人間関係に役立つ!ポジティブ思考とは違う【リフレーミング】より効果的に使うには?臨床心理士が指南

 人間関係に役立つ!ポジティブ思考とは違う【リフレーミング】より効果的に使うには?臨床心理士が指南
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南 舞
南 舞
2023-07-02

カウンセリングの場面だけでなく、日常的にも様々な場面で使われるようになった『リフレーミング』。リフレーミング=ポジティブ思考への変換と思っている人が多いようですが、それ以外にも有効な使い方があります。自分の価値観や、周囲との人間関係の質をグッと変えてくれる、リフレーミングの効果的な使い方をお伝えします。

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リフレーミングとは?

もともと家族療法というセラピーの中で生まれた【リフレーミング】。1974年に家族療法家のワツラウィック氏が生み出したもので、「物事の枠組み(フレーム)を捉え直すこと」とされています。わかりやすく言うと、「物事の見え方を変えることによって、新しい視点を生み出すこと」です。例えば、仕事であと3日後にやり遂げないといけないタスクがあるとして、あなたはどんな風に捉えるでしょうか?もし「あと3日しかない」と思ったとしたら、焦りや不安の気持ちが増えてしまうかもしれませんよね。一方で、「まだ3日ある」と思うとどうでしょう。締め切りが3日後という事実は変わりませんが、だいぶ印象が変わりますよね。このように、物事の印象をガラッと変える効果をもたらすのがリフレーミングなのです。

リフレーミング=ポジティブシンキングではない?

リフレーミング=ポジティブシンキングと思っている方が多いですが、実は全く別物です。ポジティブシンキングとは、ネガティブな物事を前向きに考えること。どちらかというと、ネガティブな気持ちを否定して、無理矢理ポジティブに考えるというニュアンスが強いです。そのため、リフレーミングとポジティブシンキングを混同してしまうと、「ポジティブはOKだけどネガティブはNG」というメッセージを自分や相手に与えることになり、存在否定や自信を失うことになりかねないので注意が必要です。一方でリフレーミングは、ネガティブな気持ちを否定せず受け止めつつ、客観的な視点を持って物事をとらえ、物事の見方の癖を変えていくということを大事にしています。時には、ポジティブなことをネガティブなことに変換することにより、これまでには見えてこなかった思考や解決方法が見えてくることも。それがリフレーミングの特徴なのです。

リフレーミングの種類は?

意味のリフレーミング

意味のリフレーミングとは、物事に対して違う意味を持たせるためのものです。ある物事や出来事について「他にどんな意味があるだろうか」「他にどんな側面があるだろうか」という視点で考えていきます。

例:『職場を辞めてしまった』→『本当の自分に出会えるチャンス』

  『飽きっぽい性格』→『好奇心旺盛な性格』

状況のリフレーミング

問題だと捉えている物事や出来事が、「他のどんな場面であれば問題ではなくなるのか」と考えていくものです。

例:『怒りっぽい人』→『クレームを言わないといけない場面で役立ちそう』

    『声が大きい人』→『事故や災害などの有事の時は、通る声が役に立ちそう』

リフレーミングをするのに役立つ考え方

As ifの問いかけ

As ifとは、『もし〇〇だったら』『仮に〇〇だったら』『例えば〇〇だったら』という視点を持つことです。そういった問いかけをすることにより、行き詰まった状況から、新しい視点や発想を得るのに役立ちます

時間軸を使う

過去・現在・未来という時間軸を利用してみると、考え方や視点に変化をもたらしやすいです。この時に、『未来から見た現在』『今でよかった』という視点から捉えるのがオススメです。

【未来から見た現在】

例:『10年後の自分は、この困難をどのように考えるだろう』

【今でよかった】

例:『あの時失恋しなかったら、今のパートナーに出会えていなかった』

解体して考える

例えば、『自分には向いていない』という思考があるのだとしたら、具体的に何が向いていないと思うのか、どんな場面になるとそう感じるのか、向いていないという評価が変化するとしたらどんなことが必要かといったように、物事を細かくし、細分化したものを個別に考えてみましょう。

Wantの視点で

Wantとは、言葉のとおり『どうしたい?』という質問を通して行き詰まった状況への解決策が見えてきたり、自分の心から望む方へ行動する思考に切り替えるのに役立ちます。

リフレーミングを活用しよう!

ポジティブな言葉への変換だけではない、奥深さがあるのがリフレーミング。リフレーミングを使えば、自身のモチベーションを高めたり、人間関係をスムーズにすることにも役立ち、日常生活を豊かにしてくれる心理的スキルです。リフレーミングの本質を知り、日常に取り入れてみてくださいね。

【参考文献】

Watzlawick, P., Weakland, J. H., & Fisch, R.. Change: Principles of problem formation and problem resolution. W. W. Norton. (1974)

西尾和美(著)『リフレーム 一瞬で変化を起こすカウンセリングの技術』大和書房(2012)

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AUTHOR

南 舞

南 舞

公認心理師 / 臨床心理士 / ヨガ講師 中学生の時に心理カウンセラーを志す。大学、大学院でカウンセリングを学び、2018年には国家資格「公認心理師」を取得。現在は学校や企業にてカウンセラーとして活動中。ヨガとの出会いは学生時代。カラダが自由になっていく感覚への心地よさ、周りと比べず自分と向き合っていくヨガの姿勢に、カウンセリングの考え方と近いものを感じヨガの道へ。専門である臨床心理学(心理カウンセリング )・ヨガ・ウェルネスの3つの軸から、ウェルビーイング(幸福感)高めたり、もともと心の中に備わっているリソース(強み・できていること)を引き出していくお手伝いをしていきたいと日々活動中。



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