脂肪肝の人は約1000万人以上存在する?知ってるようでよく知らない「脂肪肝」について医師が解説
健康診断の結果表に「脂肪肝」と書かれていたことはありませんか?わかるようでわからない脂肪肝について、医師がわかりやすく解説します。
脂肪肝とはどのような病気か
肝臓に中性脂肪が貯留した状態を「脂肪肝」と言い、この疾患はメタボリック症候群に合併しやすいことが指摘されており、放置すると肝炎などを引き起こして重症化することが知られています。
一般的に、脂肪肝という病気には飲酒をしすぎる場合に発症するアルコール性、あるいはアルコールを多量に摂取していないけれども引き起こされる非アルコール性脂肪性肝疾患(略称:NAFLD)に分類されます。
脂肪肝は基本的には無症状のままで経過することが多く、健康診断などで初めて指摘される方も少なくありません。
脂肪肝の状態を放置すると約1,2割の頻度で肝炎、肝硬変、肝細胞がんへと病状が悪化するケースも時に散見されます。
脂肪肝を引き起こす主要な原因としては過食と多量の飲酒習慣です。
それ以外に、糖尿病や基礎疾患に対するステロイド剤の長期服用、栄養障害による代謝異常なども本疾患を発症させる原因になることが判明しています。
アルコール性の脂肪肝に関しては当然のことながら過剰な飲酒習慣が継続されることによって発症すると伝えられています。
その一方で、非アルコール性の脂肪肝ではその背景に肥満やメタボリックシンドロームなどが潜在して引き起こされることが通常です。
その他、やせ過ぎ、遺伝的な代謝疾患、妊娠契機などを始めとして様々な原因や経過によって脂肪肝が引き起こされることも報告されています。
脂肪肝の初期にはほとんど自覚症状はなく、顕著な症状が現れにくい状態でもあります。
脂肪肝が悪化して、やがて肝炎を起こして肝硬変に進行して初めて食欲不振や倦怠感、右上腹部痛などの有意な症状が出現するようになる傾向があります。
これらの病気が進行すると、手足の浮腫所見や体が黄色く染まる黄疸、あるいは腹水貯留などの症状が出現しますし、仮に肝臓への血流が停滞して門脈圧が増えすぎる食道静脈瘤を形成して命に係わる場合も考えられます。
脂肪肝になりやすい人とは
脂肪肝を患っている人々は我が国に約1000万人程度存在すると言われており、現代における生活習慣と密接に関わり合っている病気と考えられます。
生活習慣の中でも、特に脂肪肝に関して最も重要な発症要因として注目されているのは「肥満」です。
肥満になると、脂肪をエネルギーに変換する役割を持つインスリンの機能が低下して、体内の様々な部位にある脂肪が肝臓に運ばれて、肝臓でも中性脂肪を大量に合成するように促されるために、脂肪肝を発症しやすいと言われています。
肥満体形の人においては、内臓全体の脂肪量および肝臓における脂肪量は最も密接に関連していると言われています。
肥満や内臓脂肪が原因で脂肪肝に罹患している場合には、適切に減量をして過度な食事を控えて適度な運動習慣を定期的に継続することが重要な観点となります。
肥満以外にも、最近になって注目されているメタボリック症候群、2型糖尿病、脂質異常症、高血圧症などの病気が脂肪肝の病状進展に直接的に関与しています。
脂肪肝の治療予防策は?
この病気は生活習慣と関連して発症することが多いことが判明しており、肝硬変などに進行していない状態であれば普段の生活習慣を見直して改善することで肝臓の機能が回復することも十分に期待できます。
アルコールが原因で脂肪肝に罹患した場合には、日々の生活においてアルコール摂取量を減らすことが肝要です。
非アルコール性脂肪性肝疾患のように肥満やメタボリックシンドロームなどが背景として脂肪肝が存在している際は、定期的に運動して体重を減らす、食事量を調整するなどの対策が必要となります。
脂肪肝の治療では、一度生活習慣を是正出来たとしても元通りの生活リズムに戻ってしまうと脂肪肝が再発してしまうこともあります。
したがって、日常的に運動療法や食事治療などを楽しむ心意気を持ちながら、決して無理しない範囲で規則正しい生活スタイルを継続することがキーポイントとなります。
脂肪肝を指摘された際には、放置せずに早めに消化器内科など専門医療機関を受診して確実な治療に結び付けることが重要な視点となります。
まとめ
これまで、脂肪肝とはどのような病気か、脂肪肝になりやすい人の特徴や治療予防策などを中心に解説してきました。
脂肪肝は、肝臓内に中性脂肪を始めとした脂質成分などが異常蓄積する状態です。
通常では日々の生活習慣において栄養バランスの偏った食生活や慢性的な運動不足などが原因で引き起こされます。
健康診断や人間ドックで肝機能の数値の異常が発見されることが多く、初期の段階ではほとんど自覚症状が無いのが特徴的です。
いったん、病状が進行すると倦怠感、腹部膨満感、食欲不振などの有意症状が出現する場合もあります。
この病気に対する基本的な治療策としては、主に生活習慣の改善、食事療法や運動療法になります。
定期的に主治医やかかりつけ医と相談しながら肝機能の数値を検査して自分の状態を適切に把握していくことが重要な観点となります。
AUTHOR
甲斐沼 孟
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。
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