、一般的に多くみられる傷には問題なく使用できます。
しかし、“感染がみられるキズ”(キズ口の周りが赤くなっていたり、ズキズキした痛みが続いたり、膿を持っていたり、熱や腫れ等の異常が認められるキズのこと)には、使用できません。細菌が浸出液と混ざり合い、菌が繁殖し、傷の症状が悪化することがあるためです。
また、にきび、湿疹、皮膚炎、虫さされ、やけどなどの症状にも使用できません。これらの症状は傷ではなく、別の治療が必要だからです。
白いふくらみができたら貼りかえる
ハイドロコロイド絆創膏を貼ると、1~2日で素材に白いふくらみが現れます。これは素材が浸出液を吸収している証拠です。この白いふくらみは傷が治るとともに小さくなっていきますが、目安としては2~3日に1回程度、貼りかえると良いでしょう。
傷口に化膿などの細菌感染がないことを確認して、再度、傷口を水で洗い流して貼りかえてください。このように経過観察をしながら、傷が完全に治るまで貼りかえを繰り返してください。白いふくらみ(浸出液)が出なくなったら、完治したといえます。
【ハイドロコロイド素材の絆創膏の製品例】
「キズパワーパッド」(ジョンソン・エンド・ジョンソン)、「ケアリーヴ 治す力」(ニチバン)、「FCモイストヒーリングパッド」(白十字)、「キズクイック」(東洋化学) など
まとめ
ハイドロコロイド絆創膏は、湿潤療法(モイストヒーリング)という新しい考え方に基づき、「傷が早く治る」、「傷がきれいに治る」、「痛みが少ない」などの特徴があります。一方で、従来の絆創膏とは使い方が異なるため、正しい使い方をしないと傷が悪化する恐れもあるため注意が必要です。
購入時には、傷の状態を薬剤師に伝え、使用して良いかどうか、また使い方の説明などをしっかり受け、正しく使用するようにしてください。
AUTHOR
小笠原まさひろ
東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。
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