夏バテと思っていたら実は違った?夏バテと片付けてしまいがちな3つの病気とは|医師が解説

 夏バテと思っていたら実は違った?夏バテと片付けてしまいがちな3つの病気とは|医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2023-07-29

夏バテで片付けてしまいがちな病気の特徴などを中心に解説していきます。

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夏の暑さで疲れやすい、なかなか寝付けず倦怠感がある、下痢や腹痛などの症状を来す場合には、夏バテかなと考えることもあるかもしれません。

これらの状態の際には、夏バテと混同してしまいがちですが、実は更年期障害、熱中症、胃腸炎などの病気が潜んでいる可能性が否定できません。

今回は、夏バテで片付けてしまいがちな病気の特徴などを中心に解説していきます。

夏バテ

夏バテだと思っていたら実は更年期障害だった

暑い夏、その汗や疲労感、冷えなどの悩みがある場合には、夏場の気候のせいだけではなく、ホルモンバランスの乱れや更年期障害の症状かもしれません。

暑い場所では誰でも汗をかきますが、みんなが汗をかかない場所で自分だけ汗が出る、あるいは身体の中で手足は冷えているのに顔の部分は火照っている、暑さと寒さを同時に感じるなどの場合には、更年期症状を見ている可能性があります。

夏のシーズンはその暑さからどうしても夏以外の季節と比べて運動量が減る傾向がありますが、更年期障害に伴う冷え対策や症状改善のためにも涼しい早朝や夕方以降などの時間帯に定期的に運動を実践することが重要です。

夏バテだと思っていたら実は熱中症だった

夏場に身体が何となくだるくてしんどい場合に、夏バテと考えていたら症状が長引いて実は熱中症だったという可能性もあります。

熱中症とは、高温多湿に置かれた環境のもとで、生体内の水分や塩分、ナトリウムやカリウムなどを代表とするミネラル成分のバランスが崩れるのみならず身体のあらゆる調整機能が破壊されるなどの障害を引き起こす状態です。

熱中症は、一般的に長時間の炎天下での激しい運動などで発症しやすいことがよく知られていますが、意外にも例えば高齢者が真夏にエアコンを使用せずに室内で生活している時にも倦怠感など様々な症状を自覚することがあります。

健常時には、体温が上昇したケースでは人体は生理的に適度な体温を維持する方向へ調整するために、多く発汗することによって出来る限り熱を体外へと放出しますが、これらの本来あるべき機能が破綻して損なわれることで熱中症が生じると考えられています。

熱中症はその症状の重症度によって、大きくI度(軽度)、II度(中等度)、III度(重症)に分類されています。

例えば軽度な熱中症の場合には、めまいや立ち眩み、筋肉のこむら返りや気分不良などの症状が見られます。

中等度になると、頭痛がひどく、吐き気や嘔吐症状が前面に表れて、体がだるくなり手足の力が十分に入らないようになってしまいます。

また最重症になれば、非常に高体温を呈して、簡単な呼びかけにも反応せずに意識障害をきたし、全身性けいれんが認められるケースもあります。

病院受診の目安としては、I度の症状が徐々に改善している場合は現場での応急処置と見守りでよいとされていますが、II度やⅢ度の症状が出ている場合はもちろん、I度の症状に改善が見られない場合には速やかに病院を受診してください。

熱中症は、特に夏の暑い時期に発症し、一歩間違えれば生命にかかわる重大な病気ですが、対処法を正しく知って実行していれば防ぐことができます。

夏バテだと思っていたら実は胃腸炎だった

夏場に下痢や嘔吐など腹部症状を認める場合には、ただの夏バテではなく、特に食中毒などに伴って発症する感染性胃腸炎が潜んでいる可能性が否定できません。

感染性胃腸炎には、大きくウイルス性胃腸炎と細菌性胃腸炎に分類されています。

多くの病原体が感染性胃腸炎の原因となっていて、日常臨床で遭遇する頻度の比較的高いものとしては、細菌ではサルモネラ属、カンピロバクター属、寄生虫では赤痢アメーバやアニサキス、ウイルスではノロウイルスやロタウイルスが代表例と考えられています。

ウイルス性胃腸炎は、ノロウイルスやロタウイルスなどによる一般的な腸炎であり、食べ物から感染することもあり、また他人の吐物や下痢便などを介して感染することも多いです。

ウイルス性胃腸炎とは、ウイルスを原因として発症する胃腸炎のことであり、主な原因となるウイルスとしては、ノロウイルス、ロタウイルス、サボウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、コクサッキーウイルスなどが挙げられます。

細菌性胃腸炎は、主に食べ物から感染し、ウイルス性胃腸炎に比べて症状が強いのが特徴的であり、胃腸症状が悪化する代表的な細菌例として知られているのが、腸管出血性大腸菌(略称:O-157)やカンピロバクターによるものです。

感染性胃腸炎における典型的な症状としては、嘔気や嘔吐、下痢などといった消化器に関連したものが多く、下痢や嘔吐症状に伴って体内の水分が喪失して、食欲低下から十分に水分を摂取できずに脱水状態が進行して、倦怠感などの症状が見受けられます。

感染性胃腸炎を予防する方法としては、徹底した手洗い、次亜塩素酸ナトリウムによる環境の消毒、嘔吐物や排泄物の処理の際のゴム手袋着用、食事の充分な加熱などが具体例として挙げられます。

夏場においても、トイレをした後や、調理する際や食事前には、必ず石けんと流水で十分に手を洗うとともに、糞便や嘔吐物を処理する場合には、使い捨て手袋やマスク、エプロンを着用して、処理実施後は石けんと流水を用いてこまめに手を洗ってください。

まとめ

今回は、夏バテと間違えやすい病気の特徴などを中心に解説しました。

夏バテと混同しやすい更年期障害、熱中症、胃腸炎のいずれの場合にしても、まずは日々の生活リズムを整えて規則正しい生活を送ることが重要なポイントです。

それぞれの病気によって対処策や治療法も変わってくるため、もしも気になる場合には自分自身だけで判断するのではなく、産婦人科や消化器内科など専門医療機関を受診しましょう。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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