フェミニスト女性が自分らしくいられる恋人を見つける方法

 フェミニスト女性が自分らしくいられる恋人を見つける方法
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エコーチェンバー現象や排外主義の台頭により、視野狭窄になりがちな今、広い視野で世界を見るにはーー。フェミニズムやジェンダーについて取材してきた原宿なつきさんが、今気になる本と共に注目するキーワードをピックアップし紐解いていく。

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フェミニスト女性が日本で恋人、とくに彼氏を見つけるのは難しいという説がある。なぜなら、恋愛には、多分に性別による固定の役割を期待される部分が含まれるからだ。

たとえば、「頭をなでなでするのは男性」「頭をなでなでされてキュンとするのは女性」「デート代を多めに支払うのは男性」「手料理を作ってあげるのは女性」など。恋愛を経て結婚する際には、結婚式において、男女の役割が協調されたセレモニーをすることになる。「エスコートするのは男性」「父から夫に手渡される妻」「男性は稼ぎます、女性は料理を作ります……を表現したケーキバイト」など、枚挙にいとまがない。

恋愛において男女に期待される役割は、ドラマや漫画などで繰り返し描かれてきており、現実世界でもナチュラルに取り入れられている。

フェミニスト女性のなかには、セクハラや女性蔑視には断固反対するが、好きな男性には頭をなでなでされたい、という人もいる。社会的に押し付けられる女らしさは拒否するが、恋人との間では、「お前馬鹿だなー」「もー♡」のようなコミュニケーションを好む人もいる。

「女のものまね」をやめる、と宣言したら……

しかし、多数のフェミニストは、恋愛関係においても、そういった男女の役割ごっこを是とせず、女性らしさを期待されることも好まない。そうなると、パートナーには、女性に対し女性役割や女性らしさを期待しない人が好ましい、ということになる。

冬野梅子作の漫画『スローロマンス』(講談社)では、主人公の女性が、同棲中の彼氏に、「女のものまね、もうやめるね。これからは普通にする」と宣言するシーンがある。彼女の言う女のものまねとは、男性の優越感をくすぐるようにあえて劣った存在であることを演出するようなこと、例えば「やだ、間違えちゃった~」「もう、バカだなあ」といったコミュニケーションのことだ。彼女の宣言を聞いた彼は、受け入れつつも「親が子にサンタクロースの正体をばらすみたいな、反則」だと感じ、のちに彼女に別れを告げる。

パートナーに、「女のものまね」をまったく期待しない男性は、多くはない。それゆえ、フェミニスト女性が自分らしくいられるパートナーを見つけるハードルは高くなる。しかし、不可能ではない。

外国人としか付き合わない、と宣言する帰国子女の友人

フェミニスト女性が自分らしくいられるパートナーを見つける方法として、ひとつには、日本人以外に目を向けてみる、という方法がある。私の友人で、外資系企業でマーケティングの仕事をしているM子は、大学と大学院でアメリカに留学して以降、外国人としか付き合わないと決めている。M子いわく、日本人の男性は、パートナーに(悪い意味で)女性らしさを求めてきがちだし、対等な関係を望んでいないから、とのこと。私自身は「すべての日本人男性が、恋人の女性に対等さを望んでいない」と言い切るのは乱暴だと思うし、そうでない男性もきっといると思うが、確かに、女性らしさが求められない国出身の人を相手を選んだほうが、ストレスなく付き合えるという点は理解できる。

小川たまか・著『たまたま生まれてフィーメール』(平凡社)では、語学を勉強し、「日本語の世界にだけ閉じこもらないことが希望に思える」と書いている。小川は、語学を勉強している理由を、「同じ言語を使う人同士でまったく言葉が通じないことに疲れてしまって、それならいっそ違う言葉を使う人と、文脈を共有していないことを前提としたコミュニケーションをしたいと思ったから」とも説明している。

使う言語や属する文化が違えば、性別や恋愛に対する期待も違う。そういった意味で、違う文化を持つ人と恋愛する方が自分らしくいられる人もいるだろう。

マッチングアプリに「フェミニスト」と書く?

フェミニスト女性が自分らしくいられるパートナーを見つけるもうひとつの方法としては、自己開示が挙げられる。最初から自分はフェミニストです、と表明することで、家父長制を支持する人を遠ざけることができる。

友人のRは実験的に、マッチングアプリの自己紹介に、ジェンダー関連の書籍の写真を載せて見たと言う。どういった本やコンテンツを好むかによって、相手のジェンダー感をある程度推し量ることは可能だ。とくにマッチングアプリなど、共通の知人がいない出会いの場合、相手の性格を知ることは難しいため、ある程度自己開示し、反応を見る方法をとるのがよいだろう。Rはこの方法で出会った男性と意気投合し、付き合うことになった。

フェミニスト同士の恋愛・結婚? 脱恋愛・非恋愛? 選択肢は増えている

さて、今回は、フェミニストが自分らしくいられる恋愛相手を見つけるために、どういった工夫ができるのか、を私なりに考えてみた。

実際には、私の周りにいるフェミニスト女性は、恋愛において様々な選択をしている。ある人は恋愛を重視しておらず、結婚はするつもりはないと宣言している。ある人は、男性と離婚したあと女性と恋愛し、ふたりでマンションを購入した。ある人は、フェミニストの男性と出会い、お互い苗字を変えるのを好まなかったため、事実婚を選択した。

苗字の問題で、事実婚を選択する人は増えている印象だ。そのなかのひとりは、会社に問い合わせて、法律婚と同じ結婚休暇やお祝い金を得た。彼女は事実婚で法律婚と同じ福利厚生を受けた会社初の存在になったという。もちろん、こういった事例を多数見聞きしているのは、私が都心に住んでいることや、興味関心が近い人と知り合っていることが関係しているのだろう。いまでも多くの男性は、結婚したら女性に苗字を変えてもらうことが当たり前だと考えているのかもしれないし、結婚して男性の苗字に変わることにわくわくする女性も存在しているだろう。

しかし、いまは、それ以外の人にも自分らしくいられる恋愛・結婚への道が拓かれてきている時代だ。また、恋愛や結婚がマストでもなくなってきている。韓国では、家父長制を拒否する文脈で、非恋愛・非結婚志向が、若い世代を中心に加速している。2019年9月20日の『中央日報』によると、20代女性の約5割が「脱恋愛・非恋愛を志向する」と回答したという。

恋愛や結婚が、性別による役割に対する期待や演じることと切り離せないと感じるのなら、いっそのこと、恋愛をしないというのも、自分らしく生きる選択肢のひとつになるだろう。

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AUTHOR

原宿なつき

原宿なつき

関西出身の文化系ライター。「wezzy」にてブックレビュー連載中。



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